12月6日、午後2時より婦人会主催による講演会が、村役所会議室において開催された。
講師は、政府厚生局衛生課勤務の薬剤師、比嘉真三氏であった。
私も「食品公害」という演題に興味をもって出席した。
会場には、やはり生活と直結する問題とあって、関心も高く、時間前から大勢の聴取者がつめかけていた。講演は、30分遅れて始められたが、会場は超満員の盛況ぶり、後方までは先生の声が聞き取れないらしく「聞えません」の声が続発し、講師の先生も「私は生れつき声量が弱く、これでも精一杯の声をふりしぼっているのですがね」と恐縮される始末…
残念なことに、演壇には、マイクの取り付けがなされてなかったのである。 講演は、現物を回覧しながら2時間半も続き、出席者からは熱心に次々と質問が続出して、5時までの時間が有意義かつ有効に消化され、講演が終った後も、なお熱心に質問する出席者に、先生も感心されたらしく、「ご熱心ですね」と傍にいた私に話しかけられた。
その日講演をお聴きになった方なら、きっと参加してよかった、と思ったことでしょう。
そして、早速自分のこれまでのやり方や、考え方を変えた方も少なくないと思います。私もその一人である。
私は、こんな良いお話しを、わたしたち出席者だけが知っているだけでは、なんだかもったいないような気がして、講演を聴く機会の得られなかった、おおくの方々にも聴いていただきたいと思う一念で、敢えて拙文を提示しようとするものである。
最近、新聞、ラジオ、テレピ等のマスコミを通して、食品公害に対する色々な問題が取り沙汰されている。中でも「チクロ」問題は大きくクローズアップされている。チクロは、人工甘昧料で、正しい呼び名を(サイクラミン酸ナトリウム)といい、アメリカのFDA(食品薬品庁)の発表するところによると「チクロを食していたネズミに発ガンが見られた」からだという。
そこで、まずアメリカで大幅に使用制限したことが、新聞に大きく報じられ、アメリカの処置が世界に波紋をまきおこし、直ちに全面禁止されたところや、制限されたところなどかあって、日本でも、確証が得られないまゝに世論におされて、禁止されたという。
ところが、このような恐しいチクロも、糖尿病には実によく効くとあって、糖尿病治療薬に限って使用が許されているとのことである。チクロは、いまやサッカリン、ズルチンに替って、人工甘味料の主流と云われ、缶詰や、ジュース、清涼飲料などに砂糖のかわりに使われているという。
チクロは、摂取量によっては骨髄を侵し、血液の再生ができなくなるので、しまいには貧血になるといわれ、また、それらの毒性は体せいをつくり遺伝するといわれる点、やはり恐れなければならない、と、講師も強調されていた。
私達が、普段気付かずに用いて来た食品が、研究の結果、発ガンや、遺伝という恐しい体せいを造るとあっては、なんといっても重大な問題です。
私達は、食品に対する正しい知識と関心をもって、対処しなければならないことは、私が申しあげることもありませんが、チクロの外にも、私たちの食生活をおびやかしている食品が色々あるといわれます。
講演の中から、特に私たちが毎日のように食している食品を二、三あげてみますと、豆腐は腐れやすいから「豆腐」と名付けられたことをお聞きになったことはありませんか。
しかし、いまの豆腐は夕方までそのまゝにしておいても腐らないのはなぜか考えたことがありますか。十数年前までは、豆腐は自家生産の大豆で、各自が、各家庭で造り、あの香りのいいおいしい豆腐をいただいたことをいまも忘れません。
それが、いつの間にか豆腐はどこの家でも買って喰べるようになり、豆腐の製造元は、豆腐の好きな住民の需要を満すのにいくら造っても足りない訳で、豆腐を早く固め同時に腐敗を防ぐため、「ニトロフラン」とかいう薬品を使っているところがおおく、このニトロフランも取り過ぎると危険だとのこと、ところが悪質な業者がいて、規定量を超えて使用しているところがおおいといわれ、政府も取り締りに手をやいているとのことであるので、あるいは、私たちの食卓にも、このような粗悪品が載せられているのかも知れません。
お互いに、気をつけたいもの。
次に、お正月などによく使われる「ウバ」ですが、ウバは普通、黄色い色をしているので、その黄色を脱色して薄くするため、30パーセント程度の漂白剤を使用することが許可されているようです。
30パーセントの規定量で漂白すると、だいたい黄色が薄く残る程度といわれます。お買いになる時、薄黄色であればまあまあ安心という訳です。
ところが、ウバはまっ白でないと売れないので、商人の方では、消費者に喜んで買ってもらうため、普通30パーセントを、70パーセントも漂白剤を使って、しかも3日も4日も漂白して売っているようです。
また、ビニール袋に入れて売り出している「キンピラゴポウ」もまっ白できれいですが、ゴボウは黒いのが普通です、まっ白いもの程毒性が強いといわれますから、注意しましょう。 ここで、お気付きいただけたかと思いますが、私たち消費者が、いかに「色」をこのむかということです。
私たちは、努めて自然のまゝで、なんでも取り入れる工夫をまずしなければならないと思います。
長くなりましたが、ついですのでもう1つ、お宅では、食器洗いに何にを使っていらっしゃるでしょうか?ワンダフルKとかママレモンのような洗剤を使っているところはいいとして、粉石けんを使っていらっしゃるところがありましたら、ご家族の健康のためすぐ切り換えて下さい。
粉石けんには、漂白するための色々な薬剤が入っているといわれます。
ご自分の家で、使っている粉石けんをよくご覧になればわかると思いますが、螢光剤入とか、色々書かれていると思います。螢光剤とは螢光染剤のことで、まっ白に染る薬が入っていますということの表示だとのことです。螢光剤は、五度、六度水をかえて洗っても、完全に落すことができないもので、毎日少量づつとはいえ、体内に蓄積されると健全な細胞が破壊されるといわれます。
このように、1つ1つ取り上げていくと、私たちの回りには「危険な食品」ばかりでなにを食べたらよいんだと嘆きたくなりますね! でも、私達は嘆いてただ手をこまねいて見過ごすだけでよいでしょうか。
良い製品を造らせるのも、悪るい製品を造らせるのも消費者自身だと思いませんか。
私たちが食している製品について、これからはもっともっと関心を持ち、もし、製造元が近くにあれば、工場を見学するのも製品を正しく認識する上において、もっとも重要だと思うし、生産者側へのブレーキにもなると思います。
とにかく、私たちは、自分の生命を守るため、また遺伝という恐しい宿命を負った不幸な子を生まないためにも私達の囲りから、このような粗悪品を追放しなければなげません。
そのためには、みんなの結束が必要です。
今後は公害を生むような製品は絶対に買わないように努めましょう。
売れない品物を生産する、業者はいないことを信じて下さい。
それから村内の商店主の方々へ、一言お願い申しあげたいことは、村内には、それ程見かけないので安心はしているのですが、でも時々そのようなものを店先で見かけることがあります。
品物を仕入れる時は、信用のおける業者から仕入れていただき、利用者が安心して利用できるよう「良心的販売」をもっとうにやっていただくことを希望申しあげ、ご協力をお願い申しあげます。
村民が一対となり、共に手を取り合うことこそ「真の福祉の婆」だと思います。