なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

私の提言 青少年の健全育成のために

家庭・地域・学校の輪が必要
はりあいのない日々を過ごす子らの未来に生きる心の芽を育てよう

子供たちが、心身ともに健康でたくましく育ってほしいと思うのは、すべての親の願いです。ところが、こうした親の気持ちとは裏腹に、年々少年非行が増え続けています。それは数の面ばかりではなく、内容の面においても、ごく普通の家庭の少年による非行が増え、低年齢化に一層拍車がかかるとともに、年少少年による殺人事件の多発、暴走少年による凶悪、粗暴事犯の増加のほか、中学、高校生による校内暴力事犯が激増するなど大きな問題をはらんでいます。これは全国的な傾向ですが、わが佐敷町でも、「佐敷の子に限って」とか「うちの子に限って」などと悠長なことをいっていられなくなっています。非行防止は対話のある家庭づくりからとよく言われますが、家庭でもまた親の自信のなさ、子供に対する無関心や放任、など子供を非行に追いやる原因をつくりだしています。今こうした子供たちに必要なのは、「安らぎのある楽しい場」としての家庭と、学校における適切な指導、そして、地域全体がその地域の子供たちに責任をもつふん囲気づくりです。
広報さしきは、佐敷小学校教頭の嘉数正一先生に登場してもらって、青少年健全育成のためにあらゆる面から提言していただきました。

<はじめに>
戦前および戦後の間もない頃に比べて、今のこども達は、二、三年ほど身体的な成長が早くなってきています。身体の急速な成長に対し、精神的な面が対応していかないのではないかと思われます。このことは、よりいっそりの指導が、家庭や教師に問われていることを意味しています。
次に、本町の教育問題として、都市的な悪い影響が徐々に、本町地域に浸透しつつあるという事実です。本町内の、都市的な様相をもつ地域に大なり小なりの青少年の非行が発生しています。
小学校では、3年生頃から上級学年へかけて、ポツリポツリ問題がでてきます。最近の中学生の状況はかなり深刻なものがあって、先生方も苦悩しておられるようです。
小・中・高校生とも、夜間それぞれの家庭で静かに勉強している子どもが何人いるでしょうか。平均的にみて、今の学校の教育内容を消化するには、最小限二時間の家庭学習が必要です。
家庭が単に、食事をとらせ、休養するだけの旅館的な機能を果しているのでは、もはや家庭とはいえないと思います。楽しい家庭、生き甲斐のある家庭こそ青少年が心の安らぎをえ、未来に生きる心の芽を育てていくのではないでしょうか。
かなり前、京都の大江町へいきましたとき、そこの小・中・高校生と話し合う機会がありました。
どの子どもも、どの高校のなにかの科へ進学し、どんな仕事をするかとはっきり述べているのに驚いたことがあります。
確かな希望は、やり甲斐のある生活の道しるべです。札幌農学校のクラーク先生の「少年よ、大志を抱け。」といわれた言葉について考えてみることが大切です。
現代青少年の一般的風潮として、あまりにも刹那的で、エゴで漫然とした生活態度が多いのが目立ちます。彼等の内面生活として、はりあいのない日々を過ごしているのではないでしょうか。
そこで、青少年健全育成のための方策(私案)について述べてみたいと思います。

地域教育力の高揚を図ろう
望まれる行動するPTAの育成、教育を考える会の結成

<家庭学習2時間運動の推進>
夜間外出禁止をよぴかける対象の子どもは、特定の少数の子ども達です。大部分の子ども達や家庭には、積極的に、このよびかけがよいと思います。ある程度親たちもテレビ視聴を自粛して、静かな学習のムードをつくっていくことが大切です。学校とPTAが協力して「家庭学習の手引き」を作成し、全家庭に配布して、具体的に指導していくことがよいでしょう。
ここでいう家庭学習とは、各教科の予習復習だけでなく親子の話し合いやよいテレビ番組の視聴読書等も含めた広い学習を意味します。

