佐敷村は東西に約5キロ、南北に約2キロメートルで、総面積は10.28キロヘイホウメートル人口8200人余をなし、一部都市形態をおびた農村である。
地形は平環状になっていて、北方の馬天港を中心に、周囲は肥沃な平野が連なり、東側は宿納森を背景にして高台が尾をひき、さらに玉城、大里村の台地につづいてさながら屏風を張りめぐらしたような村里である。
人間尊重を基本に 山城村長が施政方針 福祉村政の確立を
山城村長は3月定例議会の開会にあたり、昭和49年度の施政方針を明らかにし、その中で、とくに、「村民の心を心とする」政治理念に基づき、①人間尊重を基本とした平和な福祉村政の確立をはかる。②豊かな自然との調和のとれた美しい村づくりのため乱開発を防止し長期的展望に立った村開発基本構想を策定し計画的な村づくりの第一歩とする--などの基本姿勢を示し、重点施策として住民福祉の充実-社会福祉の拡充、生産基盤の整備、清掃、水道事業の整備、教育の振興-など7項目をあげ、村政が地域住民の諸要求に的確に対処し、地方自治が真に住民福祉の向上発展になるよう村政確立に最大の努力をはらっていくことを強調しています。以下、山城村長の昭和49年度施政方針概要
3月定例村議会の開会にあたり就任以来6ケ月になりますが、微力な私に寄せられました議員各位並びに村民の御指導御鞭撻に対し心から敬意を表し厚くお礼を申し上げます。
私は就任以来、村民の幸福と豊かさを願い、人間尊重を基本とした平和な福祉村政の確立を基本として来ました。そのためにも私は村民の福祉向上と生活環境を整備し住み良い村づくりに一段と努力しなければならないことを痛切に感じるのであります。然し、私が就任以来、議員各位も御承知の通り我が国の高度経済成長政策と、国際経済、特に国際的エネルギー危機の影響で異状な物価高騰、品不足等で村民の生活は日々苦しくなる状態であり、この事は財政規模の小さい自己財源の少ない本村のあらゆる事業の執行に大きな打撃と余波をまともに受けているのであります。その1つに昨年11月に契約しました手登根区以東と小谷区の水道工事は落札者がなく最低入札者と何回も交渉し、約25%(パーセント)金額にして約964万円の超過負担をよぎなくされ隋意契約し、現在3区に分けて工事を執行していますが資材不足はまだまだ深刻であります。又、現在工事中の手登根排水路工事もセメント不足の影響により、予定工期に間に合わず、急拠2業者の応援を説得し、3業者で工期に間に合わすよう関係職員を動員して促進している現状であります。このような建設資材をはじめとする物資の不足、諸物価の高騰により、復帰後3ケ年これから復帰暫定措置法を有効に活用し、本土並の住民福祉の増進、公共施設等の充実を計ろうとした矢先の総需要抑制でありますので、昭和49年度の予算編成にも多大な影響を与えています。
さて、次に昭和49年度の村政の基本執行の棊本方針並びに重要施策について説明したいと思いいます。
先き程も申し上げた通り国の総需要抑制と物価高騰という近代にない厳しい情勢は直接間接村民の生活と49年度予算に多大の響を与えています。このような厳しい情勢に対処するため、本村に於いて住みよい豊かな村づくりをするため地方自治法でも述べています通り最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないという事であります。そのためにも執行体制を強化し、村民の福祉と生活水準の向上のために、村民の意思が充分に村政に反映出来るよう職員の資質の向上、並びに村民に対するサービスの向上と責任体制の確立に努力したいと思っています。財政的には長期財政計画の樹立が急務であります。特に財政基盤の弱い本村においてはその必要性が高くそのために職員を配置し財政面の研究策を強力に推進したいと思います。
5つの『施策の柱』設定 環境 福祉 教育 産業 開発計画 急激な経済的変革に対処
生活環況の整備充実 水道事業 全村給水へ
