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「施政方針」明朗で住みよい村の建設に努力 

ここに第128回佐敷村定例会が日程を順調に進められていることに対し、心から感謝申し上げます。
1970年度予算の審議をお願いするに当りまして、先ず1969年度のあらましを申し上げ、現状の基礎に立って新年度における施政の概要を申し述べ議会のご指導をいただき度いと存じます。
私の村政に対する基本は、明朗で平和な住みよい村の建設をモットーとして参りました。
村政の執行に当っても常に村民の意思表示機関である議会の議決を尊重し、これを誠実に実行して参ったつもりであり、議会の絶大なご指導ご鞭撻ご協力を感謝申し上げている次第であります。
先ず1969年度を振り返りますと、わが佐敷村に特筆されると思われる第一点は、特に議会のご協力によりまして、永年夢でありました馬天地先の埋立事業の第一歩が踏み出された事だと思います。
特に馬天港湾開発促進期成の中核となっていただき、各面から積極的な意見、強力な促進運動を展開してくださったお蔭だと感謝申し上げる次第であまりす。
第二点目は区教育委員会の責任において行われるべきであっただろうけれども村議会が中心となり、村内各種団体が団結して最も迅速に中学校の移転を実現させた事だと信じます。
特に議会議員の皆様方が中学校移転促進期成会の理事となってもらい、中には各種専門委員会のメンバーになってくださって、校地獲得に校地整備に将又募金事業にと昼夜の別なく苦労を重ねてくださった事は、永く語り草になるものだと深くお礼を申し上げる次第であります。
これでわが佐敷村の協力態勢が如何に強いものであるかが証明されたようなものだと意を強くしている次第であります。
こうした基盤の上に立って村長として、新年度臨む方針といたしまして

一 馬天港の整備と埋立に努力する覚悟であります。
特に港の整備につきましては、政府は本土から地方港湾い専門家を招へいして、充分に検討して貰うと共に、全琉球の長期開発計画を策定して、これに合せて遂次進めて行くとの回答受けている次第でありまして、港の整備第二工区、第三工区の認可を早めに進めるためにはより以上のご協力、ご指導が大切だと思われますので、より一層のご協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。

二 埋立地と既存地域との関連づけに努力する所存であります。
この点につきましては単に埋立地と、四十四号線政府道との結びを図るだけでなく、既存地域の繁栄に結びつける必要があると考えます。それ故にこそ議会とされても主席から馬天地先海面埋立の意見を徴された時点に、6ヶ条にわたる条件要望もつけてもらったものだと考えますので、その点を重要目標として努力する覚悟であります。

三 産業経済面について申し上げますと、皆様ご承知の通り、わが村の耕地の中には雨の度毎に水浸しになる箇所が数多く見られます。
これをなくし埋立地同様の繁栄を図るには、排水、農道を整備し、加えて省力を計ることが本村の耕地を生わす最も重要な事と信じますが農村にはなお保守的面が残されているようで「必要な道路、排水ではあるが自分の土地から切れるなら「ご免だ」とか祖先から譲られた土地だから」とかで、なかなかうまく行かないが現状であります。しかしながら世の中の進展に伴って、特に苦しい第一次産業では保守的な考え方では最早立ち行かない状態になっている事は皆様ご承知の通りでありまして漸進的にしか出来ませんけれども、この面に対する話し合いの場を多くもって、耕地整理組合等を造らせるように努力したい所存であります。
特に政府助成工事面におきましては、新年度予算における政府案は促聞するところによりますと工事量がいくらか少くなり、資金面もいくらか少な目になっているときゝます。
「天は自ら助くる者を助く」と云います。自己又は協同の力を発揮して行くよう強く望みたいのであります。
次に畜産の振興面につきましては、現在ご承知のとおり、肥育牛の価格が下落し、生産農家が困っている現状であります。
これは本土が肉質の改善に努力したためと食生活の向上と相まって、上質の肉は相当の高値を示しているにかゝわらず中等肉以下はだぶついているためと聞いています。それでわが村でも飼育技術の向上をはかって上質の肉をつくるための指導を強化して行きたい所存であります。
現在、獣医のお話しによりますと、上質の肉をつくるには先ず去勢することだそうでありますが、わが村でも去勢する飼育者がでてきて、よい結果を招来しつゝあるとのことで喜びに堪えません。是非この気風の増進につとめたいと思います。一方養豚におきましても飼育方法の改善が痛感されます。従来どおりのドブ飼いが多く見受けられますので、この点も合せて考えていただくよう推進したい考えであります。
とにかく肉質の改善と飼育方法の改良にはもっと努力しなければなりませんがそれに併せて家畜頭数をふやすことが大切だと思いますけれども飼育農家がふえないので悩みの種であります。何とか家畜懇談会を各部落毎に開いて、飼育農家の増大をはかりたいものと念願している次第であります。

