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平和な社会建設と人間尊重を優先 第15回町議会定例会開催 山城町長が施政方針

建設的な町政を考える対話を推進
第15回町議会定例会は、3月12日から開かれ、冒頭で山城町長が昭和57年度の町政運営の方針を明らかにしました。そして、その裏付けとなる昭和57年度一般会計予算案をはじめ各特別会計予算案など20件の議案を提案しました。提案された各会計の予算総額は、23億9千5百万円で、そのうち、一般会計予算は、18億9千万円となっています。一般会計予算の工事関係で一番大きいのは、佐敷小学校不適格校舎改築工事及び馬天小学校プール建設工事費であわせて1億6千万円、ついで富祖崎公園事業の1億4千万円となっています。山城町長は「現今の厳しい財政環境の中で、いたずらに足らざるを嘆くことなく、町民サービスの向上のためにともに建設的な町政を考える対話を進め有効適切に町民の要求実現を図っていく」ことを町政運営の基本として掲げ、福祉、生活環境、教育、産業の整備充実を基本施策として町政を進推していくことにしています。

はじめに
本日、ここに昭和57年度予算案並びに関連する諸議案の御審議をお願いするにあたり、町政運営の基本方針と重要施策の大綱について私の所信を申し上げ、議員各位のご協賛と町民の皆さんのご理解を賜りたいと存じます。
私は、昭和48年村長に就任以来、今日まで一貫した政治姿勢のもとに憲法の精神を尊重しながら、地方自治を守り、より住みよい豊かな佐敷町を建設するための施策を基調とした町民直結の行政を推し進めてまいったのであります。
この間、多くの問題に直面しながらも、町民福祉の向上と町勢伸展のための施策が着々と実現しましたことは、議員各位をはじめ町民の皆さんの暖かい御支援と御協力の賜ものであると心から感謝申しあげる次第であります。
私は、昨年8月の町長選挙におきまして、広く町民の皆さんの御理解と御支持をいただき、三たび佐敷町長という重責を担うことになりました。9月17日から第3期目の町政運営にあたっておりますが、私自身、引き続き町政を担当することの責任の重大さを深く認識しているところであります。
そして、私は、今回の無投票による当選という意義を充分にかみしめ、初心にかえり私に寄せられた町民の期待と批判に応え、必機一転、全職員とともに町民の信頼と付託に応える決意であります。
さて、私は、過去8回の施政方針説明におきまして、町政執行の基本理念は、「憲法の精神に基づく地方自治の尊厳を守り、平和な社会建設と人間尊重を最優先させる」ことにあると一貫して申し上げてまいりました。
そして、毎年基本施策を掲げて町民各位と町議会のごべんたつと御協力をいただきながら諸施策を推進してまいりました。新年度は私にとりまして、第三期目の町政を担当する初めての年度でありますので、この際、過去8年間の町政を顧み、私なりに今後の佐敷町政の展望と反省の為に資したいと存じます。
顧みるに佐敷村長として就任した第一期目は、本土復帰という激動の最中にあって、しかも、国内では、高度経済成長政策が行き詰まり、それまでのインフレ経済に加えて不況が同時進行するという状況のもとで、保育所の設置、清掃施設組合、東部消防への加入、文化まつりの開催、中学校体育館の建設、新開公園の建設、総合計画基本構想の策定などの施策を実施してまいりました。
第二期目は、長期化する不況の中で国は的確な対応ができないまま、企業の倒産があいつぎ、失業者の増大を招き、不況の嵐がふきあふれる中で、村立幼稚園の建設津波古地区土地調査の実施、デイゴの造林、老人福祉センターの開設、冨祖崎公園整備事業町制施行の実現と教育はもとより福祉優先の町政を進めてきました。
以下、私がこれまで町政を担当してきた概略ですが、この8年間をふりかえりますと、町民のために仕事をすればするほど、様様な矛盾にぶつかり、十二分な施策を実現しえたとは申しあげられません。
私たち佐敷町には、まだまだなすべき多くの課題が残されております。特に役場庁舎や中央公民館の建設をはじめ、福祉の向上、産業、教育の振興等重要課題が山積しているのであります。
私は、こうした二期八年間にわたる町政運営の経験と反省のうえにたちまして、第三期目においては、次の六項目にわたる考えを基調として、町政を進めていく考えであります。
一、憲法を守り、自治を確立します。
一、教育文化の振興をはかります。
一、産業の振興と福祉の充実に努めます。
一、生活環境を整備します。
一、青少年の健全育成に努めます。
一、公共施設の整備拡充をはかります。

