基本計画の策定急ぐ 行財政の見直しで
山城時正村長は、去る3月定例議会で昭和54年度の施政方針をのべ、新年度の村政運営の方針を明らかにしました。その中で山城村長は、これまでの人間尊重と福祉優先を基本とした「豊かで明るい住みよい村づくり」をさらに推進させていくこと。そして、佐敷村基本構想とそれに基づく基本計画に沿って実施計画を年次的に推進していくことを村政運営の基調として示しました。具体的には ①村民福祉の充実 ②生活環境の整備、③教育環境の整備、④産業の充実の四つを施策の柱としています。現在のような社会変動の激しい時代にあって、多種多用の行政需要に対拠するため、行財政の見直しを行い、事務事業の効率化による村民サービスの向上をはかること。そして、すべての村民との連帯による合意と協調による村民総参加の行政を推進していくことを強調しています。
はじめに
本日ここに第201回佐敷村定例議会が開会され、昭和54年度予算案をはじめ、関連する議案の御審議をお願いするにあたり、新年度の村政運営に関する私の所信の一端を申し上げ、議員並びに村民各位の御批判を仰ぎ、佐敷村の発展に、より一層の御協力を賜りたいと存じます。
私は、昭和48年9月、広く村民の信託を受け、村長に就任以来今日まで、常に人間尊長と福祉優先を基本として「豊かで明るい住みよい村づくり」を目標に村政を推進してまいりましたが、その間いくたの困難な課題に直面しながらも、ひたすら村民生活と福祉を支える基盤として、地方自治の使命を果すべく最大の努力を傾住してきたのであります。
さらに、沖縄県がようやく復帰10年という歴史的な節目を迎えようとしている今日、村政のあらゆる問題を総合的に検討を行わなければならない極めて重要な時期であることを深く認識いたし、私に課された責任と使命の重大さをあらためて痛感いたしている次第であります。
経済、社会をはじめとする内外の諸情勢は、真に厳しいものがありますが、村民生活を守りその向上をはかることは、国や県の施策もさることながら地方自治体の果すべき役割も重大であります。
私は、村民本位の村政を運営し村民の信頼と期待にこたえるべく新たな決意と情熱をもって、村行政を力強く展開する所存であります。
さて、わが国の経済は、石油ショック以来、今日なお依然として不況を脱しきれずに低迷を続けており、企業の倒産、失業不安、物価高騰など、国民生活に大きな不安をあたえ、さらに円高による追いうちを受けるなど、極めて厳しい現実に直面しているのであります。特に、本県における慢性的な不況の嵐は、企業倒産と失業者の激増といった一段と厳しい状況にあります。
このような低経済成長の中で、地方財政の危機は一層深刻化しており、ときあたかも「地方の時代」といわれつつも、国の地方財政対策がいまだ不十分なため、今後の地方財政の運営は以前にも増して困難な状況に立たされることが予想されます。
私は、これまでも全国の自治体と連携してその改善をはかるよう要請してきましたが、引き続き抜本的な改善を要求していくとともに、執行体制を強化し、経費の節減等に努め、多種多様化する村民要求にこたえてまいりたいと存じます。
具体的な施策について申し上げますと、村民福祉の面では、児童、老人、母子福祉事業等の充実、心配ごと相談の開設、消防救急業務の強化、保育所の建設、医療施設の誘致等を積極的に進めてまいりました。
生活基盤の整備におきましては各字の道路、排水の整備、塵芥し尿処理の実施、浄水道の全村給水、街燈、公園事業等の推進をはかってまいりました。
このような施策推進の結果、佐敷村の村づくりは大きな成果を逐げたものと確信いたします。
これもひとえに、議員各位、村民の皆様の御支援と御協力の賜ものでありまして、深く敬意を表し感謝を申し上げるものであります。
今後は、更に、佐敷村基本構想に沿って計画的な村づくりを推進し、より一層望ましい村の建設に全力を傾注する所存であります。
ただ、私はこの間、村民生活の向上に相当の努力をしてまいりましたが、その成果は必ずしも十分だったとはいえません。
