「正直のところ私自身おどろいているんですよ。俳句をはじめて5年目ぐらいですし。第一、小学校以来の同級生の瀬底さん(正俊氏)にさそわれてはじめたわけなんですが、何よりも句会の席に酒が出るというのが魅力でこの道に入ったんです」
ユーモアたっぷりに、俳句に親しんだ当時のことを語る山城青尚さん(本名・山城清勝)=写真。酒が魅力でといいつつ親しんだ俳句の世界。それがこの世界の最高賞ともいえる58年度琉球俳壇石村賞に山城さんは輝いたのである。
「実際に目で見て、感じたものを表現するだけなんですが、やってみるとこれが難かしい。いったん句にしても、それを自分の納得のいく作品とするには一年もかかる時があります」
山城さんは、沖縄独特の風土を踏まえた作風で、第一回の琉球俳壇賞も受けている。本土俳壇との交流も活発に行なっており、実力、情熱とも大いに評価されている山城さんである。
「俳句というといかにも風流人だけが、という感じで受けとられてしまう。しかし、そうではないんです。生活、暮らしに根ざしたものでなくては。本土の俳人に私もいわれたことがあります。広大な基地のある島、時限爆弾をかかえているような沖縄の人にしてはやさしすぎると、ね。現実をしっかり見なければと思いましたね。俳句の心の奥底を知らされた思いでしたよ」
山城さんの眼は厳しい。作品によっては、当局者の耳には痛いものも数多い。また、よく伝統行事を句に取り入れているがこれは、すたれゆく伝統行事にともなって、地域の情緒が失なわれてゆくことをおしんでのことという。公害、開発、都会ナイズなどの要因で沖縄の社会が変化し人間の生活が破壊されていっていることを残念に思っている山城さんでもある。
囮鵜の身枷ひきずる影法師 青尚
佐敷町の同好の士の集い「シーサー句会」は、沖縄で最大の句会。もちろん山城さんも所属する。日本俳人協会会員でもある。61歳。(新里在住)