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村民生活の向上と豊かな活力ある村政の運営を目ざす 昭和57年度、施政方針を表明

一般会計十六億一千五百万円
昭和五七年第二回知念村議会定例会が三月十二日から二十四日まで開会され、この議会で昭和五十七年度の一般会計予算をはじめ、国民健康保険事業特別会計予算、簡易水道事業特別会計予算や関係各条例案件等、九議案が議決されました。
伊集村長は昭和五七年度の予算編成方針を表明し、特に本年度は村政を担当する最後の年度を迎え①快適な村民生活環境の整備②きめ細かな各種福祉施策の充実拡大③農林水産業の基盤整備、産業の振興④保健医療の充実⑤教育文化の向上⑥流通機構の整備、等を重点施策として掲げ、村民が豊かで活力ある住みよい知念村づくりに邁進できるよう最大の努力を傾注し、各施策を強力に推進することを明らかにした。
以下は昭和五七年度予算編成方針の全文です。

はじめに
昭和五七年度の我が村の方向の指針ともなるべき通常予算議会が本日開催されるにあたり、村政の根幹である昭和五七年度知念村一般会計歳入歳出予算をはじめ、昭和五七年度知念村国民健康保険事業特別会計予算及び知念村簡易水道事業特別会計予算並びに関係各条例等、九件の議案のご審議をお願いし、新年度に向けての施政の一端を申し上げ、議会議員の皆様をはじめ、村民一人々のより一層のご理解とご協力をお願い申し上ける次第でございます。
かえりみますと私が村長に就任してから四期十六年の歳月がたち、私しが村長としての最後の予算を編成し、かつ村民に対しての最後の奉行となるべき施政方針となります。
私しは昭和四一年九月村民の絶大なるご支援、ご協力により一期目は光栄ある無投票によって村長に就任以来今日まで四期十六年間、ひたすら村民の利益と福祉増進、各種産業の振興と基盤整備、生活環境の整備、教育、文化の向上発展並びに村民の保健衛生の向上等を重点施策として、その実現をめざし、昼夜献身的に努力し、ひとつびとつ村民要求に応えるベく可能な限り推進し実現を期してきました。
特に昭和五七年度は私しが村政を担当する最後の年度でありますが、国の財政再建や臨時行財政改革によって財源の伸びがそれほど期待できない非常に厳しい財政運営となることは必至であります。
このような財政状況からしまして、村民要求を充分に応えることができないのがいささか残念であります。
しかし可能な限り消費的経常経費を極力に抑制し、村民への還元となるべき投費的経費を重点的、効率的に財源を配分し、ひとつでも多く要求実現に努力し、村民が豊かで活力ある住みよい知念村づくりに邁進できるよう最大の努力を傾注き、新年度予算を編成するものであります。
しかし、昭和五七年度の閣讓決定した国の予算編成方針及び財政投融資計画並びに昭和五七年度の経済見通しと経済運営の基本的態度によりますと、まず昭和五七年度の国の予算編成方針は経済の着実な発展と国民生活の安定、向上を図るため、内外の社会経済情勢の推移に即応しつつ、内需中心の景気の維持拡大に配意するとともに、行財政再建を強力に推進し、速やかに財政の対応力を回復することが今日の最も緊急かつ重要な政策課題であるとして、臨時行政調査会の行政改革に関する答申を最大限に尊重し歳出面では経費の徹底した節減合理化によりその規模を厳しく抑制し、質的内容の充実と景気の維持拡大に配意しつつ、歳入面では極力見通しを行なうことによって公債発行額を着実に縮減することを基本的方針としています。
又昭和五七年度の経済運営の基本的態度としては我が国経済をとりまく国際情勢は多くの先進工業国において、インフレ収支と景気の回復が期待される反面、引き続き失業の増大が懸念され保護貿易主義が台頭する恐れがあるといわれ、又国際的石油情勢については、当面世界の石油需給に大きな問題が生ずることはないと期待されるものの、国内的には財政は依然として不均衡状態にあるとされている。このような内外情勢に鑑み、昭和五七年度の経済運営は、物価の安定を基礎として国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を促進する一方、行財政改革を着実かつ計画的に実施し、貿易の拡大均衡を基本とした調和ある対外経済関係の形成を図り、中長期の安定成長経済路線を実現することにあるとされている。このような基本的な考えのもとに昭和五七年度の経済運営の基本的態度として、次の重点施策を取り上げております。

一、国内民間需要を中心とした着実な景気の維持と拡大を実現し、雇用の安定を図ること。二、物価の安定を図ること。
三、行財政改革を着実かつ計画的に推進すること。
四、調和ある対外経済関係の形成に努め、国際協調の増進に積極的に取り組み、世界経済の持的発展に貢献していくこと。
五、経済社会の発展基礎の整備を図ること。

