1.行財政について
行政事務の能率的及び効果的運営を期するための役所内の組織強化に努め、職員を適材適所に配置し事務能率の向上を図り常に村民に対するサービスをモットーとし、且つ村民の世論を尊重し更正に誠意を持って事務を処理して来たのであります。今後なお一層の行政効果を上げるためには、現行の役所機構及び業務運営などについて全面的に検討を加え改善を要する点もあると思います。
つぎに職員の服務規律や執務態度については、常に意を払って来たのでありますが、更に住民から信頼される公正なる公務員の素質造りのために昨年9月監査委員制度を設け、出納事務を始め、各課の事務を監査せしめ更に本年5月に職員の分限及び懲戒条例並びに職員の服務規則に関する条例を制定し、職員の綱紀保持に努力を続けているのであります。職員の給与については、当時の消費者物価指数の上昇と民間給与との均衡を考慮して、1963年7月に議会の協賛を得て平均20%の給与改善を行い、期末手当の支給率を年間15%から20%に引き上げることができたのであります。更に昨年は行財政の向上に資するため、議員団による本土の行財政視察研修を行い、将来の村政の振興のため、多大なる資料を得ることが出できたのであります。つぎに財政一般について申し上げますと、1963年度の歳入総計は予算額63,032ドルに対し、歳入決算額62,953ドル5セントで99%。歳出決算額は59,219ドル77セントで予算額に対し3.9%の消化で順調な予算運営であり、翌年度への繰越額は3,733ドル28セントであります。1964年度予算については、本年5月末現在で予算総額81,637ドルに対し、歳入済額72,858ドル10セントで89%。歳出済額は56,490ドル86セントで69%でありまして、目下予算執行に鋭意努力中であります。
更に財政基礎の確立を期するため、昨年7月字佐敷地内で、雑種地、381坪、同年11月字仲伊保地内で塩田15,676坪を村有財産に編入することが出来たのであります。
税務行政について申し上げますと1964年度の村税賦課調定額は8,268ドルで村税予算額7,263ドルに対し110%、前年度の村税賦課調定額は7,761ドルに対し、507ドルの増加であり、その殆どが村民税からの増収でありまして、村民所得の順調なのびを示しているのであります。
税務については特に負担の公平と適正なる課税に意をそそぎ、徴税事務の強化に努め納税成績の向上に努力を続けているのであります。
本日20日現在の納税成績は90%に達し、前年同期の79%に対し11%の向上を示しているのであります。
2.広報活動について
広報活動については、村の施策を村民に周知せしめるため本年二月広報「さしき」を発行したのでありますが今後は年間4回発行し、村政のアピールにつとめ、広報に村民の声を収録するなど、直接村民の声を聴取し村の施策に反映せしめる考えであります。
更に本年2月には政府の施策を村民に周知せしめるため、政府の移動相談書を開設し、多大なる効果をあげたのであります。
つぎにご報告申し上げたいことは広報活動と直接のつながりをもつものではありませんが、多年にわたり待望致しました佐敷村誌を去る5月に発刊することができまして、皆様と共に喜びにたえないのであります。
3.基本産業について
農産物の中には唯一の換金作物である甘蔗の作付面積はここ2、3年来急速に増え、加えて昨年期は糖価高騰のため、農家所得も上昇し、今後更に甘蔗作面積は拡大されるものと思考するのでありますが、昨年8月本土政府が、砂糖貿易を自由化したため、蔗作民に大きな不安を与えている現状でありますので、早急に自由化に対処した、十分なる対策を講ずる必要を痛感するものであります。昨年期の甘蔗生産量は2,310万キロで戦前戦後の最高記録を示しているのでありまして、前年期生産量の123%に達したのであります。
昨年度は前年の冷害に続いて70年振りという大干バツに見舞われ、農家にとっては、苦難の大きかった試練の年であったのでありますが、農民各位の努力によりまして、この大災難を最小限にくい止めることができ前年の生産量を上回る生産が出来ましたことは、ひとえに農民各位の努力の賜であり、その間の各位の●労に対し、心から敬意を表し、厚く感謝申し上げる次第であります。
水稲は干バツのため殆どの田圃が植え付け不能となり又植えつけた田でも収穫皆無という、水稲作にとって、かつてない不作の年であったのであります。
4.建設関係事業について
