昭和五六年度の我が村の根幹ともいうべき三月通常予算議会が本日開催されるにあたり村政の指針となる昭和五六年度知念村一般会計予算をはじめ、知念村国民健康保険事業特別会計予算及び知念村簡易水道事業特別会計予算並びに関係条例等の十五件の議案のご審議をお願いし新年度に向けての施策の一端を申し上げまして、議会議員各位のご賛同と村民の深いご理解とご協力を賜りたいと存じます。
昭和五六年度の予算編成については、国の昭和五六年度の経済見通しと経済運営の基本的態度に地方公共団体も照準を合せて、財政運営の基本的な見地から経済や物価の動向に留意しつつ、村民の生活安定を図り、国、県とともに財政の円滑な運営と健全化を樹立しなければならないと思います。
昭和五六年度の我が国の経済見通しと経済運営の基本的態度は、前年度は我が国経済にとって第二次石油危機がもたらすインフレ圧力とデフレ要因を克服し、その影響からの脱却を図る年であったといわれました。そして昭和五六年度は、その成果を踏まえ、物価の安定と景気の維持、拡大を図り、我が国経済を中長期間的な安定成長路線に定着せしめるべき年と位置づけております。そのために昭和五五年十二月閣議了解において、昭和五六年度の経済運営の基本的態度として次の重点施策を取り上げております。
第一に、民間需要を中心とした景気の着実な拡大を実現し、雇用の安定を図ること。
第二に、物価の安定を図ること。
第三に、我が国経済の安全保障を図るためのエネルギー等の重要資源の安定供給の確保と石油依存型経済構造からの脱却を図ること。
第四に、世界経済の安定的発展に資するための国際経済社会における我が国の地位にふさわしい責任と役割を果すこと。
上記の四重点施策にそって市町村等の公共団体もその実現に最大の努力を傾注しなければならない。しかしながら最近の我が国経済は、物価安定を強力に推進する中において、国際的な石油危機以来、国の施策と国民の創意によって経済安定成長と雇用の拡大の望みが見られるものの、昭和五五年八月のオペックにおける石油産出国のうち最低原油価格国のサウジアラピアの原油価格が一バーレル当り二八ドルから三十ドルに引き上げられ、さらに十二月のオペック総会において二度改訂され、三二ドルとなり、世界標準価格も一バーレル当り三二ドル~三七ドルとなり、石油をとりまく国際経済事情は、まだまだ楽観的でないと思います。
このような国際社会情勢の中における住民の国や地方公共団体に対する要求は年をおって増大し、個人を主とした生活中心福祉優先と時代は変化し、社会環境も多様化して国や地方公共団体の財政需要も年々増加の一途をたどっております。このような状況の中において昭和五六年度予算は、限られた財源の中において投資効果のある事業を優先的に取り上げて編成いたしました。
基本的計画について
地方財政は、国の財源に大きく左右されるものがあり、特に我が村の財政は、地方交付税等の依存財源に大きく委ねられている状況であり、今後とも国、県の施策に順応しながら引き継き景気浮揚、雇用の拡大、社会資本の基礎的整備を図りながら、安定した経済の下に我が村の総合開発基本構想の理念に基づき、村民の豊かな生活の実現をめざして、快適な村民生活環境の整備、きめ細な福祉施策、産業の振興、基盤整備、教育文化の振興、村民の保健医療対策等を重点施策として厳しい財政事情において社会経済情勢に適切に対応すべく事業の緊急性を踏え、経常的消費経費の節約合理化を図って、可能な限り財政の健全化を行っていきたい。また予算の執行にあたっては、適切な資金計画を樹立し、予算の効率的執行で、最少の経費で最大の財政効果が得られるように最大の努力を傾注していきたいと存じます。
一般会計予算について
