一般会計29億7千万円を提案 前年度比2.06倍の伸び 福祉・生活環境・産業も重要施策
第7回佐敷町議会定例会は、3月12日に開かれ、山城時正町長が昭和56年度の町政運営の方針を明らかにするとともに、その裏付けとなる昭和56年度一般会計予算案、各特別会計予算案など48件の議案を提案しました。提案された各会計の予算額は34億900万円で、そのうち一般会計予算は29億7600万円(対前年比2.06倍増)となっています。山城町長は、施政方針の中で、「町として輝やかしい歴史の第一歩を踏みだしたものの、町の前途には、明るい希望とともにそれだけ多くの多事多難が予想される。町制施行をさらに意義あらしめるため、行財政の問題を総合的に検討する時期にきている。」とのべ、4つの基本施策をのべたあと、「予算総額は2倍以上にのびたものの、これも小学校の分離新設によるものであり、よりよい佐敷町づくりのためには町民のなお一層のご協力が不可欠である。」とむすびました。
はじめに
本日、第7回佐敷町議会定例会の開会にあたり、昭和56年度予算案をはじめ、提案いたしました諸議案の説明に先立ちまして、新年度の町政運営について所信を申し上げ、議員及ぴ町民各位のご批判をあおぎ、あわせて、佐敷町の発展により一層のご協力を賜りたいと存じます。
さて、私は昭和48年9月就任以来7年余にわたり、佐敷町政を担当してまいりました。今年は、私にとって二期目の締めくくりの年であります。私は、この村政から町政にわたる7年余を振り返えりますとき、感慨新たなるものを覚えるとともに、本土復帰後の激動を重ねた構勢の中で共に町民の生活と福祉の向上のためにご協力をいただきました議員各位はもとより、町民のみなさまに対しまして深く敬意を表し、感謝申しあげる次第であります。
私は、これまで(町政の運営にあたっては、常に人間尊重と福祉優先、平和で明るい豊かな町づくりを基本として、町民全体の民主的な町政を展開してまいりました。そして、現状を認識し、可能なかぎり未来を展望しながら、町民の要求する諸施策の実現に最大の努力をはらってきたつもりでございます。
特に、町民福祉の拡充、町民健康づくりの推進、病院の誘致、保育所の新設、塵介し尿処理施設の整備、町民サービスの強化、運動公園の拡充、道路排水を重点とした生活環境の整備、農業基盤整、デイゴの造林、地すぺり防止対策、漁業の振興と馬天港整備、教育文化の振興、教育施設の整備など積極的な推進を図ってきました。
また、内部においては、計画的な町政運営のできる執行体制の強化と経費の節減合理化に力を注いでまいりました。そして、去年の6月1日には、私たちにとって歴史に残るぺき町政施行という大事業を議員各位並びに町民のみなさんのご理解とご協力で遂行し、新生佐敷町として新たなスタートをきったのであります。
こうして、わが佐敷町も、議員各位をはじめ、町民のみなさんの積極的なご協力を得て、各種の施策が展開され、町民のたゆまぬ努力もあって、町勢は、発展をとげつつありますが、ご承知のとおり町政には、なすべき多くの課題が残されています。中央公民館、役場庁舎の建設、福祉の向上、産業教育の振興などについては、今後、町民との対話の中で、その実現のために早急に対策を講じていきたいと思います。
新年度におきましては、これらの問題解決はもとより、佐敷町基本構想に沿って、自然との調和の中で物心両面にわたり、人間性豊かな町民生活の確保された佐敷町の建設をめざし最大限の努力を払う所存であります。
そのためには、何といっても地方財政の確立が急務であります。
しかしながら、わが国の経済をめぐる諸情勢は、相つぐ石油価格の上昇、物価の高騰など、激動する社会経済環境の真只中にあって、資源エネルギーの安定確保など多くの課題への対応が迫られており、依然として厳しい状況が予想され、地方財政の運営も、これまで以上にますます困難な状況においこまれることは必至であります。
私は、これらのことを踏まえ、苦難に立ち向かうこの時期にこそ職員ともども気を引きしめ、あらゆる思考と勇断をもって財政の健全化に努め、新たな決意のもとに、町民サービスの強化を推進し、今後予想される試練を乗り越えていきたいと思います。
町政運営の基本姿勢
