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第2回佐敷村文化まつり賑わう 香り高い民俗芸能 各字からえり抜きの熱演

佐敷村教育委員会と同文化財保護委員会による「第2回佐敷村文化まつり」が、11月23日午前10時から佐敷小学校体育館で開かれ、民俗芸能発表会、民俗・民具資料展に分けてかってない盛況であった。民俗芸能部門では、各字に残る伝統的な催しから、戦後に習い覚えた演技など、実に多彩なプログラムによって、会場いっぱいに詰めかけた2000人の観衆を魅了した。今回は、とくに津波古の「アマンチュー」新里の「長者の大主」佐敷の「綱引ガーエー」など、何十年ぶりに公開するものもあって、村内外の関心を集めた。また民俗・民具資料の部では普天間敏氏所蔵の、数十点にのぼる品々が、愛好者だけでなく一般の目をみはらせた。(写真は友利安徳氏)

この「文化まつり」は、私たちの祖先が大切に育ててきた文化遺産を滅亡に追い込まず、次代を担う子供たちに大事に受け継がれ、そこから創造への伸展を求めようという趣旨で催されたもの。各字に残る伝統芸能、民俗芸能を再現し継承することによって、かっては村里に香り高く咲きほこった歌や踊りが、つねに村民の心に結びつくことを期待しての行事である、主催者では「全村民がこの意義を正しく認識してもらうために、毎年の定例行事として発展させたい」語っている。
文化まつりは「民俗・民具資料の部」で李朝青磁、薩摩焼、壷屋焼の比較、明治のころの古我地焼、宮良焼、壷屋焼、それに「佐敷、知念関係のおもろ」(仲吉本)、古い民具などを解説づきで展示した。
民俗芸能発表会は午後1時から「舞方棒」「長者の大主」「獅子舞」「エイサー」「狂言ナカジャーヒー」「アマンチュー」「綱引ガーエー」など古くから村内各字に伝わる芸能を含めて20種目にわたるすばらしい演技をみせた。
とくに「アマンチュー」は農家に五穀の種子をさずける神の出現によって、豊穣を祈る村の信仰と、結びつくアマミキヨ伝説をもとにした独特の劇。字津波古では二週間前かち嶽々を回って「神の許し」のもとに出演した。その他、字佐敷の「綱引ガーエー」は、総員60人による古式そのままの踊りで、運動場いっぱいにくりひろげる50年振りの演技は場内の大観衆を魅了した。
また、本部流、小林寺流、剛柔流各派の空手出演で花を添えた。次はプログラムのあらまし(出演順)

古典音楽合唱(かぎやで風、恩納節、辺野喜節、揚作田節、東里節、赤田花風)
野村流松村統絃会佐敷支部(玉城源造師匠=古典音楽技能保持者)の出演で、さすがに宮城嗣周氏指導による声の調和、三味線の音色の美しさがすばらしかった。

舞方棒(字手登根)
手登根に伝わる独特の棒術で、65年前に玉城源者氏から宮里寛一氏に伝わり、現在仲村良明氏が受け継いでいる。

長者の大主(字新里)
村一番の長老で120歳を迎えた長者が、子や孫を引き連れて今年の豊年満作、健康を祈り、その前祝いとして子や孫の踊り狂言を神に奉納する。筑登之、親雲上の祝福を受けた長者は大満足で、子孫と芸に踊り出す。これは字新里では大正10年ごろ龕(ガン)の竣工祝いと昭和9年ごろに演じたが、今回は40年ぶりの出場となる。

新作舞踊、港くり節(字外間)
獅子舞 (字津波古)
豊年祭や厄払いの行事に演じられる。この芸能が、いつごろ伝来したか不明だが、ずいぶん昔から、その信仰とともに中国大陸から伝わったことが伺われる。向う突き出し、足打ち、大廻り、まり遊び、しらみがきなど変化に富む動作が面白い。

舞踊、なぎなた (字佐敷)
揚作田節に合わせて、勇壮な身振り、立居ふるまいによって踊る「なぎなた」は、古武術の手の使い方から舞踊化したものといえよう。玉城源造氏の指導。

あやぐ(字佐敷)
もともと宮古民謡。軽やかな中にも、どこかしっとりした曲調が多くの人に親しまれ、また、もっとも沖縄らしいメロディをもつ。
明治の末ごろ玉城盛重氏が振りつけたと伝えられる。

古武術、本部流(聖道館、尚道館)
本部御殿秘伝の武術で、舞いの手とあらゆる武器の組み合わせによって沖縄古来の舞踊の中に武術があることを示す。本部朝勇師から上原清吉師に伝わり、現在大謝名の聖道館を中心に各地に道場をもつ。

棒術(字伊原)
伊原の棒術は昭和初期に与那嶺美作(佐敷)屋比久孟徳(津波古)ブサー屋比久(首里)三氏から指導をうけて独自のものにまとめたもので、昭和初期の村運動会に出演した。東恩納孝真、金城幸徳氏等によって継承されたものを、今回は金城幸徳氏が指導に当った。「鎌の手」は知念村字久手堅から伝わったものである。

