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福祉村政の確立に全力 山城村長が施政方針で示す

四つの「施策の柱」設定で
村民の諸要求に的確に対処
地方財政の確立も示唆

山城時正村長は、去る三月定例議会で昭和52年度の施政方針を述べ、新年度の村政運営の方針を朋らかにしました。その中で山城村長は、村民福祉を最優先に考える自主政治姿勢の確立と、人間尊重を基本理念とした地方自治の確立、平和で明るい村づくりを基調として、①村民福祉の充実②生活環境の整備③教育環境の充実④産業の振興の四つの基本施策を示し、それに伴う一般会計、特別会計の総予算額11億七千三百万円を計上しました。また具体的な事業として、▼長期展望に立脚した村基本構想の決定・▼村道・生活排水、公園の整備・▼農振計画に基づく農地保全事業、一般土地改良事業、▼野菜の共同出荷体制の確立、▼津波古地区の地籍確定事業、▼市街化区域の区画設計、▼寝たきり、一人暮らし老人の居宅訪門事業、▼法人保育所の整備、▼幼稚園園舎、中学校特別教室の増築工事など不況克服をはかる積極的な事業を中に、村政が地域住民の諸要求に的確に対処し住民福祉の向上発展に最大の努力をはらっていくことを強調しています。次は施政方針の概要。

総合計画・基本構想を策定 新たに村民編纂も着手
はじめに
本日、昭和52年3月定例会の開会にあたり、議員ならびに村民各位に対し、新年度村政運営に関する私の所信を申し上げ、議員各位のご批判をあおぎ、あわせて佐敷村政の発展に対する一層のご協力をたまわりたいと存じます。
また、新年度は私にとりまして村民各位から村政を信託され、早や四年目の締めくくりの年であります。この間私は、沖縄の世変わりとも言われた本土復帰後の山積する幾多の課題に立ち向いながら、村長就任にあたって、村民に公約いたしましたとおり、村民福祉を最優先に考える自主政治姿勢の確立と、人間尊重を基本理念とした地方自治の確立、平和で明るい豊かな村づくりを目標に村政を進めてまいりました。
また常に厳しく現状を認識し、可能な限り未来を展望しながら、村民の要求する諸施策の実現に最大の努力を傾注してきたつもりであります。
老人福祉、保育所の新設、塵芥し尿処理の実施、浄水道の全村給水、消防救急業務の強化、公園整備、道路、排水の整備を重点とした農業基盤整備、生活環境の整備教育文化の振興、教育施設の整備などの積極的推進をはかり、また内部においては、行政の民主化と計画的な村政運営のできる執行体制の確立に力を注いでまいりました。
村の将来の方向づけを決定する佐敷村総合計画、基本構想の策定もこれまでの審議を経て、今議会に提出されるはこびとなっております。きわめて短期間のうちに、これだけの事業が推進できましたのも、ひとえに議員各位のご協力と、村民の信頼ご支援の賜ものでありまして、衷心より感謝申し上げますとともにあらためて深くお礼申し上げます。

村政運営の基本姿勢
さて、最近におけるわが国経済は物価の高謄が漸く鎮静化の傾向にあるとはいうものの依然として根強い不況が続いており、到産、失業など国民生活に様々の深刻な影響を与えております。このような経済状況なればこそ、村民の行政需要はますます増大し、住みよい村づくりへの切実な課題を実現すべき段階にあるわけであります。しかも従前に引続き、村民の暮らしと健康を守り、福祉の維持増進を図らなければなりません。
私は、この時期における地方政治の責務を一層深く自覚し、これまで同様村民の立場にたって、福祉村政の確立を推進する決意であります。
また、自治権の確立と自治体財政のたて直しを図ることが何よりも重要であると考えます。
どこの国の憲法も、その国民の権利と義務を規定していますが、特にわが国の憲法は平和を守ることを基調として人権の尊重と国民福祉を保障しています。われわれ末端の地方行政は、出生から死亡に至るまで、人間生活のすべての領域に直接タッチし、住民要求に適確に対応する行政の運営に努力しているのでありますから、国は全国どこに居住しようとも国の恩恵を均しく享受する権利を有するわけでその裏付である自治体財政の確立は緊急に行われなければなりません。また、当然のことと考えます。
真の地方財政の確立のためには現在の中央集権的税財政の構造的矛盾を解消し、基本的改正の実現が必要でありますが、当面懸案となっております超過負担の解消、地方交付税率の引き上げ、地方債制度の改善などについて、同じ立場に立つすべての地方自治体と共に、目的達成のために努力しなければならないと考えております。
一方、行政需要の複雑多様化に対応するため、内部体制の確立をはかり、予想される重要問題については、プロゼクトを組んで担当スタッフにより処理するなど機動的に対処し、行政の効率的運用が図れるよう努力したいと思います。
このようなきわめて厳しい財政実態のなかで、昭和52年度における佐敷村の予算編成に当りましては、村民に直結する地方自治体として、村民の生活と福祉をまもることを最重点に考えたのでありますが、素直に申し上げて充分なものとは考えておりません。しかしながら、今日の状況のなかでは、国も、自治体も、村民の皆さんも、こぞって一致協力し合い、当面する重大な危機を乗りきることが大切だと考えるのであります。

