第107回佐敷村定例議会は6月18日から29日までの12日間にわたり、村議会室で開かれた。6月の定例議会は、1965年度のしめくくりであり、新年度を迎える重要な定例議会で、今議会では、議案第33号、佐敷村条例の一部を改正する条例の議決について、議案、第36号村有財産(ブルトーザー)の委託契約議決について、議案第37号村有財産(土地)貸付議決について議案第38号道路工事請負契約同意について、議案第39号1965年才入才出追加予算議決についての三議案を一部修正して可決した。可決された信念殿予算では、その予算総額が当初予算で、昨年度のそれより3万1千ドル増額され、遂に10万ドル台に達した。次は今議会における村長の1965年度の行政報告と、新年度の施設方針、議案の全文。
八件の議案を可決 福祉の向上へ着実な前進
本日ここに第107回佐敷村定例議会を招集しましたところ全議員のご出席を得まして今議会が成立いたしましたことを心から感謝申し上げます。
1966年度の予算の審議を勘告するに当りまして先ず1965年度の行財政状況についてご報告申し上げ、かつ新年度における施策についてその概要を申し述べ議会のご審議をお願いいたしたいと存じます。
最初に1965年度の行財政状況を御報告申し上げることに致します。
1.行財政について
行政事務の効率的運営を期すため役所内の組繊強化に努め、職員を適材適所に配置し事務能率の向上を図り、常に村民に対するサービスをモットーとし、且つ世諭を尊重し公正に誠意をもって事務を処理して来たのであります。
今後尚一層の行政効果を挙げるためには現行の役所機構及び業務運営等について全面的に検討を加え改善して行く考えでありますが、御承知のように戦後総ゆる組織形態が民主化されつつある今日、役所の業務形態が旧態依然として、昔のままのやり方では、時代に取り残されることになり、近時急速なる進歩を遂げつつあります市町村の自治行政事務の処理の面で支障を来すのではないかと憂慮されているのであります。
本村と致しましては役所事務の改善に資するため、助役を長とする各課長からなる事務改善委員会を組織し、政府及び市町村会の指導を受けつつ役所事務全般について検討を加えつつあるのであります。更らに去った4月総務課長を本土に派遣し自治省を始め事務改善優良町村に於いて実務研修を行わしめたのであります。つぎに職員の服務規律や執務態度については常に意を払って来たのでありますが更らに住民から信頼される公正なる公務員の素質造りのため監査委員による出納事務の検査を始め各課の事務を監査せしめ、更らに職員の分限及び徴戒条例並に職員の服務規則に関する条例の趣旨に則り職員の綱紀保持に努力を続ける考えであります。
職員の給与改善については、当時の消費者物価指数の上昇と民間給与との均衡を考慮して1964年7月から議会の協賛を得て、平均15パーセントの増俸を行い、期末手当の支給率年間250パーセントから300パーセントに引き上げることができたのであります。更らに前年度に引き続きまして将来の行財政向上に資するため議員団による日本本土の行財政視察研修を行い多くの資料を得ることができたのであります。
つぎに財政一般について申し上げますと、1964年度の予算額90,434ドルに対し才入決算額83,472ドル80セントで、92.3パーセント才出決算額67,910ドル88セントで予算額に対し75パーセントで、その執行率は低いのでありますが、その主なる理由は政府による市町村助成工事費が執行できなかったことと着手した工事を次年度へ繰越したことがその大きな理由であります。
工場の誘致を実現
1965年度予算については本年5月末現在で、予算額128,673ドルに対し、才入済額93,266ドル91セントで、72.4パーセント才出済額は80,052ドルで、62.3パーセントでありまして目下予算執行に鋭意努力中であります。更らに村財政の基礎を確立するために、村議会と一体となり工場誘致に努力いたしました結果、字仲伊保地内にマルヰプロパン沖縄工場と琉石プロパンエ場を誘致することができ、去った4月両工場が建設され村の最大の施策であります工場誘致を実現することができ又村民の多年の要望にも応えることができたのであります。
両工場は早速5月から事業を開始いたしましたが、プロパンガスの需要が急速に増えつつありまして業界からの注目の的となっており両工場の発展は今後の村財政の面に大きくプラスするものだと期待を寄せるせているような次第であります。税務行政について申し上げますと1965年度の村税賦課調停額は8,738ドルで村税予算額8,426ドルに対し312ドルの増であり、前年度に比較いたしますと470ドルの増収となっております。税務については特に負担の公平と適正なる課税に意を注ぎ●税事務●●●め納税成績の向上に努力を続けているのであります。本年5月未現在の納税成績は90パーセントに達しており年度末までに九五パーセントに引き上げるべく目下努力中であります。
広報活動を強化
広報活動については村の施策を村民に周知せしめるため、年間四回広報「さしき」を発行し村政のアピールにつとめておりますが、今後は更らに編集面に検討を加え広報に村民の声を収録するなど直接村民の声を聴取し村の施策に反映せしめる考えであります。更らに村の行政問題や学校、農協及び各区や各団体の諸行事をその都度村民に周知せしめるため昨年10月15日から毎週(日、木)ラジオ放送番組に「村民の時間」を設け親子ラジオを通して広報活動を続けて参りましたが、村民から好感を持たれ、親しまれているのでありますが、更らに改善を加え継続していく考えであります。
