特殊教育において、いま大きく変わろうとしていることといえはこれまで心身障害者に対し、就学の猶予、免除がなされていたのが昭和54年以降それができなくなるということと、もう1つには普通の子供たちにはすでになされている就学前教育、即ち、幼稚園や保育園での教育がそれに当りますが、それが心身障害児にもなされつつあるというつとです。後者の方は、未だ、法制化されるには至っておりませんが、国に先がけて、地方公共団体でなされているところがあり、又、国としても、テストケースとして実施し、結果がよければ、実施していく意向を示している。
まずはじめに、これら2つの事についてみる前に、県内における現状を数字的にみてみることにしましょう。
別表1、2を合わせみますと、義務教育段階(幼稚部と高等部がこれより除外される)における障害児童、生徒の不就学者数がわかります。これが即ち、就学猶予、免除者にあたるわけですが、精神薄弱児は約半数、病虚弱児、言語障害児および情緒障害児などは、そのほとんどが就学していない現状です。それは、法的にも、就学猶予、免除が許可されていた結果でありますが、今度の法改正によって、昭和54年以それができなくなるのです。
では、次に、この就学猶予、免除について、その内容を法的にみでみますと。
教育基本法第三条において、教育の機会均等を定め、『すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないもの……』とうたいながら、学校教育法において、第二十二条にその就学を義務づけるかたわら、同法第二十三条において、病弱等に因る就学義務の猶予、免除を許している。この就学猶予、免除とは、保護者は満6歳から15歳までの子どもを小学校・中学校・または盲学校・ろう学校・養護学校に就学させる義務を負っているが、しかし、その子どもが病弱・発育不全その他やむを得ない理由のため、その義務の一定期間(または全期間)、とりさげられるというのが、この猶予・免除の規定なのです。この規定では、視覚・聴覚などのはたらきに障害があって、その治療に長い期間が必要で、治療に専念することが必要な子ども、白痴、重症の悩性まひ、精神疾患、悩疾患などのため特殊学校での教育にたえることができない子どもは、就学猶予(就学年令をのばすとか、一定期間休学させる)または、その程度がさらに重い場合は、就学免除(学令全期間の就学の中止)が考えられることになっている。しかし、前にも述べましたように学令期にある子どもは学校で学習する権利をもっているのであるから、この就学免除の規定が、これまで問題になっていた。それが、このほどようやく撤廃されるはこびとなったのです。精神薄弱、肢体不自由あるいは、病虚弱などにより通学できない児童・生徒の教育を昭和54年度から義務教育とする政令が決定され、義務教育を定めている学校教育法の中で、施行期日の規定がなく就学が事実上免除されていた養護学校の就学と、国・地方公共団体の養護学校設置義務についての施行期日を54年4月1日と定めた。これにより昭和22年、すべての子どもの小・中学校の義務教育がうたわれながら、放置されがちだった心身障害児などの子どもの教育も義務制となり、名実共に、教育基本法の精神が生かされることになるのである。
県でも、54年に向けて色々と準備がなされつつあるということで、去る5月28日にその一弾として、訪問教師制度の実施にふみきっております。これは、病院、施設、家庭にいる障害児を対象に担当の教師が週一回訪問して教育を行なう制度であります。手はじめに、赤十字病院、沖縄療育園、中部病院などにいる障害児を対象に各々1人の教師が訪問指導を行なうことになっております。
それと同時に、養護学校の設置も計画されているとのことです。
次に、就学前教育についてですが、心身に障害のある子にとって早期発見、早期治療が大切だということは、強く叫ばれていながら実際上それがなされてなかった。
『厚生省は49年度から心身障害の幼児を一般保育所で保育する事業をパイロット的に実施するとりあえず、全国で20カ所の保育所を選し、結果がよければ50年度から積極的に推進していく方針だ。
現在、3歳から5歳までの肢体不自由児、精薄児は全国で約2万5千人いると推定されている。これらの幼児は、手間がかかるため一般の保育所から全く見離されている現状だが、とくに親が働いている家庭などでは一般の保育所へ入れたい、と希望する親たちが年々増えている。
また、昨年10月には、児童社会福祉審議会から「一般の幼児と一緒に集団保育し健全な成長を図るべきだ」との答申も行なわれた。
この為同省は、49年度から軽度の障害児に限って試験的に入所させることにしたもの。
同省の計画によると、実施主体は市町村で、入所人員は1カ所8人、予算は全国20カ所で1千万円(2分の1補助)。障害児の保育に当たる職員は原則として障害児4人に専任保母1人を置く。
保育所には障害児が使用できる便所などの設備を設けるほか、保育する障害児の特性に応じ必要な遊具、訓練器具などを設ける。保育方法は一般児と同様に保育するが、必要があれば障害児だけの集団保育をすることにしている。 (昭和49年3月18日・神戸新聞より)』
県においては、まだその件に関し具体的な方策はうちだされてないようですが、巷の話によりますと、障害児をもつ母親などが、その門戸開放を訴えて運動をおこしつつあるということです。