町政運営の基本姿勢
ことさら申し上げるまでもないことですが、国、地方公共団体をとりまく社会経済情勢は、依然深刻でございます。
世界の火薬庫ともいわれる中東情勢は、予断をゆるさない状況にあり、1970年代に始まった世界不況は、80年代に入って慢性化しており、加えて、日本の輸出の拡大は、アメリカやEC諸国との間に激しい経済摩擦をひきおこしています。
一方、国内においては、臨時財政調査会の報告に基づいて、国や地方自治体の行財政改革の実施が図られています。沖縄県においても復帰十周年の節目を迎え、新年度は、第二次沖縄振興開発計圃に基づいた新たな第一歩を踏み出す意義深い年でもあります。
以上のような情勢下にあって、国では、行政改革の一環として昭和57年度予算は、厳しい編成方針を打ち出しており、一方、県及び市町村では、財政盤が弱い中にあって依然として財政依存度の高い構造が続くという矛盾した状況においこまれているのであります。
こうした、国内外の情勢は、佐敷町の行財政にも大きな影響を及ぼし、うち続くインフレと不況により、町民生活も圧迫をうけ、地方財政の危機的様相がさらに深刻化の一途をたどっています。
しかしながら、減速経済や自治体財政の如何にもかかわらず、町民生活をとりまく諸々の課題は年をおって増大しつつあります。町民の要請は一層強まり、町民の自治体に対する期待は、これらの要請がいつどのように実現されるかにかかっているといえます。地方自治体の使命は、こうした課題や要謂にいかに応えるかにあります私は、いたずらに足らざるを嘆くことなく町民サービスの向上のため、ともに建設的な町政を考える対話を進め、町民仏蔵岨蓼町行政に反映させ、現今の厳しい財政環境の中で、いま最も必要とするものは何かという優先度と選択を加え、有効適切に町民の要求実現を図っていくことを基本姿勢として今後の町政運営にあたる所存でございます。
昭和57年度も議員各位をはじめ町民の皆さんの積極的な御指導御協力をよろしくお願い申しあげます。

新年度予算
一般会計18億9千万円を提案
財源の重点的配分に徹する 創意と工夫で町政運営に対処

予算編成の基本方針
私は、これまで町政執行の基本姿勢として
一、町民の健康を守り、あたたかい福祉の増進
二、進みよい生活環境の整備
三、教育環境の充実と文化の振興
四、豊かなくらしを支える産業の振興
の四本を柱として施策の充実発展に努めてまいったところでありますが、新年度予算編成の基本も一貫して変わらないことをまずもって申し上げたいと思います。
第一次石油危機をきっかけとする国際経済の停滞により、わが国の財政は、国、地方公共団体を通じて大幅な収支不均衡が生じ、巨額の公債の発行に依存しながら財政運営が行なわれているのが実情であります。これは、歳入の面で国民生活の安定の景気と回復を図るために必要な規模を確保できなかったところに大きな原因があります。本町の財政においても、現在の経済基調、復期特別措置法における補助率の減少、さらには、人口の推移から町税の大幅増は望めず、地方交付税、その他の歳入にも増額は期待できない状況にあります。
しかし、このような状況下にあっても、町政の目標を実現するための施策は積極的に推進しなければなりません。そのためには、財源の重点的配分と経費の効率化に徹するとともに、創意と工夫をもって、町政運営に対処していくことが肝要であります。
 新年度の予算編成にあたっては上記の状況と臨時行政調査会の報告に基づく行財政改革の動向及び第二次沖縄振興開発計画の内容を十二分に認識し、具体的な事業内容の検討を行ない、効率的に住民福祉の向上に寄与できるよう、各分野において一層の努力をはらうことを編成の方針にしたのでございます。