挽物口説(字富祖崎)
エイサー(字手登根)
エイサーは「遊び念仏」ともいい、原流はおもろの“エサオモロ”という。中部が盛んで南部で長い歴史を持つのは手登根だけ(三隅治雄氏)といわれ、他のエイサーが三味線により雑多の民謡までついているのに対し、これは鐘と太鼓、つづみの打楽器だけで唱和する古武豊かなものだったが現在は三味線も使うようになった。

ティンベーと鎌の手(字屋比久)
楯と刀の戦いがティンベーで草刈鎌と棒の戦いが鎌の手。沖縄の古武術をたくみにとり入れた屋比久独特の勇壮な民俗芸能、海洋博会場でも演じて好評であった。

空手・小林寺流(平良康高道場)
小林寺流の元祖喜屋武朝徳氏から首里手の達人武士松茂良こと松茂良宗根氏外数名の達人に直伝された8つの型をいささかも独自の工夫を加えることなく、これを忠実に守り、私達に継承された。この8つの型を他首里手(ショウリン流系)の型と区別するため敢えて小林寺流と命名された。

組棒(字津波古)
勇壮な棒踊りである。一人棒から五人棒まで、古武術を思わせる型で、昔は若者たちが好んでつかった。この組棒は本土でも演じて好評であった。

汗水節(字新里)
昭和初年、国が勤倹貯蓄を奨励するために募った歌で二等当選(一等は該当なし)したのが仲本稔氏(具志頭出身)のこの歌で作曲は宮良長包氏。字新里では昭和8年西村正五郎氏が振付け、運動会に字代表として参加したことがある。

狂 言
ナカジャーヒー(字仲伊保)
20数年前の、字仲伊保の村芝居で、山田保清氏が演じたことがあるが、以来今回まで出たことはなかった。その身振り、ユーモラスなセリフ、コスチュウムなど、沖縄の庶民性がにじみ出ていて、それなりの価値を秘めている。

踊り・だいさなじゃー(字富祖崎)
空手・剛柔流 (嶺井南康道場)
剛柔流は始祖宮城長順師がいわゆる那覇手の特色を明示する意味で拳法八向の「剛柔呑吐」からとったといわれる。型が美しくとくに「三戦」による体の線の引き締めにその特色をみることができる。

アマンチュー(字津波古)
津波古に古くから伝わり、村芝井等に活用され古劇である。

綱引ガーエー(字佐敷)
明治の中期から大正、昭和の初期にかけて佐敷村では村や字をあげての綱引が盛んであった。佐敷村は第一尚氏発祥の地であり、また第二尚氏になってからも王後の直領地として量視されていただけに、綱引のような大衆の踊りやエイサーのような民俗芸能の中にも、そうした匂いがにじみでている。
今回の字佐敷の綱引ガーエーは戦前からまだやったことがなかったのを屋比久保久、平良秀一氏ら多くの古老の指導によってここに往時のままの形で復元することができた。もちろん、これには前城区長や字民の絶大な協力と理解があったからで、出演も、それこそ字民総出といった感を抱くほどになっている。見事な旗頭二本も昔のまま造った。

村民の豊かな歴史づくり
佐敷村長 山城時正

皆さん今日は。本日、第2回佐敷村文化まつりが開催されるにあたり、村内或は村外から、かくも多数の方々が御列席下さいました事を厚く御礼申し上げます。
佐敷村では、昨年11月第1回文化まつりを開催し、各字の古くからの芸能や、児在行われている芸能などの演枝、それに工芸品や、各家庭に用いられていた生活の立派な歴史である民芸品などの展示がありました。
今回も第1回に加えて、字各から前回にもまさる芸能や、展示物が出品されています。
これまでもって来られたのもひとえに、村民各位、各字の区長さんを中心とした、志のある方々の御努力のたまものだと、深く感謝しています。それに文化財保護委員会の皆さん、教育委員会、及びその職員の方々の御努力も大きいものがあります。「文化」といいますと、歌やおどりや、美術品だけと考えられますが、大工さんの造った家や、石垣、橋や、子供達のむかしからのあそび等もあると思います。
そういうことから、私たちは、教育の場や、農業、漁業、工業やその他の作業にも大きな意味で文化と言えると思います。今後文化財保護委員会におかれましては、これからの教育、農業、漁業、工業などの作業によって出来た作品、或は生産品をも含めて、もっとワクを広げた、例へば、総合文化まつりとでも言いましようか、そういう方向への歩みも、前向きに考えられて、今の文化まつりに加えて、村の一連の歴史づくりの一環として一歩一歩すすめてもらいたいと思います。大きな意味の生活文化が、子供達も青年もお年寄りも、男も女も、より多くの村民が参加出来る「ふんいき」づくりを今後の果題とされることも大きな意義があると思います。
本日の文化まつりが、その意味においても大きな成果をもつであろうことを機待します。
最後に本日の文化まつりに出場される各字におかれましては日夜一生懸命今日のために御努力されたことに深く感謝申し上げ、本日の文化まつりが、立派な成積で終始されることを希望して御挨拶といたします。

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000456-0016
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第39号(1975年12月)
ページ 4
年代区分 1970年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1975/12/05
公開日 2023/10/18