「都市に近く、自然に恵まれた佐敷村に国立老人保養施設を誘致しよう」-と去る7月12日午後5時から誘致期成会(会長、山城時正村長)主催の「国立老人保養施設誘致村民大会」が新里公民館広場で行なわれた。村民大会には南部選出の四県会議員、南部地区の町村長、議長をはじめ約千人余が参加。村をはじめ各界代表が次々意見発表を行った。その中で各代表は「環境のいい同村にぜひ老人保養施設を誘致、老人福祉、青少年の健全育成、明るい平和な村づくり、村発展のためにも村民ぐるみで誘致運動を展開しよう」と強調。拍手のうちにスローガン、宣言、決議文を採択した。村では村民大会の大きな盛り上りをバックに期成会代表約50人が県知事を初め関係機関に決議書、宣言、地主の同意書を提出、佐敷村への誘致を強く要請した。県では近く誘致先を決定することになっているが佐敷村の他に読谷村が名乗りを上げたことから事態は流動的であり県の“載定”が注目されている。
風光明媚で最適 期成会が村民大会開く
会場には「風光明媚な佐敷村に国立老人ホームを誘致しよう」「長寿村佐敷へ老人ホームを…」などのプラカードが林立。村民の老人ホーム誘致への意気込みが満ちあふれていた。まず大会は瀬底正麗副会長(村議会議長)の開会宣言のあと、主催者を代表して山城時正会長(村長)があいさつ。
その中で「村は老人保養施設建設の話を知りいち早く名乗りを上げた。佐敷村は厚生省の基準である
①都市に近く、交通の便がよく施設の利用度が高い
②土地の公有化のメドがつくこと
③用地週辺の乱開発のおそれがないこと-
の三つの条件はすべて満たしており、むしろこれよりよい条件下にある。
特に関係地主の積極的なバックアップは心強いものである。また村には公共施設は一つもなく、明るい平和な村づくりにもつながる老人保養施設を誘致して、村の振興を図ろう」と気勢を上げた。
つづいて経過報告・意見発表が行なわれ、老人クラブ、青年会、婦人会、部落代表、地主代表、村議会代表がそれぞれ立ち「絶好の景勝地に老人保養施設を誘致、年寄りがいつまでも幸福に、さらには青少年の健全育成にも役立つ同施設の誘致をぜひ成功させよう」と述べた。さらに同大会に出席した南部選出の四県議に「超党派で誘致に当ってほしい」と要請した。
このあと、自然環況にめぐまれた風光明美な佐敷村に国立老人保養施設を誘致しよう-と書いたスローガンなど四項目と国立老人保養施設の誘致に関する要請決議、宣言案を全会一致で採択。四県議、南部市町村長会、同振興会。同議会議長会、隣町村長代表が激励した。
佐敷村が誘致を予定している場所は字新里の高台で旧民生府、通信隊跡一帯の通称「夜明が丘」。同地域は約十万坪もあり、雑木林におおわれ、付近には大里按司の墓、佐敷ゆうどれ、文化的価値の高い古墳も多い。眼下には中城湾、馬天港が一望にできる風光明媚なところ。那覇市にも近く老人のいこいの場として最適である。
同施設は単なる老人ホームではなく、家族が来所しても一諸に楽しめるように、宿泊所、休けい所、プール、体育館、公園などが建設される総合福祉施設で親子三代のコミユニケーションの場をねらっているのが特徴だという。
国立老人保養施設の誘致に関する要請決議
われわれ佐敷村民は、本日ここに村民大会を開き、村民の情熱と総意を結集して、本村に国立老人保養施設(総合老人ホーム)を誘致する。本村が当該施設の候補地として推挙する十万余坪の「夜明が丘」台上は、厚生省が示している立地条件を遥かに越え、次の通り県下に類のない最適の場所である。
① 当該候補地は、県庁所在地である人口三十万の那覇市より僅か12キロの地点にあり交通の便がよい。先島および 本土からの当該施設利用者にとっても空港より近く便利である。
② 本村は、沖縄県の全人口のおよそ三分の二が密集する島尻及び中頭南部地域のほぼ中央に位置するので、当該保養施設の利用度が高い。
③ 夜明けが丘は、眼下西側に 馬天港、中城湾を遠望する風光朋媚な景勝の地であり、森林、岩石、起伏等自然環境に恵まれている。
④ 隣接の部落は、沖縄一長寿の村で人ロ一千人に対し80才以上の高令者が27人健在である。当地は空気がよく老人の保養に最適の地である。
⑤ 海水浴場として有名な百名ビーチは、車で5分以内の距離にあり、オニヒトデに侵食されていないきれいな珊瑚が見れる沖縄唯一の海である。
⑥ 当地は、第二次大戦後沖縄民政府が位置し行政の中心地であった。沖縄戦後史上記念すべき由緒ある場所である。
⑦ 近くには、大里按司の墓等文化的価値の高い古墳のほか、天続城ろう、稲福古代住居跡、石垣、石畳道等が数多くある。この地域は、野鳥の 生息地で、果樹、植物園にも適し、ここだけに生息するいもりや天然椿の郡生等もある。
⑧ 当該地域は、昨年3月の返還まで米軍通信隊が使用していたので水道管も敷設されており、電気も容易である。
⑨ 公共施設の地方への配置がさけばれている今日、本村にも、また隣町村にも公共施設がない。
本村議会は、当該保養施設の誘致を3月定例会において全会一致で決議し、さらに特別委員会を設置して、千葉県厚生年金休暇センターの視察調査を終え「このような素晴らしい施設は、積極的に誘致すべし」という調査報告を出している。また、百人余の地主も地主会を開き、承諾書に押印し、全面的協力を約束している。さらに、この誘致に一番関心の強い村老人クラブは、総会において満場一致で誘致決議をしている。
南部においては、南部地区市町村会、南部地区市町村議会議長会、南部振興会並びに島尻郡老人クラブ連合会がそれぞれ誘致決議を行い、関係機関に要請している。
ここに、われわれ佐敷村民は、一致団結して、本大会の名において、国立老人保養施設を佐敷村に建設するよう強く要請する。
昭和50年7月12日
佐敷村国立老人保養施設誘致村民大会
宣言
老人福祉の充実がさけばれている今日、政府が沖縄県に国立老人保養施設を建設することは大へん意義深いことである。
本村は、立地条件に恵まれながら公共施設が皆無であり、この施設を誘致することにより、村の発展はもとより、南部地区ひいては、沖縄県の福利増進につながるものである。
ゆえに、われわれは、今日までひたすらに当該施設の村内誘致のため精力的努力を続けてきた。
しかしながら、最終的に決定がなされるまでは、まだ厳しいものがあることを痛感する。
われわれは、ここに決意を新たにし総力を結集して、初期の目的達成に邁進することを誓う以上宣言する。
昭和50年7月12日
佐敷村老人保養施設 誘致村民大会