佐敷村第94回定例議会は、6月27日から、30日までの4日間にわたり(当真嗣英議員病気のため欠席)役所二階ホールで開かれた。16議員中15議員出席して議案第十号佐敷村報酬及び費用弁償の額並にその支給方法を定める条例の一部を改正する条例議決について、議案第十一号佐敷村旅費支給条例の一部を改正する条例の議決について、議案第十二号佐敷村職員定数条例の一部を改正する条例議決について、議案第十三号佐敷村職員給料支給条例の一部改正する条例議決について、議案第十四号1962年度佐敷村歳入歳出決算認定について、議案第十六号予算の繰越議決についての六議案を原案通り可決、議案第十五号1964年度佐敷村歳入歳出予算案を一部修正して司決した。今議会における村長の議案説明はつぎの通り。
村長の施政方針から
本日茲に第94回定例議会を招集致しましたところ15人の御出席を得まして今議会が成立致しました事に対し衷心より感謝申し上げる次第であります。
今議会は1964年度の予算を審議する通常予算議会でありますので、新年度に臨む私の村政に対する抱負の一端を申し述べ、議会の御協力を御願い申し上げたいのであります。
私の村政に対する心構えは先づ「明朗で平和な住み良い村の建設」に力を尽し「常に正義と公正」で以って村政に当ると言うことが私の村長就任当初からの一貫した方針であります。
政治は目標に向って前進を続ける事が大切でありますが、その前進という事が却ち政治でありますので先ず村政を執行するに当っては常に村民の意志表示機関である村議会の決議を尊重し、誠実にこれを実行することが民主政治の在り方だと信ずるものであります。
私の政治目標は度々申し上げた通りでありますが、要は住民最大多数の最大幸福を実現する事が私の政治理念であります。住民最大多数の最大幸福とは、即ち住み良い豊かな福祉社会を建設する事でありまして、政治の総てが住民の福祉向上のために集中されるべきだと信ずるものであります。そこで私達は常にこの目標を目指し現実に立脚し情勢に則応した政策を樹立し強力に実行し目標に向って前進を続ける事であります。
私が常に考えます事は何事を為すにも先づ忍耐が必要であり、また確実なる前進を遂げるには急激な大巾な前進よりも一日一日の努力による前進を積み重ねる事が最も正しい進歩だと信じております。
私はこの信念に基き村政の執行に当り、また職員を督励致しまして、村民の福祉向上のた努力を続ける考えであります。
次に1964年度における村政運営の心構えについて申し上げ、各位の御検討を仰ぎ、且つ御協力を御願い申し上げる次第であります。
砂糖自由化への対策
先づ第一に村の政治は村民のための政治でなければならないと信じております。そこで村政を執行するに当っては特に村民の世論を尊重し、また対外的問題と致しましては村復興のため軍民両政府や、その他の関係機関に対し財政的および技術的援助方を積極的に折衝を行なっていく方針であります。
また対内的問題と致しましでは常に村民に対するサービスをモットーとして、村民の人格を尊重し、誠意をもって事務を処理したい方針であり、また職員を適材適所に配置し事務能率の向上を計り役所内を明朗化し愉快な職場たらしめたい方針であります。
一、次に村の産業経済について申しあげて見たいと思いますが、御承知の通り我が佐敷村は戦前から農業を以て生活を樹てておるのでありまして、村経済の基盤は農業にまつ所が大きいのであります。農産物の中でも唯一の換金作物は甘蔗でありますが、最近の砂糖貿易自由化の問題が蔗作民に大きな不安を与えておる現状でありますので、早急に自由化に備えての十分なる対策を講ずる必要を痛感するものであります。
自由化対策と申しますことは、糖業の合理化によって生産コストを引き上げ、沖縄の砂糖が国際商品として国際市場で外国糖と競争できる態勢に改善する事であると思うのであります。
この問題は言い易くして実行の難しい事であり、しかもこの問題は独り佐敷村だけの問題でなく全琉的な重大問題でありますので、政府の糖業合理化方針を推進しこの問題解決に努力する考えであります。
この際私達は是が非でも難問題を解決するにあらざれば折角ここまで築き上げてきました沖縄糖業を見捨てねばならない事態が起らないとも限らないのであります。現状のような経営状態が改善されない場合は、沖縄糖業は存続困難となり、遂には亡ぶという破目に追い込まれるのでありまして、沖縄糖業の現状は正に将来の存亡に係る重大岐路に立たされていると言っても過言ではないのであります。
