昨年村議会議員の本土研修視察から、本土における農業構造改善による農家所得倍増の一例を鹿児島県姶良町の状況を記してみましょう。
この町は鹿児島市からバスで30分、交通に恵まれた静かな農村で、我が村と那覇との位置によく似た点が多いのであります。
姶良町は昭和30年1月1日に旧帖佐町、旧重富村、旧山田村の三ヶ町村が合併して出来た町で全戸数5,923戸総人口23,280余人、全戸数の70%が農家である。
農業は老人婦女子が中核となっている労働力で、所得は年平均13万円(361ドル)程度、農家所得を引き上げるため昭和35年から「町ぐるみ集団養鶏」をはじめ今日軌道にのっていると言われている。
農業構造改善事業で共同利用施設が整備拡大され農家の多数羽飼育がすすめられ、それによる農家所得の増大をはかり現在(昭和39年)17万5千羽より昭和42年までに54万羽に増し採卵の主産地形成が計画されている。つまり(田畑収入+養鶏収入増大)昭和42年には現在の倍額の農家所得額の計画である。
この町は町政と農協と一貫した施策で、町の政策事業は農協が実施指導する方法で行われている。農協は農家への融資面、組合直営の種鶏場、集卵場、廃鶏処理工場を経営して合理的に運営されている。
卵の集荷は農協の集荷車が各養鶏場を回って毎日集荷している。
詳しく申し上げますと、鶏舎の造り方から、ヒナの仕入れ、飼料配達、卵の集荷、廃鶏処理と一切農協が引き受け、農家は不安なく安心して養鶏が出来る仕組みになっています。
本土でも農業だけでは他の産業並の所得は困難であり、姶良町では養鶏を織り込んだ所得増大を計画されている。
このことは参考とするに大きな収穫であった。
本土では他の町村でも農業と養鶏又乳牛、稲作に野菜、或は果樹等の栽培で田畑以外の収入をおり込んで農家経営が他産業へ追いついていることは学ぶべきである。
我が村の農業経営はキビ作一本に流れている。限られた面積、技術面から考えてもキビ作だけでは農家の所得の倍増は考えられない。
本土に比して総てがおくれた沖縄の現状では先ず我が村においては農業の基本施設を整備するのが先決であり、農家も農業経営は、家族の労働力を調整して家庭に適した副収入を図り他の産業並の向上する努力と工夫が必要である。