「うまい話」にご用心
うまい話には落とし穴―ちかごろ、金地金の購入を電話や訪問などで勧誘し、金購入契約を迫りいったん承諾すると、金地金の売買契約とその賃貸借契約を同時に結び、現物を渡してくれないという悪貿な商法が横行しています。
あの手この手の勧誘、ボロ儲けができるといった話、はたまた、金相場に関する一見まともな話術で、セールスマンがたくみに金地金の購入を迫ります。うまい話、と契約でも結ぼうなら、次から次と言葉たくみに儲け話を続けていきます。しまいには、現物を渡さず、もっと儲けるために投機にまわすということで、賃貸借契約を結ばされてしまいます。
ちょっと変だな、と思ったときには、すでに遅く、契約をタテに解約に応ぜず、ときにはナシのつぶてということすらあります。
現在、こうした金地金の悪質取引にかかわる苦情、相談が全国的にふえています。マスコミ各社もこの問題を取り上げ、 一般消費者に注意を呼びかけています。
この金の〈現物まがい商法〉はその多くをお年寄りや主婦の方々をターゲットとしています。特に一人暮らしや日中一人になる老人がねらわれているようです。一人暮らしの寂しさにつけ入るその手ロは巧妙をきわめています。
【具体例】東京都世田谷区に住む一人暮らしの男性Aさん、83歳に「金に関心ありませんか」と4、50歳の女性外交員が訪ねて来た。Aさんは持ち家に住み、年金とアパート経営の収入で生活は安定。「金はインフレに強い、目減りもしない、預金より有利…」とのうまい話にもさほどの魅力は感じなかった。
しかし、これらの売り込みの言葉の間に巧みに織り込まれる「やさしさ」は、Aさんの心を動かした。世間話にはじまり、身上話しさらには、掃除から洗濯、タ食までつくり、一晩の添い寝まで。翌朝、Aさんは金3.1㎏の契約書にハンを押した。手数料など込みで961万余円。50年かかってためた全財産だった。
約1カ月後、これを知ったAさんの娘夫婦らが、悪徳商法被害者対策委員会(東京都渋谷区本町5の34の11 大野ビル203 TEL03-374-0019)へ。
すったもんだの交渉で800余万円を取り戻したAさんであった。
Aさんが損をした金額は、違約金と、前渡しされている金の運用益金ということになります。
こうした〈現物まがい商法〉は、
1.金に対する知識に乏しい人
2.金の現物購入を意図していたのに賃貸借契約まで進んでしまう
3.賃貸することについて、担保とか第三者の保証はなく何ら法律上の保護もなく、また、会社側が金の運用方法、運用実績等について開示しない
などがその特徴です。
金をお買いになるときは、社団法人日本金地金協会の会員店、登録店またはデパート、銀行等で代金と引換えに金を受け取るようにしてください。
電話での勧誘や訪問販売の儲け話、口車にはくれぐれも注意しましょう。トラブルに巻き込まれると思わぬ大損をしてしまいます。
「金」悪貿業者に関するご相談、苦情などは通商産業省(TEL03-501-4657)または、地方通産局の消費者相談室へ。