御承知のとおり、村政にとって未解決のいくつかの課題があります。地籍確定に伴う市街化区域の再開発、港湾・漁港の整備、農業基磐整備事業の拡充、社会福祉施設、祉会教育施設の整備等については、早急な対応が望まれており更には村民サービスの拡充においても、一層の努力を払わなければならない課題があります。
私は、これらの問題解決のため引き続き努力していく所存であります。
村政運営の基本姿勢
地方自治体の仕事は「ゆりかごから墓場まで」と言われていますように、極めて広範多岐にわたっております。行政の主体である村民もまた、それぞれ異った価値観をもっております。とりわけ、現在のような社会変動の激しい時代にありましては、多種多様にわたる村民要望となってあらわれる行政需要は、質、量とも増大しているのが実情であります。
このような時代こそ、行財政の見直しを行ない、事務事業の効率化による村民サービスの向上をはかるべきであると存じます。また社会の不公平をなくして、社会正義が貫ける行政をモットーに、常に襟を正して村政に取り組まなければならないと存じます。
そのためにも、村民の生活と権利を守る使命と、村民全体の村づくりへの不断の努力を払い、すべての村民と連帯感を強め、合意と協調による村民総参加の行政を推進していかなければならないと存じます。
すなわち、地方行政を強化し、自治体の事務の拡充に務めるとともに村民本位の民主的な村政運営をはかっていく所存であります。
具体的には、村民の合意に基づいて策定された佐敷村基本構想とそれに基づく基本計画に沿って、実施計画を年次的に推進していくことになりますが、この目標達成のため、あらゆる場所、あらゆる場面において広く村民のみなさまによって討議され、肉付けのための積極的な提言をいただくことを期待し、計画が実効性をもつよう積極的に努力を傾け、村民のみなさまの御理解と御協力を得ながら対処してまいりたいと存じます。
新年度予算の編成にあたりましでも、厳しい財政の中で村政を運営しなければなりませんが、経常経費の節減に努め、村民の生活と福祉の向上を最重点に考えて次の基本施策を推進してまいりたいと存じます。
4つの基本施策を設定 福祉センターの建設へ
一、村民福祉の充実
村政の究極の目標は村民福祉の向上にあり、行き届いた福祉柱会の実現は、9千村民が等しく希求するところであります。
しかしながら、かって「福祉元年」「社会的弱者救済」などの言葉に象徴される高度経済成長下の政策が、低成長時代の今日、福祉優先が後退し、福祉見なおし論がとなえられております。まさに、経済活動の中でゆれ動く福祉行政といっても過言ではありません。
しかし私は、福祉行政が反省期にはいったといわれる現下の社会情勢の中でこそ、より切実な課題として取り組むべきであることを国、県に訴えるとともに、本村の行財政能力を最大限に生かしながら、真に福祉を必要とされる人々のために選択的、重点的に施策をおこなえるよう配慮いたしてまいりたいと考えております。
特に社会的に弱い立場にある村民に対する施策は、これまで以上に守り育てなければなりません。厳しい財政危機を背景としながらも、福祉行政全般にわたり、従来の水準をおとすことなく、継続、もしくはこれを高める努力を、可能なかぎりつづける所存であります。
さらに新年度は、待望の老人福祉センターが着工の予定となり、老人に対するボランティア活動の拠点として、老人スポーツリハビリ、相談事業及び地域活動の育成事業等を積極的に進めてまいりたいと考えております。
また、地域医療を確保し村民の健康を守る立場から、病院誘致が具体的に進められていますが、年中には開所される運びとなっております。
これらの事業が完成しますと、村の保健事業と相まって医療福祉の向上は、一段と充実するものと存じます。
二、生活環境の整備
「生活の快適性、安全性、住民の連帯感」といった前述の行政目標については、総合計画、基本計画の中で、長期的な展望か明らかに出るものでありますが、新年度におきましても、村民が安全に、かつ快的な生活が営めるよう住みよい生活環境の整備促進をはかりたいと存じます。