村費支弁に係る工事について申し上げますと、村道の維持管理については、議会の経工委員会の協力を得て、年2回村道の現状調査を行い、その都度補修工事を施工したのであります。村道の現状は一部を除いては、稍良好でありますが今後の維持管理上、暗渠の新設など、排水関係を考慮する必要があると思うのであります。
なお、村道補修工事に際し、関係区民の労力奉仕による、ご協力に対し、心から感謝申し上げるものであります。次に昨年8月3,650ドルの村費で行政電話を設置いたしました。この電話は行政上の連絡電話とし、又両巡査駐在所や、診療所、農協、両学校にも設置してありますので、総ての事務連絡や、有事の際の連絡施設として効果を発揮しつつあり、大いに喜ばれているのであります。
なお、電話設置工事に際しまして、ご寄付下さいました、農協及び村親子ラジオ運営協会に対し心からおん礼を申し上げる次第であります。
次に本年4月村費1,217ドルをもって戦没者慰霊碑を建設いたしました。この慰霊碑建設については数年来の村民世論が、ここに実現された訳でありますが今後は戦没者の霊を慰めると共に戦没者の犠牲を無にすることなく、この慰霊碑を平和への指標に致し度いのであります。
次に去る5月村費556ドルをもって、月代講演の駐車場を建設致しました。つきしろ公園は今日まで駐車場がなく、又参道の復員も狭く、車両の交通が危険でありましたが、今回の駐車場建設によって、危険もなくなりましたので、今後観光客の数も増えることと思いますが、更に今後共講演施設の充実のために努力を続ける考えであります。
つぎは政府の直営工事と助成工事について申し上げます。
政府の直営工事と致しましては馬天港の防波堤工事費72,300ドル、護岸工事費31,650ドル、政府道のタール舗装工事費2,500ドル計106,450ドルであります。つぎに助成工事と致しまして農道工事1件、5,700ドル、排水路工事2件で7,880ドル、干害対策用水源保護施設工事2件で437ドル計14,017ドルとなっております。更に高等弁務官資金による水道工事が2件で5,085ドルの資金交付を受けたのであります。結局昨年本村内で施行されました建設工事費は総計132,863ドルになる訳であります。更に申し添えたいことは1964年度で失業対策事業を計画いたしまして、強力に政府と折衝致しましたが種々の事情がありまして、受け入れできなかった事を甚だ遺憾に思うのであります。
5.保健衛生について
保険衛生思想の向上は結局村から病気を追放して平和な明るく住みよい村の建設が、目標であります。本村は従来他村に比して、保健衛生思想が、低調であった関係で、今回那覇保健所の調査の結果によりますと寄生虫や風土病が、他村に比べて、いちじるしく多いようであります。そこで今回那覇保健所では本村を公看モデル地区に指定し、これら病原体を徹底的に究明し、治療すると共に予防思想の普及に努めることになっているのであります。現在村駐在の公看を中心に保健所職員や村内の助産婦にも協力をお願い致しまして、保健思想の向上に努力を続けているのであります。更に、去る3月15日にはライオンズクラブによる無料診療所を開設致しまして約800人の村民が無料診療に応じ、効果をあげたのであります。
6.社会福祉事業について
社会福祉事業は大変広範な事業でありますが、まず村内の生活困窮者の生活保護と厚生指導、幼児教育への協力、防犯業務への協力、老令者福祉及び村内各種団体育成指導を重点的に行なっているのであります。村内の生活扶助世帯が97戸で、更に稍々それに類した生活困窮者が135戸あまり、これは村内総戸数の15.4%に当るのでありまして、この比率は他村に比して、高いようで誠に遺憾であり、今後村民各位の指導援助によりまして、これらの人々が早い機会に更正できますよう、念願するものであります。更正指導事業と致しましては、生業資金、就学資金、医療資金として、政府資金による貸付を行なっております。更に幼児教育の振興のために区切の幼稚園の児童に対し年間一人当たり1ドル80セントの補助を行なったのであります。
老令者の福祉事業と致しましては、毎年敬老会を開催し、お年寄りの方々を激励申し上げると共に昨年9月に佐敷村敬老年金支給条例を設定致しまして80歳以上のお年寄りの方々に年金を差し上げることに致したのであります。なお、生活困窮者に対しては、歳末助け合い運動によって救援すると共に毎月政府から交付されますリバック物資によって、救援を続けているのであります。