基本産業について
唯一の換金作物であります甘蔗の作付面積はここ二、三年来急速に増え、加えて昨年期の糖価の高騰によって、本年期の収獲面積は3,3000アールという、かってない面積に拡がり、生産量は4015万キロに達し、戦前戦後の最高を記録したのであります。前年期の2310万キロの173.8パーセントと言う実に驚異的記録を示したのであります。反面砂糖貿易の自由化は、糖価暴落を来し一時蔗昨民に大きな不安を与えたのでありますが、日本政府の特別なる配慮により沖縄産糖特別措置法等を制定し沖縄産糖の買い上げを行う等で急場をしのぐことができたのでありますが、将来の沖縄糖業を振興させるために日本政府による充分な保護措置を講じてもらうよう要請するものであります。
尚本年期の製糖期間が6月まで引き延ばされ、蔗作民に大きな不安と焦慮を与えたことは延いては生産意欲を減退させるものであり、将来の沖縄糖業の盛衰に係る重大問題であり、政府の糖業政策の再検討を要請するものであります。村費支弁に係る工事について申し上げますと、村道の維持管理については、議会のご協力を得て、年二回村道の現状調査を行い、その都度補修工事を施行したのでありますが、本年度の補修工事費支出額は3,313ドルであります。
村道の現状は一部を除いてはやや良好でありますが、今後の維持管理上、暗渠の新設など、排水関係を考慮する必要があると思うのであります。
尚村道補修工事に際し、関係区民の労力奉仕による御協力に対し心から感謝申し上げるものであります。次は政府の直営工事と助成工事について申し上げます。
政府の直営工事と致しましては、護岸工事費三件43,650ドル政府道の簡易舗装工事費3,900ドル同暗渠工事費940ドル計47,550ドルであります。
次に助成工事と致しまして農道工事三件17,250ドル排水路工事一件で3,125ドルであります。更らに高等弁務官資金による農道工事が二件で8,035ドルの資金交付を受けたのであります。結局1965年度本村内で施行されました建設工事費は会計79,273ドルになる訳であります。
中学校敷地の購入 育英会を設立
保健衛生について
本村は昨年那覇保健所の推薦により公看モデル地区に指定され本年はその二年目を迎える訳でありますが、その間村駐在の公看を中心に保健所職員や村内の助産婦等の協力を得て、保健思想の向上に努力を続けているのであります。特に結核、成人病、寄生虫、風土病等その他伝染病の治療と予防を重点目標として指導普及に努力して居りますが、村民からも親しまれ、現在では村民らが進んで健康相談に役所まで出かけてくるまでに理解するようになり村民の保健思想の向上が目立って来ているのであります。後二、三年現在のような向上を続けるならば我が佐敷村は病気のない健康で明るいが建設されるものだと期待を寄せているような次第であります。
社会福祉事業について
社会福祉事業は大変広範囲な事業でありますが、先づ村内の生活困窮者の生活保護と厚生指導、幼児教育への協力、防犯業務の協力老会者福祉及ぴ村内各種団体の育成指導を重点的に行っているのであります。村内の生活保護世帯が73戸で更らに稍それに類した生活困窮者が、137戸もあり、これは村内総戸数の13.5パーセントに当るのでありまして、此の比率は他村に比して高いようで誠に遺憾であり、今後村民各位の御指導御援助によりまして、これらの人々が、早期に更生できますよう念願するものであります。
更生指導事業と致しましては、生業資金、修学資金、医療資金として政府資金による貸付を行なっております。更らに幼児教育の振興のために各区の幼稚園の児童に対し年間一人当り2ドル40セントの補助を行ったのであります。
老令者の福祉事業と致しましては毎年敬老会を開催しお年寄りの方々を激励申し上げると共に八十才以上のお年寄りの方々には敬老年金を差し上げることに致しておるのであります。
尚生活困窮者に対しましては、年末たすけ合い運動によって救援すると共に、毎月政府から交付されますリパック物質によって救援を続けているのであります、更らにこれらの事業を強化拡充するために昨年11月佐敷村社会福祉協議会を結成致しましたので、今後は民間団体の協力を得て、村の社会福祉事業をより強力に幅を拡げて行く方針であります。
教育行政について
教育行政については村という大きな立場から教育委員会に協力するよう努めて来たのであります。
御承知のように教育委員会は財政面が苦しいので村という大きな立場から村民教育のため現年度において630坪7,034ドルで土地を購入し、これを佐敷中学校の校舎敷地に無償で貸付けたのであります。更に小学校が実験学校に指定されましたのであります。
次に本村の年来の要望でありました、育英事業を実施するため去る3月27日に佐敷村育英会が設立されました。本年度村費より1650ドルの補助金を支出致しまして毎年十名の大学生に学資を貸与することになりました、現在六名の大学生に資金が貸与されたのであります。学資に困る優秀な学生に学資を与え以って進学の道を招き青少年に希望を持たせることは次代を背負って立つ青少年の教育のため又将来の人材養成の観点から真に意義ある事業だと思いますので、今後共育英事業の強化に努める考えであります。