福祉・生活環境・教育・産業の充実を柱に
コンピューター導入でサービスの向上 役場庁舎建設の時期、場所の目途づけへ

基本施策
以下申し述べました町政運営の基本に基づき、新年度の具体的な施策として、「福祉」「生活環境」「教育文化」「産業」を柱として取り組み、その実現を目指したいと思います。
なお、行政を取りまく政治経済情勢の推移、価値観の変遷により自治体経営のあり方、あるいはサービスの提供のあり方が厳しく問い直されている現今であります。
したがって、これまでの行政のあり方を反省し、新しい時代に即応しつつ、町民福祉の向上を図っていくことがこれまた私の重要な使命であります。そのため、役場の各課を有機的に結合させ、町民の行政需要への対応と健全な財政運営の確保により、行政目的達成に努めてまいりたいと存じます。
以下、基本施策の概要を申し上げることといたしますが、新年度は、特に、私たちの永年の課題である役場庁舎建設の時期、場所などのメドづけをしたいと考えています。すでに、庁舎等建設委員会を発足させ、調査研究を進めていることころであります。また、コンピューターの導入による窓口行政改善を図り、町民サービスの向上に努めたいと思います。
佐敷町は、決して豊かだとは申せません。しかしながら、財政が困難だからといって、町政を放置し、町民の生活を守る行政を進めなければ、困るのは町民であり、必要なときに必要な対応をしておかなければ、佐敷町のまちづくりが取り返しのつかないことになってしまいます。そこで私は、議員各位の御理解と御協力をいただいたうえで、少しの可能性でもさぐり、体当りで実現させる努力をつづける積極的な施策を展開していく考えであります。

社会福祉の充実
昭和48年に「福祉元年」が宣言されてからわずかも経過しないうちに、それまでの地方自治体による福祉政策を「福祉先取り」とか「ばらまき福祉」として批判する中で、「福祉見直し論」が登場し更には、「福祉の心」が強調され「高福祉、高負担」が前面に押しだされてきました。こうした状況の中で地域社会と福祉との結びつきのありさまが改めて問い直されるところとなり、一方では、社会福祉における役割分担という視点から、一方では、生活権、生存権の確保のためという住民参加の視点から、福祉への関心は高まってきております。
わが佐敷町におきましても、町政の究極の目標とするところは、町民福祉の増進させ、町民の幸せを守るということにあるという視点にたって社会福祉の充実を町政の基本にかかげてまいりました。
私は、新年度においても、なお一層福祉の充実強化に努め、佐敷町にふさわしい福祉風土を築きあげてまいりたいと思うのであります。
昭和55年度の町政施行とともに開設した老人福祉センターは佐敷町における福祉活動の拠点、として重要な役目を果たすようになりました。新年度におきましては、まさに福祉の殿堂として内外、ともにふさわしいセンターにしてまいりたいと存じます。お年寄りの皆さんの学習の場として、いこいの場として園芸教室、老人健廉教室等の諸学級の開設、老人健康相談リハビリ施設の充実と有効利用等をはかりたいと思います。また、琉球大学医学部の全面的協力を得て実施し、大きな成果をあげている寝たきり老人、一人暮らし老人の居宅訪問、老人健康診査などこれまで続けてきた老人の健康保持増進に努めます。そして、老人福祉センターを拠点に老人クラブ活動の育成強化を図ってまいります。
児童福祉につきましては、町内の町立、法人保育所の充実、強化を図ってまいりましたが、新年度も引き続き、保育内容の強化に努めます。
社会福祉の向上のためには、行政のみの取り組みではなく、町民各位の善意を結集し、行政と町民が一体となった福祉活動を展開しなければならないことは、私が常々申し上げてきたことでありましたが、この期待に応えて、民生委員、婦人会の小さなボランティアグループが地道な活動を続けております。この活動の輪をさらに大きくするための努力を続けてまいりたいと思います。
次に、「健康づくり推進事業」は、人口の高齢化、柱会環境の変化などにより、母子保健、成人病精神衛生、老人の健康増進などの保健需要が増大し、地域住民の密着した健康づくり対策が求められている状況に対処するため、昭和55年度からスタートしました。今、ようやく、この事業も町民の間に定着し、「自分の健康は自分で守る」という意識が芽ばえはじめたところであります。新年度は人間生活の基本である健康について、共に考え共に語り合う地域ぐるみの健康づくり事業を推進いたします。