四 財政の強化につきましては、埋立地の早期完成と共に賦課の公平を期しながら徴税率の向上を図るために、色々と調査研究をするとともに企業誘致に対して積極的に気を配って行く所存であります。
それにつきましても水の少いわが村では、水道問題が大きく企業誘致にも関係すると考られますが幸にして一部水道事業が着手出来るのではないかと大きく期待している次第であります。
更に最近とみに祖国復帰の足音が近づいて参った感を深くするものであります。
これに対する諸策は多岐に亘るわけでありますが、特に沖縄として町村合併の問題が重視されるようになったと思います。
この問題について、わが佐敷村も色々と話し合いを進めて行かねばならないと考えています。私は町村合併は生活権を中心として進めるべきであって、平面的な面積や人口による方法によることは問題処理にならないと思っています。
わが佐敷村では四十一号線を中心において考えるべきであって歴史的観点のみではむつかしいと思いますが先ず各村議会を中心とした話し合いの場をつくり、それを中核として各種団体を含めた話し合いの場に発展させていくように努めたいと思っています。
こうして広域になればなる程財政の強化がなされるとともに、村民福祉向上に資することが出来ると信じます。

五 村民福祉の面につきましては、事務の一部がおくれましたために老令年金の支払いが大きくおくれました事を深くおわび申し上げ、今後かゝることがないよう強く意を配って参る決意であります。
更に国民健康保険実施につきましては政府案といたしましては各町村でやるような案になって居りますが、われわれ市町村長側と致しましては現行の医療保険と一体化すべきとの主張をしているのでありますが、本土との関係でなかなかむつかしい問題であります。 私は一歩ゆずって政府管理ならば二本立でもよいと考えています。
村民の福祉のためにより深く研究してくださいまして、ご指導くださいますよう、お願い申し上げます。

六 教育の振興につきましては、先にも申し述べましたように皆様方の絶大なご協力によりまして立派な校舎が出来上りつゝありますのでこれを契機として、わが学校、わが村というプライドを強く育ててもらうよう、教育委員と小中学校に対して強く要請し青少年問題に強く心を配りたいと存じます。
わが村も青少年健全育成協議会が結成されて居り、不肖私が協議会長に祭り上げられて居りますけれども結成以来これと云う活動もなされて居りませんが今後組織を強化し実際に活動ができますよう組織をかえて努力したい考えであります。

七 村民に対するサービスについては役所全職員が打って一丸となり、事務の迅速及び正確をモットーにして明るい笑顔が並ぶように指導し村民がいつでも気軽く出入りができる役所にするよう努力する考えであります。
以上新年度に臨む方針の大要を申し上げましたが、浅学非才の故思い至らない点や舌足らずの点が多々あると思いますよろしくご指導くださいますようお願いを申し上げて終る事にいたします。

1969年6月 日

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000433-0002
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第22号(1969年8月)
ページ 2
年代区分 1960年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1969/08/15
公開日 2023/10/10