わが佐敷町も、町として輝やかしい歴史の第一歩を踏みだしたわけでありますが、佐敷町の前途には、明るい希望とともに、それだけ多くの多事多難が予想されるのであります。昨今の世界情勢を顧みますと、わが国は、困難な経済環境のもとで、多くの課題への対応が迫られており、厳しい局面に立たされております。沖縄県においても、復帰十周年の歴史的節目を迎えようとしている今日、復帰特別措置法の期限切れと沖縄振興開発計画の最終年度を目前に、本土との格差が是正されてない分野が多く、自立発展の基礎条件の遅れなど多くの課題をかかえています。
本町においても、町制施行をさらに意義あらしめるためにも、これを機に行財政の問題を総合的に検討しなければならない極めて重要な時期にきているのではないかと思います。
一方、社会経済情勢の各般において、量的拡大の時代から、自らの生活とそれに密着する地域の時代、福祉重視の時代へと転換が図られる中にあって、地域住民の地方自治行政に対する期待は非常に高まっています。
私は、このような困難な時代にあって、町民が真に町政へ求めているものは、耳ざわりのよい安易な慰めや迎合ではなく、ありのままの現実を卒直に示し、その克服への具体的施策を町民と共に考え実行していく姿勢であると考えています。
小学校は津波古に新設
(福祉)健康づくり推進事業と老人 福祉センターの充実強化
国際障害者年への取り組みの強化と障害児保育の開始
<基本施策>
以上のような認識のもとに、私も、一段と地方自治の使命を痛感し、佐敷町の長期的な行財政運営の見通しも踏まえて、新年度の行政運営について次の基本施策を設定いたしました。
私は、あらためて、この町政に課された使命の達成に自らの責務の重さを痛感しておりますが、それは、町民一人一人の努力によってこそ達成されると信ずるものであります。真に活力ある佐敷町建設のためになお一層のご協力をお願いいたします。
<社会福祉の充実>
人口の高齢化の急速な進行などの事情から、社会福祉への広範な需要は、年々拡大を続けております。私は、福祉の原点は、すべての人が常に文化的生活を営む権利を、国や自治体はもとより、社会全体が保障していくところにあると考えています。福祉行政を拡大強化していくことが豊かな社会づくりの基礎であるともいえます。
この厳しい財政事情下にあって、福祉の分野においても、施策の優先度について選択を迫られておりますが、新年度におきましては、従来の水準を落すことなく、老人福祉、児童福祉、母子福祉等を重点的に推進していきたいと思います。
また、本年度から実施している「健康づくり推進事業」も引き続き推進していきます。
老人福祉につきましては、老人の生きがいを増長させるために諸学級の開講などを進め、昨年開設いたしました老人福祉センターの有効利用を図ってまいります。また、ねたきり老人、一人暮し老人の居宅訪問、老人健康診査を引き続き実施し、老人の健康増進に努めます。
母と子の福祉につきましては、本年度に二つめの法人の保育所を設置したのをはじめ、これまで、保育対策の充実強化を図るため、保育所を増設してまいりましたが新年度は、新たに障害児保育を取り入れるなど保育内容の充実に努めます。
また、今年は「障害者の社会への完全参加と平等」をテーマに「国際障害者年」として設定されており、種々な企画キャンペーンがくりひろげられています。町でも国や県の事業と歩調をあわせ、各種の事業を積極的に推進していきますが、まずは、身体障害者協議会を結成し、リハビリテーションを促進し、援助及び指導を行ない、彼らが進んで社会経済活動に参加できるような環境づくりに努めます。
ところで、福祉の担い手は、行政サイドのみにまかせるのではなく、社会連帯感、隣人愛にもとづく地域ぐるみの観点に立ち、町が行う福祉行政を補完するものとして、住民のポランティア活動や各種団体の活動を強く期待しているところでありますが、町では、現在、民生委員、婦人会員を中心としたボランティアグループが地道な活動を続けており、たいへん心づよいかぎりであります。社会福祉の向上のためには、行政のみの取り組みではなく、町民互いの善意を結集し、行政と町民が一体となった福祉活動を展開しなければなりません。今後、この小さな活動の盛り上がりを期待するとともに育成に努めたいと思います。次に、「健康づくり推進事業」は、明るく楽しい町や家庭づくりのために、町民に密着した総合的な健康づくり対策を地域ぐるみで積極的に推進しようというもので、重要な施策のひとつです。特に、近年日本人の平均寿命が年々伸びている反面、働きざかりをおそう各種成人病が相かわらず増える傾向にあり、新年度は、その予防対策を重点とする健康づくりを推進いたします。
