毎月第一日曜日は「家庭の日」、佐敷村では、小学校PTA、中学校PTA、村婦人会、村社会福祉協議会の四者の推進で、全沖縄の「家庭の日」運動に加わって全家庭で実践していこうということになりました。ちょうど、今日は8月1日、日曜日、佐敷村では、今回から「家庭の日」がはじまるわけであります。それではどうして「家庭の日」ができたか、また、「家庭の日」には、どういうことをすればよいかについて簡単にお話してみたいと思います。
昨年12月那覇市与儀にある南部会館で開かれた第11回全沖縄PTA研修大会の分科会で、青少年を健やかに育成するためには、家庭教育が重要であると強調され、その結果、「毎月5日を家族みんなが夕を共にする日」と決めました。「家族みんなが夕を共にする」つまり家族がそろって夕飯をいただき、あるいは話し合いをするということを決めたわけであります。そしてPTA連合会ではこれを実際に行なうためには、多くの機関や、団体の協力がなければ、効果をあげることができないとして、文教局、中央教育委員会、教職員会、市町村会、婦人連合会報道関係など二十五の団体の代表を集めて、更に協議をしたのであります。その結果さきに、PTA連合会が決めた「毎月5日を家庭みんなが夕を共にする日」という趣旨をいかして、「毎月第一日曜日を家庭の日」にすることを決め、沖縄中に推し進めようということになったのであります。佐敷村では7月29日、小学校PTA、中学校PTA、村婦人会、村社会福祉協議の代表が村役所で集まって8月の第一日曜日から、佐敷村中の全部の家庭が「家庭の日」を行なうことを申し合わせ、早速全家庭に「家庭の日」の趣旨のかかれたチラシがくばられました。
それでは「家庭の日」にはどういうことをすればよいでしょうか。
まず家庭の日には家族全員がそろって夕食をとるようにしたいものであります。
そして夕食をとったあと、家族全員の話し合いの時間を持つことであります。話し合いはなるべく司会者を決めて進めた方がよく、また司会も、家族の者が毎月交代でやった方がよいでしょう。
この話し合いでは家族みんなに発言をさせるようにしてほしいものであります。この場合子供たちから、お父さんお母さんに対していろいろ希望がのべられると思います。たとえば、叱言(こごと)が多すぎるとか、勉強中に仕事を言いつけないでほしいとか、お父さんはいつも帰りがおそいとか、耳の痛くなるようなことがかなりあるかと思います。
しかしこういう時でも、お父さんお母さんは子供たちのいうことをよく聞き、改めるべき点があれば改めるように努力することをはっきり子供たちの前でのべるべきで、「そんなことは駄目だ」とか「子供のくせに…」などというようなことで子供たちの発言をおさえるようなことは絶対にしないように心掛けてもらいたいものであります。つまりこの話し合いの時に最も大切なことは家族全員にのびのびと発言させるということと、そこで話し合われたことをその場限りにしないで、今後の家庭生活に生かしていくようにすることであります。戦前の農村では、その九割ぐらいが農家で、朝から晩まで殆んどの家族が顔を合わせるという状態が多かったのでありますが、戦後の社会はいろいろの職業が多くなり、農村といっても公務員、会社員、軍関係の仕事、お店づとめなどで、朝家を出て夕方に帰る人が多くなり、家族揃ってご飯を食べるという機会がだんだん少くなっており、このため家族同志がゆっくり話し合いをする機会も少くなっている状態であります。つまり、戦後、社会情勢の発展により家族の一人一人がそれぞれ違った多くの仕事をするようになり、家庭の収入は増え、一般に暮しもゆたかになったのでありますが、その半面、家族全員が揃ってゆっくり話し合いをするという機会はだんだん少くなっているわけであります。特にお父さんお母さんが共稼ぎをしている家庭では子供たちだけで留守番をしたり或いは夕飯がおそくなったりして家庭のあたゝか味がうすれがちであります。そういうことから、家族みんながたのしく、話し合える機会をつくろうというのが、「家庭の日」を設置した大きなねらいであります。
これまで申し上げましたように「家庭の日」の話し合いによってより良い家庭をつくるために、家族の一人一人が努力することがもっとも大切でありますがそのほか、「家庭の日」を利用して家族みんなの学習の会とするのも一つの方法でしょう。たとえば親子読書運動などはどうでしょうか。お父さんお母さんが名作など読んで子供たちにきいてもらう。逆に子供たちに読んできいてもらってお父さんお母さんがきくということ、或いは時間を決めて家族みんながそれぞれ本を読むということも考えられます。又、家族日誌をつくって塚族みんながこの一週間に感じたことを思い思いに記入することなどもやってみれば、きっと良い結果が現れるのではないかと思います。 或は、話し合いで毎週わが家の目標を決めてその目標に向って努力するというのも良いでしょう。たとえば、今週は「清潔、整頓に力を入れる」とか「花園をきれいにする」「朝起きたとき、学校に行くとき、学校から帰ったとき、夜寝るとき、きちんとあいさつをしよう」など取り上げれば身近かなものが沢山ある亡思います。たゞこゝで注意すベきことは、「何々しましょう」「何々をしてはいけない」いうことばかりになると家庭内が固苦しくなるおそれがありますので、こういうことはあせらずにじゅうぶんに日々をかけて徐々に家庭のフンイキをよくするようにしたいものです。そういう点では「家庭の日」を利用して家庭レクレーションの計画をたてることもよいと思います。これは夕食後のひとときを利用して、家族みんなで、のど自慢、お話し、かくし芸などをやることもないし、或いは家族揃ってカルタとり、トランプなどですごすのも楽しいことでしょう。このようにそれぞれの家庭に適するようにいろいろと工夫していけば、きっとすばらしい「家庭の日」にすることできると思います。そしてそれを家庭内だでなくゆくゆくは教育隣組が集まってレクレーション大会なども開くようにすればなお結構なことだと思います。
(佐敷村民の時間「家庭の一日]の放送文から)