通関
成田空港での出国の場合、荷物が規定量以内であれば書類審査だけで割に簡単だが、伯国での通関が難物のようだ。
もっとも税関吏にもよるようだが、女性や新任税関吏に当ると鞄の底までひっくりかえされて課税されるらしく大変らしい。特に電気製品は、国内業者保護の面から、みつかれば250~450%の関税を課されるので、税金分は余分に準備する必要がある。更に検査官は多いが、賦課係は2人、収納係は1人と少なく、それに加えて$(ドル)とCr(クロゼイロス)の計算がうるさくて、結局通関終るまで2時間あまりを要してしまった。
聾のうえ、言葉も通じないときては全くお手上げといった処だったが、同行の方にいろいろ交渉して貰って、割安の課税で通関できたのは幸いだった。
後で聞いた処、全部小分けにして包装すれば単にお土産として処理されるが、昆布、のりなど大束にすれば商売と見なされて高額の課税をされるとのこと……伯国での通関は、運不運がつきまとうようだ。納税を済まして見送りの方方と握手をしたときには、正直なところほっとした。
「火炎木固き握手や無事の貌」
自然と風土
1980年の記録によると、伯国は日本の約23倍の面積を持ち、南半球で最大、世界でも5番目の大きな国で広大な土地と豊富な天然地下資源に恵まれた国だ。鉄鉱石を初め、銅や金銀、色とりどりの宝石や化石が産出する。惜しいことにこれだけの面積を持つ国でありながら、石油資源が乏しく、現在は膨大な原油輸入が国際収支を圧迫して、インフレの要因になっているらしい。
北西のアンデス系の山脈群、アマゾン河流域の低地、大西洋に面した海岸線、南部のラ・プラタ平原を除いた残りの60%は、標高200~900メートルの起伏のゆるい高原で、見渡す限り耕地と牧場が続いている。その高原を見ていると、地球の創世時は波打っていたのでは、と想像される地形だ。北は熱帯、中央の大部分が亜熱帯、南部が温帯で気候も変化に富んでいる。産物も温帯から熱帯性まで実に豊富で、1年中出回っているらしい。
土質は、花崗岩性の赤褐色、黄褐色を呈して山原の国頭マージの色によく似ている。一般に酸性で、特にセラード地帯は強酸性のため開発が遅れているようだ。目下日本の協力で開発中、約6万平方キロメートルほどが開発されている。
これは、沖縄の総耕地面積に匹敵するが、それでもまだ未開地が日本の面積ほどあるらしい。
気候は北半球と全く逆で、正月は暑くお盆は寒い。聖市の3月は残暑の時節で、滞在中前半は沖縄の9月ごろの暑さだったが、後半は雨が多かったので肌寒いぐらい涼しくなっていた。標高が高いので、お天気の日は暑く雨の日は寒いらしい。それで年中夏物も冬物も必要のようだ。子どもたちも心得たもので、お天気の日は上半身裸で遊ぷが、曇や雨の日にはセーターを着ていた。12月から4月は雨季、5月から11月までは乾季に分かれ、5、6月が最も過し易い時節らしい。地震や台風がほとんどないので、天災と言えば大雨の洪水と、バッタの異常発生の被害が主らしい。(つづく)