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父と子 父親の趣味  詫摩武俊(たくまたけとし)

「なかなか珍しい、いいご趣味をお持ちですね」 「いやあ、実は私の父親が好きで教えてくれたものですから」
2人の中年の紳士の会話です。父親が趣味でやっていたことを息子が受け継いでいるのです。父親は息子を愛し、息子は父親に敬意を持っていなければこのようにはなりません。このような話を聞くと、仲のいい父子であったのだなと私は思います。
景気のいい時、わるい時はありますが、わが国の生活水準が一昔前の世代に比べて大幅に向上したことはだれもが認める事実です。生活水準の向上は労働時間の短縮、余暇時間の増加をもたらします。
自分の好きなこと、つまり趣味のことにかなりの時間を割ける父親たちが多くなりました。
何を趣味とするか、これは全く各個人が自由に選ぶことです。ゴルフ、釣り、絵を描くことへ短歌、旅行、山歩き、競馬、麻雀(マージャン)などさまざまです。
本屋に行ってみると趣味の本がたくさん並んでいます。その日その日の暮らしに追われている発展途上国の人たちの生活と比較すると、現在のわが国は30年前には想像もつかなかった豊かな国になっていることに気が付きます。
父親の趣味を子供たちに話して、一緒に楽しむようにしたらと思います。シンナー遊びとか覚せい剤などは論外ですが、子供の成長後のことを考えて、知っていたら困るとか、その経験は有害だというものはわずかしかありません。
体を動かすスポーツにしても室内で行う勝負事のようなものであっても、知的な内容であっても、父親は自分が好きでやっていることをもっと子供に教えていいと思います。
それを子供が自分の趣味とするかしないかは、子供が選択することです。仮に選択しなかったとしても競馬好きの父親から馬の話を聞いたり、一緒に競馬場に行った思い出はいつまでも残り、それが子供自身の人生に深さと幅を与えるのです。
(東京都立大学教授・心理学)

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000490-0012
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第72号(1983年1月)
ページ 4
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1983/01/01
公開日