基本施策
昭和52年度はこのように厳しい財政の中で村政を運営しなければなりませんが、厳しい故に、私共は現在をより的確につかみ、将来に悔を残さぬよう対処していかなければならないと思うのであります。
そこで本村の現状を正しく認識し、平和で明るい豊かな環境づくりを基調に昭和52年度は、「村民福祉の充実」「生活環境の整備」「教育環境の整備」「産業の振興」を施政の柱として、推進してまいりたいと思っております。
次に、それらの施策について具体的に申し上げたいと存じます。

1、住民福祉の充実
私は、地方行政をすすめるにあたって、すべて村民が健康で、文化的な生活が保障されることをめざすものでなければならないと考えております。
なぜなら私ども自治体をあずかるものは、その地域の人々の平等なしあわせを守る義務があるからです。
したがって、生活保護、心身障害者福祉、老人福祉、児童福祉などには引き続き力を入れ、また各種相談業務の充実を図ってまいりたいと存じます。
(1)老人福祉対策については、多年にわたり、地域社会の発展のために寄与されました老人の方々が、自適生活がおくられるよう、老人クラブなどの充実発展を助長し、さらに進んで老後の生斐を高めるための積極的、給合的な福祉対策を講じなければならないと考えております。
特に老人福祉施設の整備をはじめ、在宅老人対策においても、他府県に著しい立ち遅れをみせている特殊性に着目し、新年度から新たに寝たきり老人、一人暮らし老人の居宅訪問事業を実施いたします。
さらに、三年前から実施され、効果を上げています琉球大学保健学部による老人健康診査を、引続き実施し、老人の健康増進に努めます。
(2)母子家庭及び低所得者に対しては、民生委員と密接な連携を保ちつつ、村社協を通じてその福祉増進を図ると共に、民生委員の協力を得て、心配ごと相談を継続していきます。
(3)児童福祉については、幼教育の重要性を認識し、あらたに法人による保育施設の整備充実図ります。

2、生活環境の整備
現在の激しい社会構造の中にあって、村民の村政への要求は多様化し、特に生活条件の整備についしは、急を要するものが多々あります。
今年も、村民が安全に、かつ快週な生活が営めるよう住みよい生活環境づくりを基本目標として、次のような施策に取りくんでまいりたいと存じます。
(1)村民の生活に密接な関係にあります道路、排水の整備は村の最重要施策として昭和49年度かり強力に推進してまいりましたが新年度においても、財源を重点的配分し本事業の整備促進を図ります。
あわせて、通交区分変更などに伴う防護柵、警戒標式などの道路他設工事を計画的に推進します。
また、工事を執行するにあたっては、用地問題など関係地主のご理解が最も重要でありますので村民のご協力をお願い申し上げます。
(2)公園緑地は、村民生活にとって極めて重要なもので、村民の憩の場として、また生活にうるおいを与えるうえで欠くことのできない施設であります。
新年度で新開の近隣公園が完成することになっています。これが完成すれば町村においては、初めての本格的公園が実現することになります。更に、冨祖崎地域において、第二番目の公園整備事業として本格的な敷地造成工事を着工します。
(3)ごみ、し尿処理については、東部清施組合において、施設設備の充実強化に努めているところでありますが、特にこの問題は、村民生活と直結した主要な事業であり、村及び受託業者、住民が一体となって努力しなければその目的を達成することができません。
より効果的な本事業の推進を図り村民が明るく清潔で快適な生活ができるよう、健康な村づくりを推進します。
(4)市街化区域に指定されている津波古地区において、新年度から都市計画委員の協力を得て市街化区域区画設計を進めてまいります。

