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明るく正しい選挙にしよう 宮城鷹夫

佐敷村長選挙がしだいに近づいてきた。投票日は9月12日の第二日曜日と予定されているが、11月の立法院議員選挙をひかえているだけに、村民にとって、ことしの末は“選挙の年の暮れ”になりそうだ。
 こんどの村長の選挙は、これまでにない激しさを予告してか、数か月前からとうに立侯補のうわさの顔がちまたで話題をよび、早くも「前哨戦」が展開されたかっこうである。
 選挙は水ものといわれ、また異常心理のよくつけこむスキを備えているといわれているように、投票日が近づくにつれ、ふだんは常識的に割り切れないことであっても、疑念をさしはさむ余地を失なってしまって、いかにもまことしやかに通用するが例である。
 演説をきいても、どっちがほんもので、どっちがいつわりなのかわからない―などといわれるけれども、あること、ないこと、お互いに相手の悪口やデマ、中傷ばかりにこだわってしまうと、人口わずか八千余人の佐敷村が感情的に二分されてしまうのではないかという心配も生れてくる。信頼し合わなければいけない村民が、政治のからくりによって闘争にあけくれている図は、戦前から他村でくり返されているので、ここでいちいち例をあげるこどもないだろう。ここでいちいち例をあげることもないだろう。いわゆる“自・黒闘争”ある。これがどれほど住民にマイナスになっているか、これまた、例をあげるまでもあるまい。 選挙運動で、一番大切なことは、積極的に侯補者の政策や政見、人物を明らかにし、各人が何ものにも左右されず、自由に投票できる状態をつくり出すことだと思う。選拳民自体の政治意職の高揚こそ、正しい選挙実現のカギであり、政治を明るくしていく決定打だといえよう。
 ここで、立候補する人と側近者にのぞみたいことは、相手側の前でもはっきり言えるような政策や政見を、選挙民に十分に伝えてほしいということ。つまり、カゲにかくれた悪口や、勝つためには手段を選ばないデマ、中傷はご免こうむりたいのである。佐敷村の発展のためには、これから研究していかなければならぬ多くの問題がある。
農業政策の前進、道路の整備、馬天港と山間中腹地の活用、観光資源の開発、それらの事業にともなう財源確保と村民の税負担の軽減など、数えあげればいとまのないほどである。精神的な面では、村民のゆう和や人物の養成、村外への発展の棊礎づくりもおろそかにできない問題だ。
まだまだたくさんあるだろうが、こうした村政自体の課題を、候補者はどのように解決していこうとするのか、わたくしたちはその辺をくわしく承けたまわりたいと思う。その解答によって自然に審判の態度が決められるし、また政治も前進するといいたい。
 もって話をすすめるなら、選挙がすめば、侯補者も支持老も、お互に相手に対して謙虚になって、明るい村政ができるように最大の協力をおしまないこと。どうせ村長に当選するのは一人でしかない。他の候補者は冷厳な審判の前に涙をのまなければいけなくなる。当選してもおごらず、落ちてもひがまずに反省する気持ちは尊いものである。感情に生きる人間の弱さで、それを克服するのはなみ大抵ではないが、努力をすることは大切である。心ある村民なら、そのような候補者に、全面的な敬意を表するだろう。
 ともあれ、9月12日は村長立候補者に対する佐敷村民の審判の下る日である。しかし、つきつめてみると、これは佐敷村の有権者全員の良識が審判される日でもあることを、わたくしたちは強く認識すべきであろう。
(筆者は沖縄タイムス企画局次長)

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000416-0005
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第5号(1965年8月)
ページ 3
年代区分 1960年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1965/08/15
公開日