なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

俳句つれづれ草 ふるさと礼賛

下枝を刈られし並木涼得たり
那覇からバスで家近くの停留所に降りたつと、わずかな風さえ涼しく感じられホッとする。都会のセカセカ、喧喋、複維な人間関係から逃がれ、安らかな田舎の自然の佇いに触れると、おのずと心が落ちついてくる。草本の香りを含んだふるさとの涼風は、また格別。

開け放つ部屋抜けゆけり夏の蝶
「佐敷と那覇との通勤はたいへんだね」と知人はよく気づかってくれるのだが、佐敷に移り住んでからは、疲労どころか結構楽しい時間がつくれる。なり振りかまわず、この路地あの岸を散策すれば、そこにほのぼのとした幸せがおるような気がして-。日々是好日というものか。

赤とんぼ尻上げとまる草の尖(さき)
ところで、世はまさに新しい情報化の波が押し寄せようとしている。コンピュータ、デジタル電子交換機、光ファイバーケーブル、そして通信衛星等々の新技術の開発によって、社会生活に大変革が起りそうである。家に居ながらすべての用が足せるという想像もつかない便利な時代がやってくる。10年は待たないのではないか。
さて、反面、その展開のテンポが早ければ早いほど、また、情報が増えれば増えるほど、人人は情緒不安定に陥りはしまいか、と気になるところ。
そこで、自然に親しむことは、それから救われる1つの方法かと思われる。陽光の降りそそぐ佐敷の海岸ベりを散策して、おおらかな心を知り、また、小谷、新里などの石畳の静寂に踏みこめば、気持ちが落ちつくだろうし、字佐敷の台上に佇めば、魂の均衝を取り戻せる。このように心のふるさとを大自然に求める必要がでてくるのではなかろうかとつらつら思う昨今である。

想思樹の花散りばめし石畳  (西村容山)

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大分類 テキスト
資料コード 008436
内容コード G000000494-0023
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第77号(1983年10月)
ページ 13
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1983/10/10
公開日