生活環境の整備
佐敷町は、昔から恵まれた自然を発展の活力としてまいりました。それは、町制施行後の今日も変わらないことでありまして、佐敷町のまちづくりの目標は、この自然を背景に単に建物の集合体ではなく、人間の生活を豊かにしその必要とするものと願いを満足させ、だれもが人間社会の一員であることから生まれる満足と心の暖かさを見出しうる場所を提供することであります。
このため、道路、排水はもちろん、水道の整備、公園広場の創成など足もとから生活環境の整備の実現のテンポを早めてまいりました。
新年度におきましては、昭和53年以来継続している冨祖崎公園整備事業がいよいよ終盤を迎えグランドの整備を行ないます。そして、引き続き周辺の環境整備を進めてまいります。昭和58年には、町民の利用に供した考えであります。
また、新里・佐敷線道路の改良工事、伊原排水工事等を進めてまいります。講和発行前の道路つぶれ地補償を国の補助を受けて進めておりますが、新年度は、手登根、屋比久、外間、冨祖崎地内のつぶれ地補償を進めます。そして、交通安全対策施設として、カーブミラー、防護さく保安維持のための街灯の設置につきましても引き続き推進していきたいと思います。
次に「心豊かなふるさとづくり運動」につきましては、県と歩調をあわせ、町独自の運動として、「造林」「ハブ対策」「健康づくり事業」等とタイアップして進めていくことにしています。
日常生活に密着した水道事業の役割は重要であり、とくに水不足で断水が続く今日、特に力をそそがなければなりません。今日の水事情が悪いときにあって、断水時には、小谷や伊原の高台では水の出が悪くたいへん御迷惑をかけてまいりました。小谷地区については、新里地内の企業局所有の貯水槽からの分岐工事を終えました。
伊原地区については、配水管改良工事を進めており、新年度にはすべて終る計画です。また、国道331号線の津波古、新里間、津波古内の配水管新設工事を国庫補助を受けて実施する予定です。そして、漏水に対し細心の注意をはらうことはもちろん、各家庭への給水施設の充実に努めたいと思います。

教育 馬天小学校の開校と佐敷小学校 創立百周年への取り組みが中心
産業は土地改良事業を推進

教育環境の整備
次代を担う児童生徒は、豊かな環境の中で健全に育成されるよう配慮しなければなりません。これは、佐敷小学校創立以来百年にわたって先輩達が努めてきたことです。私たちは、当然、その精神を受けつぎ、発展させなければなりません。今年は、本町の教育史に特筆される記念すべき年です。一つは、明治15年に開校した佐敷小学校が6月25日で創立百周年を迎えることであり、一つは、馬天小学校が開校することであります。一方は、百歳、一方は誕生という人生にたとえれば、大きなお祝いを同時に二つも迎えることになるわけです。
新年度における教育行政は、この二大事業への取り組みが中心となります。
佐敷小学校創立百周年記念事は、すでに期成会を設立、6月15日に向けて、その準備を進ております。式典、記念誌発行、記念事業等を中心に百周年にふわしい行事を町民あげて取りたいと思います。
馬天小学校は、広大な用地取得について、地主をはじめ地元の有志の方々に多大な御協力を戴き、現在校舎建設工事を急ピッチで進めているところであります。二学期からは、新校舎で勉強できるようになりますが、新年度は、引き続き、プールの建設などを進め、周辺の整備や内容の充実に力を注ぎ、子供たちがおちついて勉強できる環境を一日もはやくつくりあげたいと思います。
また、佐敷小学校の不適格校舎の改築工事を進めることにしています。
社会教育につきましては、昭和56年度から社会教育指導員を配置し、書道、ものつくり、和裁生け花教室などを開講し、受講者から喜ばれましたが、新年度におきましても引き続き開講し、社会教育諸学級の充実に努めます。
また、子供会の育成と学力向上対策推進委員会の基礎づくりと社会体育の充実、有形無形文化財の保護育成などに力を注ぎ、生涯教育の観点に立って社会教育の推進を図り、明るく人間性豊かな町民づくりにまい進したいと思います。