以上国の五重点経済運営の基本的態度にそって県や市町村等の地方公共団体もその実現に最大の努力を傾注し、昭和五七年度の予算を編成していくことにしております。

第一、我が村の基本的な計画について
昭和五七年度の予算を編成するにあたっては、国、県の経済見通しと経済運営の基本的態度の見知から我が村も国や県の財政運営に照準を合わせ、経済や物価の動向等に充分なる留意を行ない、村民生活の安定を図りながら国の行財政改革の基本的方針に則り、引き続き景気回復の基調をより一層確実なものとすることが我が村の基本的な理念であり、経済的均衡及び物価の安定経済安定路線への確立と効率的かつ円滑な財政運営と村財政の健全化を樹立することにある。
特に地方公共団体は、国の行財政改革のあおりをまともに受け、財政事情は益々窮極化していくことは明白であります。しかしながら国や県、市町村に対する住民要求はうらはらに益々増大し、個人の生活中心主義、福祉先行時代と変容し、国や地方公共団体の財政需要も年々旺盛になって財源確保に苦しんでいる昨今であります。
いうまでもなく地方財政は、国の財政に大きく左右されていることはご承知のとおりであります。
特に自主財源の乏しい我が村の財政は地方交付税や国県支出金の依存財源に大きく委られている実情である。
昭和五七年度の地方交付税のうち市町村分の経常的経費においては五・五%程度、投資的経費が十一%程度の伸びが見込まれており、全体で前年に対して約七%程度の伸びとなる予想であります。
我が村は前年に対し四千七百万円余りしか伸びなく、一般財源も八億六千六百万円余りに対し、人件費、扶助費、公債費及び事務組合等への負担金、債務負担行為等の義務的経費が約六億円で一般財源に対する六九・二八%を占め、余裕財源が少なく厳しい財政運営を余儀なくされております。そのうえ昭和六二年に開催されます第四二回国民体育大会「沖縄国体」の一部会場にもなっており、その施設整備等にも多額の費用を要し、その財源確保になお一層の厳しさを増すことは必至であります。
このような財政事情と国の行財政改革及び県の二次振興計画等に順応しながら景気浮揚、雇用の拡大、社会資本の祭備等を図って安定した経済のもとに快適な村民生活環境の整備、きめ細かな各種福祉施設の充実、拡大、農林水産業の基盤整備、産業の振興、保健医療の充実、教育、文化の上、流通機構の格備等を重点施策として事業の緊急性を踏え、経常的経費の徹底した節約を行ない合理的な財政運営と村財政の健全化を樹立していくことにしております。
又予算の執行にあたっては適切な費金計画と効率的な投資効果を充分に検討し、最少の経费で最大の効果と利益が得られるよう尽力し、村民生活の向上と豊かな活力ある村政の運営に努める所存であります。

第二、昭和五七年度一般会計予算について
昭和五七年度知念村一般会計予算総額は、十六億一千五百万円で前年度十七億二千一百万円に対し、一億六百万円、六・一六%の減となっております。
このことは前年度までは、各学校の校舎建築が毎年行なわれ各学校の校舎建築及び体育館建築等の義務教育施設がほとんど終り、特に前年度は知念小学校不適格校舍及び同校水泳プール堆きゆう肥生産施設工場、漁民研修センター、等の補助による建築事業費及び単独事業による知念漁港の新設工事があり国県補助事業及び村債等による特定財源があるのに対して、今年度は学校関係建築事業費、失業対策事業費も国の特例措置による高令就労者一五人の退職による失業対策事業費の補助金の減、また地方債の充当率の引き下げによる村債が前年度より約一億円減になったことが大きな要因となっております。
以上総括的に申しのべましたが、次に昭和五七年度の主たる施策を申し上げます。

[昭和57年度一般会計予算の内訳]

