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最近 ブラジル事情 ⑤ 新田 器一 (津波古) 

市中銀行の利息は年利130%、サラ金以上の金利で借金もままならない。それで何か入用の時は模合を起して助け合って居るとのこと。沖縄の模合は庶民金融として海外でも大いに役立っている。外に農業関係の制度資金は年6・5%~8%の低利資金もあり、輸出関連の生産業への利子は低利の資金が用意されているが、住宅関係の低利資金の制度は無いらしい。

くらし
税金が安いのでまじめに働けば必ずいくらかは残せるとのこと。
だが見た感じでは貧富の差に甚しい開きがあるように思われた。庶民の生活費は一般に800~2,000crs位かかるらしい。 一世帯7、8名、中には15名という大家族もあった。最近は、産児制限して小家族へと指向しつつあるらしい。
朝食はコーヒーとパンと果物だけだが昼と夕食はたっぷりとスタミナ食を楽しんで居た。特に印象に残った食事は肉が主体であるが、米と野菜と果物を豊富に摂取して居ることだった。また、伯国独特の料理フェジョイアーラ。移民の間では「豆(マーミ)の汁」と呼ばれてどの家庭でも作られて居た。ご飯にかけて食べるがなかなか味がこまやかで美味しかった。
本土も沖縄も暖衣飽食の時代といわれて居るが、衣の方はともかく、食の面では向うの半分も食べて居ないと思われる。とに角物が豊富で年中出回って居るから食べねば減らないという思想のようだ。
そして実に良く食べる。一度は一日五食した日もあった。
ちなみに主な食料品の種類を列記すると、主食にパン、ポテト、米、コーン、マンジョーカ。副食に牛肉、鶏肉、卵、豚肉、鮮魚を筆頭に酪農製品、乾物、塩物、一杯ある野菜類は隼人瓜を筆頭にトマト、ピーマン、レタース、クレソン、胡瓜、茄子、南瓜、ブロックリ、花椰菜、セロリー等々豊富にあり年中回って、3月は、端境期と異状気象の長雨のため品薄で高値続きとなり、インフレの要因だと攻撃されていた。どの国もインフレの苦情の尻は農業に持ち込むものだなあと苦笑した。果物は果物天国だけあって安くて実に豊富だ。バナナ、ミカン類を筆頭に西瓜、メロン、パパヤ、鳳梨、梨、リンゴ、柿、ぶどう、バンジロ、シャカ頭、ササップパッションフルーツ、スモモ、イチジク、アポカード、椰子の実等々、温帯、熱帯産の果物が一杯あってしかもびっくりする程安いことだ。例えばバナナ1㎏40~50crs、レモン1㎏100crs、メロン2.3㎏ 480~800crsといった具合だった。
またそれぞれ種類も多く、レモンだけでも四種類、柿五種類、ぶどう六種類等々、それだけに食事もバランス良い摂取のため、一世の方々は筆舌に尽くし難い苦労をされて来たにもかかわらず雛も少なく腰もシャンとして若者に互してそれぞれの役目を果されて絶えず笑顔で居られたことには頭の下る思いだった。移住三、四〇年以上の方々の多くが現地の白人や混血の婦女をお手伝いに雇って、洗濯、アイロンがけや掃除などにつかい、中には庭師を雇って居る家庭もあった。    (つづく)

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大分類 テキスト
資料コード 008437
内容コード G000000499-0027
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第82号(1984年6月)
ページ 13
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1984/06/10
公開日