産業の充実
本町の産業の主体は農業です。
しかし、農業のみを重視して、他の産業をないがしろにするということではありません。農業を中心に、水産業、商工業を有機的に結びつけ町全体を潤いのある町にしていこうというのが本来の目標であるということをまず申し上げておきたいと思います。
さて、沖縄県における農業の課題は、計画的な土地利用と、その総合的な環境整備にあると指摘されてから久しいわけですが、それに加えて、農業人口の高齢化が進むなかで、基幹的農業労働の若がえりが図られなければなりません。佐敷町においても問題は同様であり、私は、これまで農道排水等の整備事業に力を注ぎ、傾斜地の多い本町の農地の保全に努めてまいりました。そして、昭和56年度からいよいよ、津波古、小谷、新里にまたがる土地改良事業に着手したのであります。
この土地改良事業は、33.8ヘクタール、2億5千3百万円の予算と四年という長い年月をかけて行なわれます。ほ場の区画整理、排水路、農道綱等の整備を行ない、農用地の集団化による土地の高度利用及び大型機械の導入等により農業経営の合理化近代化を図ろうというもので、関係地主の皆さんからも大きな期待が寄せられているのであります。新年度におきましては、この大事業の推進を図るとともに、浜崎地区の土地改良事業の昭和58年度採択に向けた取り組みを開始する予定です。そして、伊原地区のかんがい排水事業を継続して行なう計画であります。
農地保全事業は、傾斜地で地すべり地帯の多い本町の農地の保全を図るために行なっておりますが新年度も引き続き、津波古、兼久地区の農道排水工事を行ないます。また、新たに、佐敷、手登根地区の農道排水の整備事業に着手いたします。
つぎに、農業構造改善事業は、昭和54年度からスタートした第二次構造改善事業計画にそって事業を進めてまいりましたが、昭和56年度は、伊原運動広場、仲伊保集落センターの整備を終え新年度の仲原保地区かんがい排水事業をもって完了することになります。新年度においては、第二次構造改善事業の総括と第三次農業構造改善計画立案に向けた準備に取り組みたいと思います。
造林事業については、昭和53年の事業開始以来37.12ヘクタール、57,680本の植林を進めてまいりましたが新年度においても、第一次造林計画にそって7ヘクタール10,500本のデイゴの植林を行ないます。
同時にこれまで植林されたデイゴの保育事業と作業道路の建設を進めたいと思います。
次に、さとうきび一辺等の農業からの脱却を目ざす農家のたゆまぬ努力によって、オクラ、サヤインゲン、花き・バナナなどの生産は順調な伸びをみせ、都市近郊農菜の方向をめざし着実な歩みを続けております。新年度も引き続き農協と連携して、生産規模及び生産農家の拡大、農業後継者の育成生産技術の向上と共同出荷体制の強化に努めます。
ところで、本町の農用地は、肥沃土で単位面積あたりの生産量が県内でも高い地域として知られておりました。しかしながら、最近の単位面積あたりの生産量を調べてみるとかなりの減収がめだちます。地力の低下はいなめない事実であります。それは、永年、化学肥料主体の農業が行なわれたことにも一因があり、地力の回復をはかるためには、畜産農家から排出される家畜ふん尿を利用して推きゅう肥を作り、農地へ還元し、ジャーガル土壌の欠点である重粘度性を改良しなければなりません。
町では、農協と相協力して、優良種畜の導入を図りながら、畜産振興を行ない、併せて、地力増強を図るように努める所存であります。
水産業につきましては、馬天港の総合的整備を国県に対し強力に要請していくとともに、基本施設の整備や漁船の大型化を漁協と相協力して進めるほか、技術の革新など地域社会性に立脚した水産業の確立に向けて一層の努力にはらいます。
商工業の振興につきましては、現在、商工会を中心に会員がよく結束し、自己研鑚と施設整備に努力されているところでありますがこのたび、馬天通り会を結成され国道への街灯設置を南部国道事務所へ要請するなど独自の意欲的な取り組みを続けられております。
町といたしましてもこれを全面的にパックアップしてその実現のために努力をはらうとともに、経営の安定的向上と近代化の促進に向けて商工会と連携して保護育成に努めてまいりたいと思います。

おわりに
以上、昭和57年度の町政執行の方針と施策の大綱を申しあげてきましたが、今日、町政が当面する課題は、極めて多くこれらの問題解決に町民が行政に期待するところはまた大なるものがあります。
冒頭でも申しあげましたようにこうした中で私に与えられた責務は、町民の英知と願望を集約し、それを基盤とした政策を計画的に実現することにあると心得ております。
今年は、祖国復期十周年に迎えます。復帰特別措置法が現行補助率でさらに10年間延長されることが認められました。しかし、今後10年のうちにその補助率は見直しされることが予想されるのであります。したがいまして補助率が高いうちに国の補助を受けて実施されるべき事業については、行政、議会、町民の三者が一体となって推進しなければならないと思います。いわば、私たちは、今後十年間のスタートラインに立っているわけですから心機一転今まで以上の努力を続けなければなりません。そのためには、議員各位をはじめ町民の皆さんも共同の責任において、佐敷町のなお一層の発展のため御指導、ご鞭撻をいただきますようお願い申し上げまして昭和57年度の町政の方針といたします。

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000487-0001
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第69号(1982年3月)
ページ 1-2
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1982/03/30
公開日