町道6号線の改良工事に着手 冨祖崎公園の整備事業も
心豊かなふるさとづくり運動を推進
伊原排水工事や街燈の新設、交通安全施設の整備充実も
<生活環境の整備>
町民が安全にして、かつ快適な生活を営むうえにおいて、生活環境の整備は、大変重要な施策であります。
これまでにも、道路の整備舗装、生活排水の整備につきましては大幅に実施してまいりました。
新年度におきましても未整備部分の整備改善を図っていきたいと思います。具体的には、町道6号線(新里-佐敷線)改良工事、伊原排水路工事等を進めていきます。
公園整備事業は、冨祖崎公園の継続事業が四年目を迎えます。すでに野球場が完成、町民の利用に供していますが、現在野球場、運動場のスタンドとその周辺の整備を進めており、新年度は、昭和57年度完成をめざし、運動場をはじめ、電気、水道、管理棟の工事に着手いたします。
その他、カーブミラー、防護さく等交通安全施設の設置、保安維持のための街燈の設置につきましても引き続き推進していきたいと思います。
さらに、県が進めている「心豊かなふるさとづくり運動」に歩調を合わせ、町独自の運動を展開します。この運動は、最近指摘されている生活環境の質的悪化に歯止めをかけて、町民一人一人の足元から生活環境の物的、精神的改善を図っていくことを基調とするもので、その成果は大きく期待されています。町では、去年12月に推進協議会を発足させ、この運動を「造林」「ハブ対策」「健康づくり」事業などとタイアップして進めていくことにしています。
具体的には、熱帯花木の植栽、土づくり、堆肥づくり講習会を実施して、ふるさとを緑と花で包む運動を展開します。また、ハブ及びそ族混虫など衛生害虫の駆除に力点をおき、有害動物の繁殖を許さない環境づくりに努めます。そして、それをもとに町民の精神風土の中枢をなす「ふるさとの心」を育む運動を推進してまいりたいと存じます。
小学校分離新設のために13億円 校区は津波古・小谷・新開
社会教育学級の充実 町史は全3巻を発刊
<教育環境の整備>
たくましくて個性的な、創造性と社会連帯感に富んだ次代の担い手づくりのため、のびのびと安心して勉強ができる教育環境を整備することは、現在の私たちに課された責務であります。教育の重要性はいかに強調してもしきれるものではありません。今日の教育をおろそかにすることは、未来に対する責任の回避にほかなりません。従いまして、教育予算には、毎年多くの財源を充当し、学校教育、社会教育をより充実発展させるため教育委員会と連携を密にし、諸施策の推進を図ってまいりました。
新年度における大きな事業は、何といっても小学校の分離新設であります。近年における人口の増加、特に児童生徒の伸びは著しいものがあり、一小学校の適正児童数の規模を大きく上まわっているのが現状であります。近い将来、学級生徒数の40人制が実施されるとますます学校分離の必要性に迫られてくるのであります。
教育委員会では、昭和57年度開校をメドにこれまで慎重に検討を重ねてまいりましたが、このほど津波古の加那堂原に建設することを決定しました。今後は、用地の取得について関係者のご協力をあおぎながら進めていくことになります。
また、校区についても、適正規模でバランスのとれた小学校にするために、津波古、小谷及び新開にすることを決定し、昭和57年開校をめざし、着々と準備を進めています。
町としても、現今の厳しい財政状況の中で、このような大事業を行なうことはまことに深刻でありますが、いかなる財政事情下にあっても教育の需要は優先されなければならないという視点に立って決意を新たにこの事業を関係者のご理解とご協力を得て、強力に推進していきたいと存じます。
社会教育につきましては、今年度も引き続き各種講座や社会教育学級、研修会をより多く開催し、社会教育団体の育成を図りたいと思います。特に新年度は、社会教育指導員を配置し、これまでの家庭教育学級、成人学級、高齢者学級、婦人学級に加えて、文化教養講座、水泳教室等を開講し、社会教育の充実に努めます。
また、昭和52年度から継続している町史編纂事業も、佐敷町の歴史を町民の立場から考え、佐敷町の現在を問い、未来を展望する資料とすることを編集の基本方針として現在調査活動が進められております。佐敷町史は、全三巻が三年計画で発刊されますが、新年度においては、第二巻「民俗編」が刊行されることになってます。多くの町民の主体的な参加によってつくられるこの町史は、他の町村に類を見ないユニークなものになると思います。