昭和五六年度知念村一般会計歳入歳出予算総額は一七億二干百万円、前年度より七干三百七三万円の増額、四・四八%の伸びとなっておりますが、前年度は、学校建築二棟、村図書館、教員住宅、議会庁舎、児童屋内運動場施設等の建築事業費をはじめ、漁港整備事業、荷捌き等の特定財源の伸びによって三四%の驚異的な伸びがあったが、会年は国においても地方財政は七%以下におさえる方針を打ち出し、我が県においても四・四%の伸びであり、我が村も前年度の異状な伸びに対して、当初は落ち込むと予想していたが、単独事業費を地方債で充当し、四・四八%を伸びたことは、順当な伸びと思い喜んでおります。
基盤整備事業について
補助事業として、久高漁港整備事業、志喜屋漁港整備事業、知念村漁民研修センター施設、知念地内農地排水施設、具志堅地内農道施設事業、農業振興対策事業としての農業生産総合振興施設整備事業等の農林水産施設事業費四億三千五百四一万五千円をはじめ、石油貯蔵施設交付金による土木防災道路事業費一千二臼四七万円及び知念小学校校舎建築、同校プール施設等の学校建築事業費一億四干九百五四万円、又単独事業として、知念地内漁港施設整備事業、臨時地方道路整備対策事業としての吉富地内村道改良事業、交通方法変更記念特別事業債による久手堅地内排水こうがい施設事業、各字小規模農業基盤整備村道新設改良事業及び各学校環境整備事業、勤労者育成体育館建設負担金等二億一干六万六干円、失策事業費一億一千五百五八万五千円となり、投資的経費総額九億二千二百万円余りとなっております。
農業振興策について
サヤインゲン、オクラ、さとうきび古株更新新補助金、土地つくり、農薬購入補助策を引き継き行ない、農業所得の向上を図ることにしております。特に野そ、きびガイダ防除を村一円に航空防除によって行ない、農家の労費の軽減を図って行きます。さらに我が村では、今日まで農家の身近かな要望である農道、農地排水等の急を要する基盤整備を積極的に整備し、労働力のコスト軽滅を図ってきましたが、今後は農家の生産増進と所得向上を図るための土地改良事業を強力に推進していきたいと存じます。その実現のためには、是非農家一人一人のご協力と積極的なご支援を賜りたいと存じます。漁港等の基盤整備のほか、漁民が安全操業のための漁船に対する無線通信施設補助、オニヒトデ駆除、又新しく漁船建造資金の利子補給策を講じ、漁業の振興を図って行きたいと存じます。
福祉政策について
社会福祉の増進を図るため、実情に即したきめ細かな総合的福祉対策を推進し、生活保護対策、母子福祉対策、児童福祉対策、老人福祉対策及び身心障害者福祉対策を甚本構想に即したところの一人暮し老人対策としては、前年同様ヤクルトの無償配付によって、一人暮らし老人の安全性を確認するための「かけ声運動」の実施、又、今年は身心障害者福祉対策の年であり、財源の範囲内において、村内の身心障害者三級以上の方々に年額五干円の見舞金を支給し、希望と生きがいをもたせることにしております。
保険衛生健について
村民の健康を増進するためには、保健衛生思想の普及向上を図り、もって巡回診療、予防接種等の拡大によって村民の疾病の早期発見のための予防行政を強化し、県立久闇診療所への常駐医師の配置要請を引き継き行なってつとめて早い時期に常駐医師の確保に努める。又、環境衛生については、公衆衛生と個人衛生思想の高揚を図りながら前年度四月一日から操業開始した島尻消防清掃組合によるごみ処理をより充実せしめることによって、海浜や山辺等の美化が保たれ、快適な海や山が甦えるように今後ともなお一層の努力をいたす所存でございます。
教育文化の振興について
義務教育施設の充実整備を図るため、昭和四七年の復帰以来今日まで村内三校の校舎等の義務教育施設を積極的に整備し、校舎、体育館等も各学校ともほぼ基準に達しておりますが、今度知念小学校の不適格校舎及びプールの施設を行なうとともに保他市町村では見られない児童・生徒の遠足、海水浴、各種発表会、競技会等のパス貨は当然父母が負担すべきでありますが、そのパス借料及びパス賃補助策等を講じて、義務教育の振興を図ることにしております。
