なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

農畜産物の所得補償を 農業の課題と問題点 小波津厚一

昭和50年期さとうきび価格1トン当り1万8千円要求貫徹のため第二次陳情団が昭和49年10月28日沖縄から1000人鹿児島から700人を動員して東京で農民大会を開催し主務省に対して強力に要請した。佐敷村からも村長を先頭に22名参加した。
続いて第三次陳情団として沖縄から27名、鹿児島から20名最後の結めとして東京で一堂に会し各大臣、県出身国会議員及びイモ、澱粉、さとう類審議会等に対して、陳情の限度に達したと思われるぐらい運動を展開しましたが1万8千円の壁は厚く遂に農林省はブリックス19度以上奨励金を含めて1万5千円、19度以下を1万3820円として告示されたことは周知のとおりでございます。しかし、きび作農家及び生産者代表はこの告示を不満として生産者代表八団体が農協会館に集り、一律トン当り1万5千円でなければ農家は成り立たないとの結論に達し、工場経営を背景とする日本分密糖工業会長仲田睦男氏との交渉役をきび作農家を背景とする沖縄県農協中央会長山城栄徳氏に一任し両者とも責任というきびしい中を数度に渡る会議で一律1万5千円に決まったのであります。1万5千円を決定するまで両者の心境は私たちが想像するに余りあるものがあります。今期のきび代につきましては満足出来ない価格でしょうが以上申し上げましたとおりきびしさの中から決定された価格ですのできび作農家の皆様も御理解下さいますようお願いします。
ところで今期さとうきびの搬入も去る1月17日から開始されましたが、今期のきびは気象条件が悪かったのと施肥料が少いこと、古株が多いなど悪条件が重なり大幅な減量が見込まれています。
農協は本村唯一の資源さとうきび増産のため新しいトラクターを2月末から一台運耕しますので、古株の更新に役立てて下さい。
農協では今年からきび代の一斉貯金振替を実施することになりました。その理由として毎年事件が多くなり物騒な世の中となった今原料員による現金の持ち運びは極めて危険な状態にあり、いつ災難が振りかかるかも知れないことと危険の細分化という面から農家の良識と御協力をお願いする次第です。外の農協ではすでに実施済です。
本村は少数ながらも小豚の生産地であることから農協を通して小豚の出荷態勢をとり肉豚地域に小豚を出荷しています。昨年10月から去る1月25日までに444頭を良い値段で買いとり出荷しています。母豚は余り輸入飼料を必要としませんし、良い母豚をもっと増して小豚の増産を図って下さい。
又肉牛につきましては全国的に輸入食肉と加工品におされ黒いダイヤモンドと言われた牛も価格の面で暴落の一途をたどりついに畜産の危機となりましたが農林省筋では今後に向けて畜産の保護策を立てていますし、又沖縄では復帰特別処置である輸入食肉や加工品の関税5%から本土並みの25%に引き上げられますと牛の価格も持ちなおすと思います。現に牛の相場が上りつつあります、ところが一部消費者団体からは肉類を外国から輸入して安く販売してほしいということもあると聞きますが若し日本の畜産が外国ものにおされてしまって生産が消費の50%以下に落ちてしまったら石油と同じように輸出国の一方的言いなり価格となり、結局は高い肉を買わされることにもなりかねないし、よほど注意しなければならないと思います。
この度沖縄県農林水産部流通対第室におきましては生鮮食糧品のうち野菜を重点に流通対策をうち出し近いうち野菜価格安定基金が発足することになりました。本農協としては村及び農家とよく話し合って作付、集荷、販売の面において遺感のないよう努力します。
今のところ指定品目は大根、きうり、白菜、トマト、玉ねぎ、キャベツ、トウガ、人参などで取扱い事項につきましてはおってお知らせします。その他本村におきましては土地が狭いため余り資源にも恵まれない上にインフレが続く中を海洋博関連工事も終うとするこれからの失業、就職難というきびしさを如何なる選択をなすべきかその決定を迫られる時期が来たと思われます。一方全世界人類の上に食糧危機が重くのしかかって来そうな状況にあり食糧自給率42%しかない極めて不安な現実から日本政府としても今日までの工業を重点とする行政から農業重視への行政に変りつつある中で本村としても食糧自給率を高め農家所得を増強するために強調したいことはもっと農村の収入が高く明るく住みよい所にしなければならない。
すなわち砂糖きびを始め農畜産物の価格が安定し充分な所得を補償しうるものでなければなりません。本土の方では農地の基盤整備が70%に進んでいるが沖縄では現在7%しか進んでいませんので出来るだけ早く本村も農地の基盤を整備して若い方々でも喜んで農業に従事していただきたいものです。
昭和50年は今後沖縄の運命をうらなう年とされますが、いかなることも信念と努力でもって対処し遇進しなければなりません。
私たちも皆様方の御協力と御援助のもとに頑張ります、村民の皆様も時節柄ご健康に気をつけられまして今年もご繁昌でよい年にして下さいますよう心から念願します。
(佐敷村農協長)

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000453-0005
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第36号(1975年2月)
ページ 3
年代区分 1970年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1975/02/25
公開日 2023/10/18