津波古、小谷、新里で土地改良総合整備事業
馬天港整備事業も着工 沖縄県植樹祭本町で開催
<産業の振興>
本町の産業の主体は農業でありその生産基盤の整備、開発を促進し農業の振興を確立することは、町となった今日においても、町政のこれまた主体をなすものであります。
ご承知のとおり、本町の農用地は、肥沃土でさとうきびの単位面積あたりの生産量は県内でも高い地城であります。しかしながら、農家一戸あたりの耕地面積は、極めて零細でその上更にほ場は数筆に分散し、土地生産性、労働生産性の低い状態が続きました。そのため、土地改良事業及び農地保全事業等で、生産基盤の整備を行ない生産性を高めるという課題への対応が迫られておりました。
そこで私は、これまで農道排水等の整備事業を積極的に推進してまいりましたが、それに加えて、新年度においては、津波古、小谷、新里にまたがる土地改良総合整備事業に4年計画で着手いたします。
また、農地保全事業においては今年度にひきつづき、兼久地区の農道排水、水兼農道工事、伊原地区の河川工事を行ないます。
次に、昭和53年度に策定した農業構造改善計画に沿って、農業組織化促進事業、農業生産基盤整備事業、農村環境施設整備事業等の推進を図りたいと思います。とりわけ、今年度は小谷、佐敷、外間で農村広場を建設し、農村環境の施設整備に努めましたが、今後ともひきつづき他の字にも建設できるよう努力いたしたいと存じます。
造林事業については、自然環境の破壊が徐々に進行しているなかにあって、ますます重要になってさました。町では、背後の傾斜地にデイゴの植林を行なっていますが、昭和53年の事業開始以来28.12ヘクタール、44,180本の植林が完了しております。今後は、第一次造林5ケ年計画にそって、50.7ヘクタール76,000本のデイゴを植える予定です。また、新年度においては、沖縄県緑化推進委員会主催の沖縄県植樹祭が本町で行なわれることになっていますが、町民各位のご協力を得て成功させたいと思います。
次に、本町においても、都市近効農業の方向をめざし、そ菜、園芸等の付加価値の高い作物の導入に力をそそいできた生産農家や農協の努力が実を結び、オクラの生産高において県全体の30%にも及ぷ実績をあげました。
新年度は、農協と連携して、生産規模及び生産農家の拡大を図り生産技術の向上と共同出荷体制の強化に努めます。そして、有畜農業も平行して推進し、畜産業の振興を図りたいと思います。
水産業につきましては、新造漁船に対する補助金制度をもうけます。また、水産業従事者の長年の要求である馬天港の整備についても、県に強力な要請を重ねてまいりましたが、このほどその調査設計が進み近く着工のはこびとなっています。今後は、東側の仲伊保地域の漁港整備事業が早急に着工できるよう県に引き続き要請していきます。
商工会が結成されてから6年目になりますが、その間、商工会の役員をはじめ、会員の皆さんが、施設の整備拡充に協力してこられました。今、その成果が着実に実を結びつつあります。町でも、本町の商工業の大部分をなす零細中小企業の育成を図り、商工会その他関係機関と連携し、指導体制の強化と生産基盤の整備拡充に努めます。
農地保全事業で整備された農道
兼久地区の農道排水工事
<その他>
その他県直営事業といたしまして
○津波古地区農地保全事業
○新里、伊原地区地すべり対策事業
○馬天港整備事業
○佐敷、冨祖崎間護岸整備事業
○県道137号線整備事業
以上五件の事業が執行されることになっています。
<おわりに>
昭和56年度予算案は、複雑多岐にわたる町民要求を可能なかぎり満たすべく努力いたしました。しかし、町の財政は厳しく、要求に十分応えることはできません。予算総額が29億円余と今年度に比べ二倍以上の増となっていますが、この伸びも小学校の分離新設によるものが大であります。従いまして、新年度におきましても町内部の執行体制の確立はもちろんですが、議員各位をはじめ町民のみなさんのご協力は不可欠の条件となります。よりよい佐敷町づくりを進めるためには、町民ひとりひとりが主人公であり、自らの行動によってのみなし得るという意識をもつことが大切でありましょう。
どうか議員各位におかれましては、慎重審議の上、速やかな議決をたまわりますようお願い申し上げるものであります。