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父と子 多忙な父親 詫摩武俊

母親の中には、夕方早く帰宅し、日曜日はいうまでもなく平日でも、子供とよく遊んでくれる父親がいい父親だと思っている人がいます。自分たちの子供だから、育児は二人の親が平等に時間を割くべきだと主張する人もいます。
このようなことを聞くと、子供が好きなのに仕事に追われて自宅にいる時間が少ない父親は悲しくなります。なかには罪責感にとらわれる人もいます。
男性の生涯で30代・40代というのは最も活力にあふれた充実した時期です。仕事の上でも重要な役割を果たすようになり、仕事そのものに生きがいを見いだすようにもなります。この年代のときに毎晩6時過ぎには帰宅している父親よりも、ときには深夜になってからでないと帰ってこない父親の方が、職業をもつ男性としては頼もしく、また発展性があるのではないかと思います。いつも残業をしているわけではありません。親しい仲間と飲んだり遊んだりしていることもあります。異論があるかもしれませんが、壮年期の男性にはこのような時間が必要だと私は思います。
この父親が子供のことに全く無関心であるなら、多忙だというのは逃げ口上です。しかし、早く帰宅をして子供の顔が見たいのにそれができないことがあります。父と子供の接触は量よりも質が大事です。いつも自宅にいるが不機嫌な父親よりも、たまにしかいないがそのときは好機嫌な父親の方がよほどいい影響を子供に与えます。平日が多忙な父親は休日に十分子供と遊んでください。
子供は自分の父についてある印象をつくり、こんな人と思っています。これは父から直接得た印象だけでなく、父の不在の折に母親が子供に夫のことをどう話すかによって、著しく左右されます。自分の夫のことを子供に悪く言う母親のもとでいい家庭教育を期待するのは難しいことなのです。

(東京都立大学教授)

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000488-0006
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第70号(1982年9月)
ページ 3
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1982/09/15
公開日