(一)各種基盤整備計画について
投資資本の整備と拡大を図るベく、補助事業としては、久髙漁港施設整備事業、志喜屋漁港整備事業、並型漁礁の設置事業等の水産関係の施設整備費、三億二千一百万円、久手堅地内農地排水路施設事業、知念地内農地排水路施設事業、生産流通機構の整備としての農作物集出荷施設事業等の農業施設事業費一億四百万円、石油貯蔵施設対策事業による防災事業費、志喜屋地内歩道施設整備事業の土木事業費一千一百七十五万円、各学校の義務教育施設は知念中学校水泳プールを残してほとんど完成しておりますが、校舍及び体育館等は文部省基準からして知念中学校に不適格校舎分としてわずか残っていた校舎の改築費二千一百三十四万五千円となります。
また単独事業として臨時地方道路整備事業債による知名地内道路整備事業、交通方法変更事業債による海野地内中央道路及び久手堅地内排水路甲がい施設等の土木事業費、七千六百十六万七千円、農業基盤整備事業の久原、知名地内等の農道施設事業費、五千三百八十七万一千円、知念小学校倉庫建築等をはじめ、各学校の環境整備事業費、八百六十五万円、その他福祉会館、村民運動場、公園の用地取得、知念中学校プール用地取得費及び志喜屋地内厚生福祉施設用地取得費等、三千八百六十六万二千円の普通建設費を計画計上しております。
また失対事業費八千七百六万六千円をそれぞれ計上いたし、投資的経費が七億三千四百万円余となっております。

(二)農林水産振興策として
我が村の農作物の要であるサヤインゲン、オクラ、さとぅきび古株更新、農薬購入等の補助を引き続き行なう。
また病害虫防除対策を幘極的に行ない農作物の被害を最少にとどめ、農作物の増産を図って農家所得の向上に努める。
水産振興につきましては、漁港の基盤的整備を積極的に行なうほか、漁船建造資金利息補助、漁民の安全操業のための漁船への無線取付補助等を行ない、また日本でも数少ない栽培漁業の振興と雇用の拡大を図るベく現在知名先に施設整備中である養殖施設が近く完成するし、その経営運営を効果的に営むには県漁業組合、村が一体となってその管理運営の機能を充分にし、その経営を容易ならしめ、水産業の振興に万全を期していく所存であります。

(三)福祉・保健衛生について
社会福祉の増進と拡充を図るには実情に即応した総合的福祉施策を講じ、生活保護対策、母子福祉対策、児童福祉対策、老人福祉対策及び身心障害者対策等の福祉施策を基本構想に沿って、きめ細かな各種福祉施策を実施し、特に福祉活動を活発に展開していくため、法の下では人口八千人以上が福祉協議会の法人化が義務づけられておりますが、村民の福祉優先時代に即応すべく今年一月一日より社会福祉法人、知念村社会福祉協議会の設置が厚生大臣の認可を得まして村民福祉の増進と拡充を図るベくその体制が整いつつありますが、知念村社会福祉協議会の育成を積極的に推進していき、母子、身心障害者、老人及び生活困窮者の福祉増進を促進していき、すべての村民が夢と生き甲斐をもたせる。
また保健、衛生については、村民健康の保持、増進を図るため、保健衛生思想の向上と各種予防接種を積極的に行ない、村の疾病の早期発見による健康な文化的生活が営まれるよう予防接種の充実強化を図る。
久髙島の県立診療所への常駐の医者の配置について前年は国、県へ強く要請しましてようやく五月より常駐の医者を配置させることに成功して今日久髙住民の医療行政に貢献しておりますが、今後ともに先生の生活環境や処偶を積極的に助成し、永久に久高島診療所の関所に努め、久高住民の健康管理や医療の充実を図る。
環境衛生については、公衆衛生と個人衛生思想の髙揚によって、ごみ処理を適切に行ない、島尻消防清掃組合の指示のもとにごみの完全収集を図り、海浜や山辺等の美化がなされ、海や山が美しく甦がえるよぅになっております。
今後とも村民のご理解とご協力をお願い申し上げ、行政当局も一体となって環境の保持に努めることにします。
(四)教育、文化の振興について
義務教育の施設充実については、今日まで沖縄の復帰特別措置の期限が切れる前年度までに各学校の義務教育施設を積極的に取り入れ、文部省の基準にいち早く達することかできましたことは学校当局をはじめ、関係者から喜ばれています。
社会教育の振興発展については、村立図書館の充実、各種社会教育学級をできるだけ取り入れまして、村民の知識の高揚の場とし、社会教育の向上発展を図る。
また、昭和六二年に開催される第四二回国民体育大会を成功せしめるベく、その開催施設会場の施設整備にあたっては、なお一層、村や村民全体が一体となって積極的に取り組み、用地の確保及び施設の整備に万全を期したい所存であります。村民待望の知念村史の編集も着実に進行し編集委員の皆様や特別委員の皆様方のなみなみならぬご尽力によりましていよいよ資料編第一巻が本年度内に発刊いたすことになりました。
これを機会に委員皆様方をはじめ、資料を提供された方々が今後とも益々ご指導、ご協力を、賜わりますようお願い申し上げ、この席をおかりしてお礼申し上げます。
どうかこの村史の発刊が知念村の将来の教育、文化のバロメーターとなりますよう期待いたしております。
(五)その他
・農地の土づくり施策として
簡易的に有機質肥料の購入にあたり、一袋につき百円を補助いたしまして、農地の土づくりを行なわせしめ、農作物の病害虫に対する抵抗力と生産力の増進を図ってきました。その効果が実績に現われ有機質肥料の購入も年々増高してきました。
いつまでも購入に対しての補助策では、抜本的な対策ではなく農家に安く提供しうる恒久的な堆きゆう肥生産工場を施設計画し、現在建築中であるが、今月いっぱいには完成し、近々農協経営による生産が行なわれ、農家に安く供給できるものと期待し、今年度はひとまず購入補助金を見合わすことにいたしましたが、その管理運営にあたっては村も積極的に取り組み農家の期待にそうベく努力いたします。
・安座真港湾の施設整備について
一期目に当選したとき、久高島の発展を図るには、まず海路交通の整備がなによりであると考え、久高徳仁港の施設整備とあわせて、久高航路が安全かつ時間的短縮により、流通の利便を図るため久高港の受け港として、村長就任早々国、県及び関係機関に今日まで要請しつづけてまいりました。
幸いに沖縄県の中城湾港開発整備計画に伴って、安座真の新設整備が実現し、五ヵ年計画のもとに約十数億円以上の巨費を投じ、着工のはこびとなりました。
完成後は、久高島からの通勤通学が可能ならしめるようその対策を講じ、久高島の振興と過疎化の防止に最大の努力を傾注しなければならない所存であります。
以上一般会計予算の主施策を申し上げましたが、次に知念村国民健康保険事業特別会計及び知念村簡易水道事業特別会計について申し上げます。