幼稚園々舎を新築 中学校特別教室も
3、教育環境の整備
基本的人権を尊重し、豊かな個性と創造力を養い、人間の潜在的可能性を開発する教育の重要性はいまさら申し上げるまでもありません。
教育環境を整備し、教育内容を充実することは、現在の私たちに課せられた責務であり、いかなる財政事情下にあるにせよその需要は優先されなければなりません。
従いまして、これらに対処すべく次のような教育環境の整備充実を図ってまいります。
(1)教育施設の整備充実につきましては、51年度までに小学校の特別教室、給食準備室、中学校の体育館が完成し、新年度には建設中の中学校特別教室が完成いたします。幼稚教育につきましてはその重要性にかんがみ、これまで配慮してまいりましたが、全ての園児が収容できる園舎を新築いたします。
これらの事業が完了すれば、本村は昭和52年度中において、教育施設は一応整うことになります。幼稚園、小学校、中学校の一環した教育ができるものと思います。
今後は教材備品の整備拡充を計画的に図ってまいります。
(2)社会教育の振興につきましては、今年度も引き続き各種講座や研修会をより多く開催し、社会教育関係団体などの育成を図りながら、その振興にとりくんでいきます。
特に新年度は、団体指導者のための研修派遺費補助を計上し、これらの育成を図ります。
また、スポーツ人口の拡大を図るため、村営新開グラウンドを多目的に活用し、体力づくりスポーツ大会の充実を図ります。

地籍確定や農地保全事業
県直営で沿岸整備・船着場工事

4、産業の充実
本村の産業の主体は農業でありその生産基盤の整備・開発を促進し、農業の振興を確立することは行政のこれまた主体をなすものと考えるものであります。
本村では昭和50年8月に、農業振興地域整備計画が設定されていますので、同計画にそった事業の推進を積極に図ってまいりたいと思っております。
(1)新年度の農業振興事業の主なものは、津波古、仲伊保地域の一般土地改良事業、屋比久農道排水工事、県直営の浜崎川整備事業、新たに津波古農地保全事業が着手されます。
また、農業生産の90パーセント以上を占めるキビ作の振興につきましては、前年度に引き続き、航空防除、黒穂病対策、株出更新を奨励し、生産意欲の向上に努めます。さらに、そ野菜の生産の拡大と、共同出荷体制の確立を図るため、新年度から新たに本土出荷資材の補助を行います。
畜産については、昨年に引き続き、優良品種の導入と種畜の改良を奨励し、団地化への方向づけに取りくんでいきます。
(2)水産業につきましては、新規事業として無線機購入補助金を計上し、安心して操業できるよう、漁業の振興を図りたいと思います。また、漁民の永年の要求である漁港の新設についても、漁協とタイアップして、関係機関に対し強力な折衝を行い早期実現に努力します。
(3)商工業につきましては、本村の大部分をなす零細中小企業の育成を重点として、商工会その他関係機関との連携を強化し、生産基盤の整備、拡充に努めます。

その他
佐敷村の総合計画、基本構想(案)が、審議会での一年余の審議を終え、答申がなされたので、今議会に提案し、審議会を仰ぎたいと思います。村では、これから計画的に実施すべき課題が山積いたしておりますが、この基本構想(案)が可決決定されますと、今後は、基本構想に基づく基本計画によって、体系化され、計画的に実施できるものと思っております。
また絶版となっています村史の編纂も新年度から村史編集委員会を設置し着手いたします。
その他県直営事業としまして
〇津彼古地区の地籍確定事業(新規事業)
○富祖崎の護岸工事(継続事業)
〇馬天港の船着場工事(継続事業)
〇県道の改良事業(新規事業)
○津波古、小谷地区の農地保全事業(新規事業)
○浜崎川の改良工事(継続工事)の事業が執行されます。
なかでも、佐敷村で唯一の地籍未確定地域であります津波古地区の地籍確定作業は、個人財産に関する問題でありますので、地主の協力がなければ進められないかと思います。
また、本村において、この難事業が終らない限り、戦後処理は終らないと言っても過言ではないかと思います。
関係地主の積極的なご協力をお願が申し上げます。

おわりに
以上昭和52年度の施政に対する私の方針を申しあげましたが、これにつきましては、予算案や関連議案をとおしてさらに、具体的に御審議いただき、御同意下さるようお願い申しあげ、私の施政方針と致たします。

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000464-0001
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第47号(1977年7月)
ページ 1-2
年代区分 1970年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1977/07/01
公開日 2023/10/18