生活環況の基盤整備
住民の生活水準の向上と環況衛生の向上をはかる生活環況整備事業として、生活排水の整備、上水道の完備、じん芥、し尿処理の問題、河川の整備事業など積極的に推進いたします。まず、住宅地域内の生活排水の整備は、佐敷村民が文化的生活を営むうえで最も重要な事業であります。そのためには、地域住民および区長と連絡を密にして、生活排水の整備をしていきます。
水道事業について
昨年の12月末日より、兼久、佐敷区が新に給水されました。残る手登根以東および小谷については、現在工事中でありますが先ほども申し上げましたとおり、資材の不足等で6月30日までには完成するものと思います。
給水につきましては、現在、県企業局直営事業として、佐敷区と手登根区の中間より、知念村までの配管工事が行なわれており、9月頃までには終了する予定になっていますので、10月頃から全村給水が出来るよう最善の努力をいたします。
ゴミ処理の問題
現在ほとんどの自治体が直面している大きな悩みは、“ゴミとし尿の処理”だと思われます。私も就任以来、ゴミ処理問題についてはいろいろと検討してまいりましたが、ゴミ処理場の問題1つをとりあげてみましても、建設単価の高騰により多額の建設貿と、運営費を要しますので人口の少ない村におては、住民の負担が莫大になり、また財政の運用面でも大きな負担となります。しかしながら、生産と消費の拡大、および生活の多様化などで家庭や商店、工場からの廃棄物の量は日々に増大し、排水や海岸などにチリが投棄され生活環を破壊しつつあります。
そのようなことを早急に解決するためには、与那原、西原一部組合に加入することであります。
与那原町においては、去る11日町長の施政方針の中で、明確に佐敷村を一部組合に加入させたいとの意思表示がなされています。
また、西原村においても、本日議会が開会されますので、今議会に対し手続きがなされるものと思います。この問題は両町村の議決にかかっていますので、議員各位の御協力を切にお願い申しあげます。
そのほかの生活環況整備事業としては、村内美化の推進、河川、道路の改修工事を計画していますとりわけ、多年村民が改修工事を望んでいました浜崎川の改修工事が新年度より、県直営事業として着工するはこびとなっています。
県は約4ケ年で経工費3億円の巨費を投じて、河口より伊原区間の約1500Mの片方に道路を取りつける計画になっています。これが完成すれば地域住民の利便は勿論周辺の農業振興に大きな効果をもたらすものと思っています。
福祉行政の推進 第二保育所の建設
社会福祉の充実
(1) 今日の本村の基礎をきずかれた大先輩であられるお年寄の方々が、安心して生活できるよう、特に寝きたり老人や、ひとり暮しの老人の方々に対する対策、身体障害者や母子世帯の方々に対して村社協並びに民政委員の方々と強力に連携し、希望のもてる日々であるような施策を講じていきたい。
(2) 働く婦女子が安心して職務に専念できるよう、また、保育に欠ける乳幼児の保護育成を計るため、4月1日より新開地に保育所を開園し、60名の生後3ケ月以上、4歳までの子供達を入園させる予定で準備を進めています。
また、本年度の事業計画として村内康側に第二保育所を建設し年々増加する幼児の完全保育をめざしたいと思います。
そのほか児童手当を大幅に増額するとともに、村民の健康と生らしさをまもる。保健衛生、消防急救業務の強化に努めます。
豊かな村づくり 基本構想の策定
地域の開発について
佐敷村の恵まれた立地条件を効果的に活用し、長期的展望に立っての乱開発を防止し、住みよい豊かな自然との調和のとれた、美しい村づくりのため、本年度は、佐敷村開発基本構想を策定し、計画的な村づくりの第一歩にしたいと思います。
基本構想は、佐敷村総合開発計画の一環として策定されるものであり、佐敷村の現状を点検し、ふまえつつ、村の将来像を描きあげるものです。それは、わたちしたの確かな想像力と大きな志によって獲得する”夢”であり、村づくりはこの”夢”の現実化ともいえると思います。
