今日の疾病構造の特徴は、その大部分を成人病が占めていることである。これは、すでに多くの人人の知るところとなっている。
聖路加看護大学の日野原重明学長は、成人病はその大部分が若いときからの生活習慣が続いたために起った疾病であり、まさに習慣病であると指摘している。
たとえば、食塩をたくさん摂る習慣、砂糖をたくさん摂り過ぎる習慣、運動をしない習慣などのような食物の習慣をはじめとして、日常のさまざまな習慣が積み重なって成人病が起るのである。
したがって、良い生活習慣をつけるということが、健康づくり、病気の予防、また、すでにある慢性病の悪化を防ぐ最も良い方法となるわけである。
昨今「自分の健康は自分で守る」ということが健康づくり活動のスローガンになっているが、このことは成人病を習慣病として認識するという考え方にもとづくものであるといえる。
さて、次に佐敷町におけるお年寄りの健康および長寿の実態についてみてみよう。
まず、老人健診の結果からみると、
①受診率が高率となってきている(昭和51年56%→昭和57年69%)
②受診者のうち、成人病にかかっている者が低率となってきている(昭和51年43%→昭和57年26%。ここで、成人病とは高血圧、心疾患、脳血管疾患、ガン、糖尿病をいう)……の二点が特徴としてあげられる。
また、私たちが、昭和40年と55年の国勢調査人ロを資料として、長寿率(65歳以上に占める80歳以上の割合)を算出し、沖縄の全市町村を比較検討すると佐敷町は昭和40年の時点では、男女とも県平均をやや下まわっていたが、昭和55年の時点になると、女性が県平均まで好転し、男性ではもはや県内で最も高い長寿率を示すようになっている(沖縄県公衆衛生学会誌 第14号参照)。 住民健診および老人健診は、単に疾病の発見のみが目的ではなく健康者は健康であることを、不健康者は不健康であること、あるいは悪化していないかということを確認するものでもある。つまり、健康チェックの意義が大きいのである。
そして、その健康チェックにより、自分の健康状態を知り、その健康状態にあった健康管理、あるいは健康づくりのあり方を、住民ひとりびとりが見い出し、良い生活習慣の確立を計る努力がきわめて重要である。 幸い、佐敷町のお年寄りの健康および長寿の実態は、きわめて良好な様相を示しており、その要因は今後さらに明らかにしていく必要があると考えられる。このことは町民全体の健康づくりとも密接にかかわってくるものである。お年寄りの健康への姿勢や生き方に、学ぶ点、得る点が大いにあるものと思われる。
佐敷町のお年寄りが身をもって示してくれている健康維持、長寿の秘訣を今こそ学び、明るい健康な町づくりをしていかなければならない。
健康に対する関心の高まるなか長寿町佐敷の名を更に世に広めるためにも、個々人の日常のちょっとした生活習慣を見直し、基本的な健康づくり対策を立てていくべきであろう。
若々しさみなぎって……。