又社会教育の振興のための各種社会学級の開設及び村立図書館の開設によって、社会教育の充実を図ることにしております。
伝統文化の保存のための保存育成策並びに村民待望の村史の編集も昨年から実施活動し近々発刊いたすべく万全の措置を講じています。
さらに過去三年間において組踊り等の伝統芸能の保存育成を図ってきましたが、その成果発表会を兼ねて、今年度から村民祭を行なう計画を立てております。
知念村国民健康保険事業特別会計について
国民健康保険事業は、昭和四七年十月、他の市町村より先がけて実施以来、関係者のたゆまざる努力によって、今や医療保険制度の中該として、村民の医療費の確保と健康増進に大きな役割をなしております。しかしながら国民健康保険制度をとりまく現況は、年々増加する医療費の高騰、老人医療費の無料化高額医療制度等によって医療費は増高にある。一方低所得者をかかえている国民健康保険にとって収入の伸びは大きく期待できず、国民健康保険財政は、ますます厳しくなるばかりであります。とりわせ人口構造は、老令化が進展し、老人医療の無料化、医療費の高騰は憂慮すべき問題であり、その抜本的対策を上部団体へ強力に要請し、国民健康保険事業財政の建全化に努め、本年度も被保険者の保険税軽滅策として、前年同様五百万円を一般会計から繰り出すことにしております。
簡易水道事業特別会計について
知念村簡易水道事業特別会計予算総額は、五千九百三二万円で、前年度より二、三七%減の百四三万八千円の減額となっております。ご承知のとおり、事業会計は独立採算制が原則であるが、久高島への海底送水施設をはじめ、ここ近年に村内の水道施設を国庫補助事業の対応費を起償に依存したためその元利償還金の源資も当然水道料金によって賄うのが建て前であり、それに見合う水道料金を改訂すべきであるが、一挙に水道料金を引き上げると村民負担が過重になるため、次回の改訂までは当分の間、不足財源九百万円を一般会計から繰り出すことにしております。以上所信の一端を申し上げましたが、このような予算を効率的に執行していくためには、議員の皆様をはじめ、村民一人一人のご協力を賜り、めまぐるしく進展していく地域社会の動向に対応し、豊かな村民生活をめざし、限られた予算を有効適切に活用して、村民の期待に応えるべく最大の努力を傾注していく所存であります。よろしくご審議のほどお願い申し上げまして昭和五六年度の施政の方針といたします。
昭和56年度予算計上事業
(補助事業) 596,425,000円
久高漁港施設整備事業、志喜屋漁港整備事業、知念村漁民研修センター施設、知念村農業生産総合振興施設整備事業、知念地内農地排水施設事業、具志堅地内農道施設事業、知念小学校校舎建築事業、知念小学校プール施設事業、石油貯蔵施設交付金(防災道路)対策事業
(単独事業) 224,586,000円
臨時地方道路整備事業(吉富地内)
交通方法変更特別記念事業(久手堅地内)
知念地内漁港施設事業
土木道路新設改良事業
勤労者体育施設負担金(体育館建設)
ダウンロード | https://docs.google.com/uc?export=download&id=1CaqwPnnu7_IpRm4n3VWsQn9s2DWnoN6M |
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大分類 | テキスト |
資料コード | 008535 |
内容コード | G000001347-0001 |
資料群 | 旧知念村広報 |
資料グループ | 広報ちねん 第14号(1981年5月) |
ページ | 2-5 |
年代区分 | 1980年代 |
キーワード | 広報 |
場所 | 知念 |
発行年月日 | 1981/05/10 |
公開日 | ー |