なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

民俗調査によせて 佐敷町史編集委員会委員長 瀬底正俊

歴史の中に生きる
歴史は、人とその住む場所のあらゆるものの関わり合いの中から生れ続きます。今あなたの立って居る場所、住んで居る村や町で、あなたは歴史の一頁の中に住んで居ます。
人の歴史は、大自然を活用して衣食住を得、幾目千年を重ねて現在の人類の発展をもたらしました。私たちの祖先がこの土地で生きてきた「あかし」を探り現在の関わり合いを研究し、これを記録に残すことにしましょう。

受けつがれる話し
町史のための民俗調査という形で2月から手がけている活動中、佐敷村から佐敷町に変りましたが、私たちの活しの歴史はそのままうけつがれています。
それで村史が町史となるわけです。私たちが一番心配しているのは、お年寄りの方が御元気のうちに調査しないと佐敷町の各字々の行事、信仰、言い伝え、産業のうつりかわりがわからなくなる事です。それで先づ民俗編をつくるため、大きな古い字である津波古から、調査をはじめました。はじめのうちは、聞く方も、話される方も、固くなって、話の順序や、ヤマトグチとウチナーグチの言いあらわしかたのちがい等うまくいきませんでしたが、回を重ねるごとにお年寄りや先輩の方々から、次々と色々な話が出て来て、中には忘れかけたものを、この集りで思い出して下さった方もありました。男の方、女の方、それぞれ夜おそくまで、結婚、祝い食事、農耕、漁業、字の習慣など、各家の生活様式、団体の生活の様子、こまごまと話が出て来ます。
お年寄の方々は寒いときも、夜おそくまで時を忘れて熱心に話して下さいます。「祖父母と孫の語りがなくなった」テレビ時代になってしまいましたが、私達が津波古の民俗調査をしている場面は、孫や、家族が昔のランプの下で火鉢を囲んで話し合って居る気分になりました。
昔はイモをたべながら、ヒーターを着て孫達と話合い、畑や田に行って共に仕事をして居ました。この日常生活が「語り」として残ります。サーターヤーの話、タナゲー採りの話、子供の遊びや子守唄、それぞれ昔から今までの子供の世界、大人の世界をこの村や町で形づくり、その中に生きて来た事が話されます。昔は、方言は「悪い」といい田舎や地方の風習は「野蛮」とか、「時代おくれ」と言われましたが、今や地方の時代とも言われる様に、田舎の文化や、風習や生活の集合が、県や国の文化、歴史を形作っていることが重視されて来ました。人間はその住んで居る場所や地域によって差別されてはなりません。
又暑い地方では熱さとたたかい寒い地方では寒さとたたかい、それぞれ、子孫を産み育て、衣食住を中心として「民族の文化」を形づくって来ました。私達の祖先が生き、今私たちがつくりつつあるこの町の民俗や文化を町史を通して子孫に物語りたいものです。

歴史をつくる場所
これから町史の民俗編、資料編、文育、医療、人口、行政、自然等の各論編等2、3冊の町史を編集しようとしています。沖縄戦を生きぬいたお年寄達は、家屋敷も戦争のために無くなり、書類も焼かれ生活様式もすっかり変わった今でも、やはり自分達が子供の時から住んで来た所を愛します。今私達は子供達と一緒に住んで居るこの場、この家、この地域を「歴史をつくる場所」だという気持で、私達の日常を大切にしこれを子供達と共に、彼らの将来に、恥しくないよう申し伝えようではありませんか。昔の写真や、書類も私たちの歴史を物語り伝えてくれる大切な資料ですので、皆さんの家やお隣りに、お持ちの方は、役場内にある町史編集委員会事務局に御連絡下されば幸いと思います。色々な面で町民の皆様の御協力をお願いします。

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000478-0010
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第62号(1981年1月)
ページ 3
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1981/01/01
公開日