道路舗装、生活排水の整備につきましては、村の重要施策として強力に推進してまいりましたが、特に本事業にあっては、地域の特殊性を十分考慮し、議員区長各位の協力体制で実施要綱を作成、地主のみなさんの御協力をいただいて、極めて短期間に大きな成果を上げえたことは、誠に御同慶にたえない次第であります。
今後は未整備の幹線を主体に、年次計画的に整備促進をはかりたいと存じます。
次に、公園整備事業の面では、昨年4月新開の近隣公園がオープンしましたが、新年度におきましても、継続事業として、冨祖崎の公園整備事業を推進いたします。
防護さくなど交通安全施設の設置、街燈の設置等につきましても引き続き、推進してまいりたいと存じます。
更に、津波古地区の地籍確定調査もこのほど図面関係を終り、作業も順調に進められており、地主の御協力を得てぜひとも成功させなければならないと存じております。
三、教育環境の整備
教育行政につきましては、毎年度重点施策として多くの財源充当をはかってまいりましたが、新年度も、学校教育、社会教育を人間形成の車の両輪として促進していくため、教育委員会と密接な連携をはかり、教育条件の整備充実に格段の配慮を続けてまいる所存であります。
教育施設の整備につきましては佐敷小学校の西側校舎を東側に整理統合するための三階建の新校舎が昨年12月に完成、三学期からは全校生徒が東側のすばらしい校舎で勉強しております。
新年度は、小学校プール、中学校校舎の建設等が計画されております。
さらに、本村の社会教育、文化財保護の活動も、地域に根をおろし、一段と充実しつつあります。社会教育関係団体等の育成をはかりながらその振興に取り組んでまいりたいと存じます。
特に新年度は、佐敷上城の埋蔵文化財の発掘調査が計画されており、その成果が注目されております。また、地域コミュニティーづくりの推進をはかるため、伊原地区の公民館建設が計画されております。
中央公民館の建設につきましては、各種団体や多くの村民から強い要望がございますが、私としても、その必要性を痛切に感じ、早速、公共施設配置委員会を設置し御検討いただいたわけであります。これまでに、建設場所等について同委員会からの答申を受け、準備に着手したのでありますが、用地の問題を解決するため最大の努力をいたしたいと思いますので村民の御理解と御協力をお願いいたしたい所存であります。
四、産業の充実
本村の産業の主体は農業でありその生産基盤の整備、開発を促進し、農業の振興を確立することは、行政のこれまた主体をなすものと考えるものであります。
土地生産性は、さとうきびの反収が10トンをこえる肥沃な土壌で県内ではもっとも高い地域でありますが、経営規模がきわめて零細で、しかも分散しているので、今後は農業振興計画に基いた生産基盤の整備を急ぎ、耕地の拡大、生産性の向上を推進いたしたいと存じます。
さらに都市近効農業の方向をめざし、野菜や花、園芸など付加価値の高い作物の動入をはかり、畜産と結合した複合経営で、農業の振興を積極的に推進してまいる所存であります。
農業基盤整備事業につきましては、新年度は、農道、排水の線的整備事業しか計画しておりませんが、農地を区画整理する面的事業についても、現在事務処理を行なっており、55年度採択に向けて本年度の重点事項として、取り組んでまいりたいと存じます。
野菜の生産につきましては、本土出荷するようになってから急速に伸びつつあり、村としましても生産奨励の施策を構じておりますが、今後も農協とタイアップして生産拡大をはかるとともに、共同出荷体制を確立してまいりたいと存じます。
畜産につきましては、有畜農業による地力増進で農業生産の拡大をはかるという基本的な考えのもとに、生産奨励を行うと共に、畜害防止のため堆肥盤の設置を促進してまいりたいと存じます。
その他、新年度事業としましては、前年度に引き続きキビ作の振興、パワーショベルの導入、造林事業、農業後継者の育成、漁業、商工業への育成補助等が計画されております。
おわりに
以上、昭和54年度の施政に対する私の方針を申し上げましたがこれにつきましては、予算案や関連議案をとおしてさらに、具体的に御審議いただき、御同意下さるようお願い申しあげ、私の施政方針といたします。