構想は、美しい自然との調和と心豊かな、もっとも快適な人間環況づくりを根底に、生活文化や、文化集積、社会資本蓄積度、さらに生活環況の豊かさ貧しさまで含めて発展させる必要があり、それを背景に、第一次産業基盤の確立と新しい農業型態への脱皮、地場産業の育成、港湾の開発と整備、埋立の第二次、第三次計画と広域都市区域指定による土地利用計画などのマスタープランの作成であり、この構想に基づいて具体的な計画案が進められることになります。同時にそれは、現在の経済不安定の後に来る、地道な佐敷村建設の時であり替在的資源の開花する時でなくてはならないと思います。
さいわいに佐敷村は、社会、経済、空間計画を一体として考えるのにほどよい大きさです。ひろがりや地形もまとまっています。自然の恵みと歴史、文化が生活のなかで親しまれてきました。これらすぐれた条件を活かして、個性のある村づくりをすすめていきたいと思います。
また、実際の計画立案にさいしましても、広く村民の意見を聴取村民各層の積極的な参加のもとに進めていく考えであります。
心豊かな次代を 教育施設を充実
教育と文化
将来の佐敷村を担って立つ子供達を育成する学校教育、社会教育においては、早急に解決すべき諸問題が山積されている中で、教育基本施設の整備拡充、教育環況の整備充実を図ることは大きな課題とあると考え、本年度はまず昭和46年度廃棄校舎に指定されました小学校の特別教室、給食受入室の新築をはじめ、小中校、幼稚園の施設整備、教育教材の整備充実を積極的に推進します。
また学校運営の強化をはかるため小学校に図書館事務係、中学校に事務主事補、幼稚園には教諭1人を新たに配置するほか、教育情報の提供をはじめ教育現場との討議を重ねていきたいと思います。
社会教育については、これまでどうり青年学級、母親学級、老人学級などの各種学級を充実強化し急激に変化し多様化していく今日の社会に十分対応できるよう、村民の自主的学習の推進をはかります。
また佐敷村の誇る貴重な文化財の保護育成については、これを後世の村民に正しく継承し、文化財に対する村民の理解と認識を深めるため文化財保護委員と相提掲し努力したいと思います。
産業の基盤整備 漁港整備強力に推進
産業の振興
昨年は沖縄県よりキビ代値上陳情団1000名が上京し、トンあたり1万3000円を要求しましたが、政府の裁定は厳しく、奨励費を含めて、トンあたり1万円であり昨今の物価高騰と労賃の異状なまでの上昇に対して省力化を推進し、生産性の向上、ならびに多年次株出の更新奨励、生産蜜所得補償方式による価格の設定の推進を各関係機関に対し強力に要請していきます。
野菜については、今後の需要の増加が見こまれますので、都市近効地域としての立地条件を活用した野菜専業農家の育成につとめます。
畜産については、優良品種を導入し、経営規模を拡大し、経営技術の改善を図り、増大する需要に備えたいと考えます。
水産については、48年度の漁港整備計画が総需要抑制によって、49年度に施行することになりましたので、県の当初計画どおり、49年度において、48年、49年度の事業計画が施行されるよう強力に推進したいと思います。
また、第一次産業の基盤整備を図るため、佐敷農道新設工事、津波古、小谷間の農道改良工事を予定し、そのほか既設の農道、排水などの推持補修のための事業を計画しています。
さらに本年度は農業振興計画の策定に着手し、農地効用の線引、施設の整備計画など、農業の振興を積極的に推進いたします。
以上、昭和49年度予算を提案するにあたって、村政に対する私の考え方を申し述べましたが、これを推進するための本年度予算と、昭和48年度一般会計補正予算二件、条例案件十三件を提案してあります。
議員各位の御理解と御協力を賜り、慎重な御審議のうえ議決下さいますようお願い申し上げます。
昭和49年3月