<地域PTAの育成>
青少年問題のほとんどは、下校後の、家庭周辺や地域でおこっています。家庭や地域を含めたいわゆる社会の教育力が劣弱で、学絞で毎日推進している教育の成果が思うようにあがっていない現状で、むしろその足をひっぱっている面もあります。カギっ子の問題、夜間外出、家出等がエスカレートしつつある現状で、PTAを中心とした地域運動をもり上げていくことが急務です。
各字の、幼・小・中・高校生をもつ親で組織し、行動する地域PTAとして育てていくことが最もよいと思います。町教委は、小中校一体の家庭教育学級講座の中でこのりーダーを養成していく必要がありましょう。

<地域PTAの活動>
地域の調査研究とパトロール、青少年情報の蒐集と検討、移動図書館の世話、教育懇談会、作業訓練表の実施、こども家の光のすすめ、家庭教育学級の開設(小・中校合同で各公民館で夜間開催するのがよい。)あいさつ運動、家庭学習二時間運動、教育講演会、学事奨励会、ラジオ体操会、たこあげ会、マラソン会、字PTA運動会、親子二十分間読書、少年野球、字こども会の育成など
以上の有意義な地域PTAとしての活動の中から、その地域で長く統けられるものを研究し、実施していくとよいでしょう。

<PTAの改革>
単P活動を中心としたあり方から、次第に、地域PTA活動を中心とした方向へその流れをかえていくことが地域教育力復活のために重要です。
PTA会員の中には、何かの特技のある方がかなりおります。そのすぐれた能力を、地域PTAの育成に活用することがよいと思います。例えば、公共の場所の保清(ペンキぬり、修理、清掃)、造園、あそび場つくり、草かり等や趣味のグループ活動として、空手、剣道・柔道、相撲、球技、花木づくり、模型工作などいろいろあります。土・日や連休および長期休業中の読書会もよいでしょう。

<PTA作業の親子作業会への転換>
一般的にみて、今の子どもたちは、確かな能力が身についていません。草かりや味噌汁のつくれない子がかなりいます。10人に1人のわりで特技のある親が各グループにつき、作業訓練をしていく親子作業会にかえていくとどうでしょうか。

<徹底した作業訓練表の実施>
能力のある子、思いやりのある子、親の苦労がわかる子、どのような社会にあっても堂々とやっていける自信のある子は、それ相応の作業訓練を経て育つものです。
単なる講義的な授業や教訓では全くその成果は期待できません。現代教育の盲点はまさにここにあります。近い将来、学校の機能はこのようなものに変っていくことでしょう。

<佐敷町の教育を考える会>
これは私の二・三年来の夢です。町内の各機関の中から、有志50名前後で組織し、自由な、徹底した教育討論をしていく中からいくつかの有効な万策がみつかるでしょう。2か月に一回ほどで定期集会をもち、町教委がいくらかの補助をして、積極的にパックアップすべきです。

<モンテッソーリ幼児教育方式の導入>
町立の保育所と幼稚園に、ソビエトやアメリカに広く普及しているこの方式を導入していけば、先に述べた作業訓練の実施に、スム一ズに入っていけます。単なるあそびでなく有意義な目的に満ちたゆうぎやあそびによって基礎的な作業訓練を幼児からやっていくようにするとよいでしょう。

<むすび>
次第に深刻化し、低年齢化する青少年問題について座視していては、悪くなってもよくなることはありません。私たちの気がつかない青少年非行の芽がまわりにかなりあるのです。
青少年問題解決のかぎはただひとつなのです。
彼等が内にもつ、はかりしれないエネルギーを、どのような有効な活動に転換できるかということです。地域杜会学校として、そこに生いたつこどもたちの輝かしい将来のために、今こそ地域の人々の英智を結集して考え、実践せねばならない時機に際会しているといってよいでしょう。
一人ではどうにもなりません。
だからその小さい力をまとめ、大きな組織活動体としての地域教育力を高めていくことが大切な考え方だと思います。

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000479-0008
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第63号(1981年3月)
ページ 4
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1981/03/25
公開日