政府の糖業合理化計画を伺いますと、沖縄糖業の発展を阻害しているのは零細農家による小規模経営がその大きな原因だと言われておりまして、この際農家の覚せいを促し農地の集団経営化と農耕の機械化によって糖業の合理化を促進する方針のようであります。本村と致しましてもこの政府の方針に従い本年度中に農業協同モデル地区を設定し、実体による指導標本を造り糖業の合理化を促進する計画を立案中であります。更らに農業生産の増強のため農業基本施設である農道、排水、橋梁の整備促進に一段と努力を払う計画であります。
尚本年度の早魃に鑑み植樹問題も政府の緑化運動の主旨に則り、防風防潮林を始め用材植林を奨励し、風潮害を防ぎ早害に対する水源の函養と飲料水源を確保致したいと存じます。
村に育英会つくる
二、次に社会事業について申し上げますと、近時社会保障制度の関係法が整備されつつありまして、すでに失業保険法も実施されましたので、今後は生活保護者、身体障害者の福祉事業の促進と戦争犠性者の遺家族援護の強化に努力する考えであります。なお国民健康保険制度の実現のため、強力に折衝し、その実現を計り、私達の社会から病気を追放し、住みよい郷土建設に努力する考えであります。
三、次に教育問題につきましては教育委員会の分野でありまして直接のつながりはありませんが、村という広い立場で人材養成の観点から、特に議会の御協力を得まして学校施設や、其他文化施設の充実に努力致しまして、村教育の発展を計りたいと思うのであります。尚人材養成の観点から本村の年来の懸案であります育英会の設立を促進し、学資に困っている若い学徒に奨学資金を与え、進学の道を拓き青少年に希望と光明を持たせるため本年中に育英会の設立に手がける計画であります。
四、港湾施設の整備促進について申し上げます。馬天港は1963年当初まで大東島航路の基地に使用され、港湾としての価値も高く評価されておりましたが、施設の不備と水深が浅いとの理由で大東島定期航路が泊港に変更された事は真に遺感に存ずるものであります。
私達はこの事態に深く想いを致しまして馬天港の施設整備のため軍民両政府に対し強力に折衝を続け早急に施設を整え従来通り大東航路の基地に使用して貰うよう関係方面へ要謂する考えであります。斯様にして馬天港の復興を計る事は延いては村経済の発展に寄興することでありますので特に村議会の御協力を御願いする次第であります。
五、観光施設の整備について申し上げます。観光施設は近年各地で優先的に施行されつつありまして、その発展は特に目覚しいものがあるのであります。観光事業は第一次産業に次ぐドル穫得の重要産業として有望視され、この事業は国際的につながるもので、その事業内容も色々とありまして史跡、風景、娯楽というように分類されるようであります。本村と致しましては琉球史上でも有名な佐敷城跡があり、さらに遊園地に適当な兼久海岸の築島等がありますので、政府に御願いし適当な観光施設を行う考えであります。なお従来から話し合われております大里城跡、兼久海岸、佐敷城跡、斉場御嶽、知念城跡、ミントン城跡を結ぶ観光コースの新設のため関係町村と連携を密にする考えであります。
村有財産の特委を設置
六、財政の強化と企業誘致について申し上げます。本村は村有財産が少なく随って自己財源は総予算の20%に過ぎません。その他は市町村交付税を始め、政府支出金の依存財源に頼っている現状で真に心細い次第であります。
今後とも自己財源の確保と造成のため努力すべきだと考えるものであります。自己財源の確保と言うことは税源の確保でありまして、現在所有している財源を充分に調査確保することであります。村有財産に致しましても戦後の所有権確認の手続上の不手際から未だに未整理のものもあります。さらに村有財産に編入されるべき箇所が未整理のままの残されているとの事も聞き及んでおりますので、近く議会に諮り村有財産調査のための特別委員会を設置して行う計画であります。次に自己財源の造成につきましては予算の許す限り、財産の購入、または事業投資等行う考えでありますが、これは専ら公共的立場から考慮されるべきだと思います。さらに資本の導入による事業を興す事も新財源の造成になりますので、機会ある毎に資本家誘致運動を起し財源確保に努力すると共に労働者の完全雇傭を計りたいと思います。
七、次に納税成績の向上についてでありますが、納税成績の低下は総ての村政執行の支障となりますので、納税思想の昂揚に努め、優良者を賞揚し、滞納者に対しては法的処分を行う考えであります。
さらに地区毎に数個市町村による滞納整理組合を設置し、その都度滞納処分を断行する計画も進められております。以上申し述べた事項が私の新年度に於ける村政執行上の主要事項でありますがその他の問題につましては後で御質問に応える事に致しまして、これから本議会に提案致しました議案について御説明申し上げます(別項)