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日本々土視察報告 議会議員 普天間善徳

私達村議会議員四名と議会書記一名、合計五名は去る9月26日から10月21日まで、26日間、城間盛亀氏を団長として日本本土の行財政を視察研修をやって参りましたが地許村民の皆様に対し深く感謝申し上げる次第であります。先づ日本の農業面から御報告申し上げますと、日本本土の一戸当り耕地面積は一町一反も持っておりますが我が佐敷村は僅かに三反八畝で、日本の約三分の一であります。従而一農家平均総収入も日本が1,389ドルに対し我が佐敷村は其の半分の600ドル程度であります。
 我が佐敷村がこれでも生活して居るのは農業以外の収入として、軍雇用員400人、民雇用員317人、公務員170人計887人の賃金収入と、10万5,981坪の軍用地小作料等を合わせて一農家平均1,020ドル程度の収入があるからであって、安定せる生活とは言えません。以上申し上げた通り日本木土と沖縄とは耕地面積に大きな開きがあり、又農作物も日本は稲が主体で、沖縄は甘蔗が主体で、尚又気候、風土の如き位地条件が大いに異る故、総てを其のまま沖縄が真似ることは出来ないにしても、日本の各市町村で取って居る農業政策は大いに学ばなければならないことを痛感致しました。
 この政策が農業構造改善で、日本政府としてを国策として取り上げた基本的な政策となっております。

一,農業構造改善事業では
 農業構造改善とはどんなものであるか? 又どう云う目的のためにやらねばならないかについて少し説明させてもらい度いと思います。日本でも(又は沖縄でも)農家の畑は此処に100坪あれば、向うに150坪、又何処かに200坪と言う風に十カ所位の畑が飛び飛びに離れ離れに散らばって一力所にまとまっておらないのであります。その上リヤカーさえも通らない小さい畦道が多い。
 A、そのため耕運機や、トラクター等も入れられないばかりでなく、あの畑やこの畑の往復に大切な時間を空費しております。
 A、尚農業の近代化をやらねばならないと思いつつも、それが困難である。だからして昔のままの鍬やへラ、鎌などを使って、耕さねばならない状態である。
 C、一方農業以外の産業は、機械化することに依って能率を上げ生産費を安くして、外国と競争しても負けない位急速に進歩して居るのに農業だけは昔のままで、進歩する事ができない。
 D、次は農業従事者の話も聞きましたが、日本に於いては都市の工業の発達により、若い青年層は、殆んど出稼ぎに行き尚中学卒業者や、高校卒業生も殆んど農村を離れてしまい、農業従事者として残っている者は年寄りと女と言うふうに毎年毎年若い農業従事者が減り、労力不足であり、農業も機械化しなければならないように追い込まれて居ると言う話でありました。
 それで日本本土に於ては、多額の助成金を投じ土地の交換分合を行い、ブルトザーをもって土地の高低を均し、一筆の畑を900坪又は1,500坪単位になし、全部の畑にトラクターやトラックのはいる様に耕地整理を戸っている。是れが即ち農業構造改善事業と言うものであります。土地の交換分合については村民の皆様には、是れが出来るものかと耳を傾けない者が多数居られると思いますが日本本土では出来るのに沖縄で出来ない事はないと信じます。

一、日本本土における土地交換分合方法
日本の市町村では農業構造の出来る地域を指定して、先づ部落毎に懇談会を開催して、農家全部が、この事業に参加する様に説得したそうですが、成る部落では一人の不賛成者があって是れを説得するために一年半もかかったそうです。実際は70バーセントの参加者が居れば法で押し切ることも出来ると言う話でありますが、飽くまでも法を用いずして農家の説得に努めたそうであります。

二、土地評価委員の設置
 皆んなが賛成したら其の次は各部落毎に土地評価委員を設置し、構造改善地域の畑や田圃を各筆毎に採点して一坪当りの値段を決める訳ですが

三、●採点の方法は
 イ、地力の点数
 ロ、自宅から畑までの距離
 ハ、農道から自分の田畑までの距離などに依る便利、不便利の点数
 ニ、平担地であるか傾斜地であるかの点数
 ホ、耕し易いか、耕し難いかの点数
 へ、耕度の深浅の点数
 ト、其の他
評価委員は飽くまで白紙の立場で公平に採点して其の点数の合計で土地の価格を決めております。

四、次は交換分合について
は其の所有権認定や合筆分筆等の一切の登記料は免除されて居ります。
五、尚又農業構造について
は小さい畦道や排水、境界がなくなるから面積は五パーセントから六パーセント位は広くなるが、其の代り農道が広く長くなるから結局五パーセントから六パーセント位の土地は減る予定だそうです。

六、農業構造改善費について
 宮崎県三股町が1億7,000万円、ドルに換算して47万2,000ドルで佐敷村全予算の7.7倍で鹿児島県中種子町が、3,000町歩に対し1億円(28万ドル)ですでに土地交換分合も設計も終了し、ブルトーザ二台で向う三ヵ年計画で始める段取りになって居りまして其の経費の70パーセンは政府補助で、残りの30パーセントは其の町村と地元負担になるそうです。これが完成の暁には今まで一町歩を耕していた農家でも1町5反以上も耕し従而生産費も三割程度は軽減出来ましょう。

▲養豚業について
去る10月4日名古屋では仲伊保出身の知念泰司氏の案内で村出身の方々の養豚業を見ましたが富祖崎出身の玉寄兼蔵氏、屋比久出身の呉屋善英氏、南風原村出身の赤嶺与助氏等は何れも二百頭乃至三百頭を多頭飼育し養豚業で成功して居る、飼料は残飯、芋、又は購入飼料でやって居るが、現在の豚価で充分もうけられると言うて居ります。
現在価格は生体で十斤4セントと言う話です。更に10月9日大阪で沖縄物産販売大阪斡旋所長を合いましたが、所長の話では沖縄は豚の本場でありながら豚の出荷が無くて残念そうな面持でした。所長も大阪の豚肉卸販売業者から豚の輸出を要求されて居るそうですが豚は沖縄も高値で島内消費も不足であるし、将来養豚業者がふえ、生産過剰になり生体30セントから32セントに落ちた場合には輸出も出来ることと思います。沖縄の豚輸出業者も生体30セントから32セントで買うことが出来れば日本輸出も可能だと言うて居ります。

三、甘藷作について
芋は沖縄では300年の歴史を持昔から芋の本場でありますが、近頃甘蔗作ブームのため芋畑が激減して農道を通っても芋畑はなかなか見当らない、やがて芋は皆無になりはしないかと思う場合もあります。しかしながら大分、宮崎、鹿児島では沢山の芋畑が見受けられた。芋は日本では一斉収穫して澱粉工場に搬入して居るが澱粉工場はこれを水飴工場に送り砂糖を造って居ります。芋の価格は沖縄で十斤25セント位と思いますが、日本では十斤で18セントの価格で、工場が買いとって居る、これも砂糖貿易自由化の影響を受け、やがて十斤11セントになることを予想し農家も心配の表情でありました。

四、水稲
 水稲は日本の主要作物であり、その価格は国民の経済生活に影響するもので政府が一升150円で買ってこれを消費者に対しては1升120円で販完して居る。沖縄の砂糖日本のお米同様日本政府が全量買上げしてこれを消費者へ安く売る様な政策をとってもらえば良いがと念願致します。
 そうすれば現在難航をつづけで居る、あの砂糖自由化の問題も早く解快することになりましょう。

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大分類 テキスト
資料コード 008435
内容コード G000000415-0004
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第4号(1965年2月)
ページ 1
年代区分 1960年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1965/02/01
公開日