第三、国民健康保険事業特別会計予算について
沖縄が復帰し、十年目の重要な時期を迎えたと同じく、我が村の国民健康保険事業も昭和四七年の復帰まもなく、同年十月一日から実施してまいりました。
その間、村民の医療費の助長と健康増進に多大な役割を果してまいり、今や年々増高する医療費と老人医療費の無料化、高額医療費制度等によって村の保険費の給付も増高するばかりであります。その反面国民健康保険加入者は、農家等の低所得者を多くかかえている関係で、収入の伸びは大きく期待できなく益々厳しい財政となるばかりであります。
しかし人口構造は老令化が急速に進み、老人医療の無料化は今や優慮すべき問題であり、今後とも国、県の抜本的対策を講ずるよう要請し、国民健康保険事業財政強化につとめておりますが容易にその問題解決はできないのが実情であります。
しかし国民健康保険事業は、今や医療保険制度の中核でありますし、一般会計予算もきびしい財政事情であるが、今年も例年どおり一般会計予算より五百万円を繰り出し、知念村の国民健康保険加入者の負担を軽減していくことにしております。
第四、簡易水道事業特別会計予算について
昭和五七年度知念村簡易水道事業特別会計予算の総額七千三百二千円で、対前年度より一千七十一万二千円で一八・〇六%の伸びとなっております。
ご承知のとおり昨年九月一日より県企業局の水道卸料金三二・一五%の増額改正になり、我が村の給水料金も昨年十月一日より改正いたし、これによる水道使用料金の増が主であります。
特別会計は原則として独立採算制を取るべきことであるが、給水料金の改正の時の説明にも申し上げましたように久髙島への海底送水施設及び本島内の給水施設事業債が当分の間約一千二百万円程元利償還されます。
その半額は一般会計予算から繰り出して村民負担の軽減を図るべく、給水料金の改正でありましたので、六百万円は一般会計予算より繰り出していきたいと存じます。その外は前年度と変りなく経常経費が主になっております。
以上三会計予算を編成するにあたっての所信の一端を申し上げましたが、私も残された任期か半年であり、この予算を効率的に執行していくためにも残された期間、誡心誡意事業執行にあたり、可能な限り、村民要求に応え、豊かな活力ある村政の推進に全力を尽したいと存じます。
なお議員の皆様方には、再度当選されまして村政のためにご活躍なされることと存じますが、村政執行にあたっては、議会も執行部も車の車輪のごとく一体となって、豊かで活力ある住みよいあしたの知念村建設に邁進していただきたいことをお願い申し上げ、昭和五七年度に向けての所信といたします。
どうか議会議をはじめ村民関係者の絶大なるご協力を賜わりますようお願い申し上げます。
昭和五十七年三月十二日
知念村長 伊集盛郎

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大分類 テキスト
資料コード 008541
内容コード G000001353-0001
資料群 旧知念村広報
資料グループ 広報ちねん 第20号(1982年6月)
ページ 2-8
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 知念
発行年月日 1982/06/
公開日