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仲里村長が施政方針を表明『より豊かで活気ある住みよい平和な知念村づくり』をめざして

昭和六十年第二回知念村議会(屋我嗣将議長)定例会が去る三月十二日から二七日までの会期で開かれました。
定例会では、昭和六十年度一般会計予算案、特別会計予算案外十四件の議案が提案されました。
議案説明に先立って仲里村長は、昭和六十年度の予算編成方針と村政運営に対する施政方針を表明し、その中で「より豊かで活力ある住みよい平和な知念村づくり」を基本理念として村政を運営し、限られた予算を執行していき、最少の経費で最大の効果が得られるよう最大の努力を傾注いたしますと抱負を述べました。
以下、施政方針の全文は次のとおりです。

一、基本的方針について
本日、昭和六十年度知念村議会第二回通常定例会を開催し、わが村の昭和六十年度の村政運 営の基本となるべく昭和六十年度知念村一般会計予算、知念村簡易水道事業特別会計予算、知念村国民健康保険事業特別会計予算及び知念村老人保健事業特別会計予算をはじめ、関係条例並びに関連議案の審議をお願いするにあたり、村政運営に関する施政を申し上げ、議員各位並びに村民の深いご理解と特段のご協力を賜りたいと存じます。
ここ数年来、国の厳しい財政事情と財政建直し政策や、行政改革の下に予算を編成してきま したが、依然として国、地方公共団体の財政事情は厳しさを増すばかりであります。
昭和六十年度の予算編成にあたっては、昭和五十九年度における国や地方公共団体の厳しい財政状況をふまえつつ、中長期的な財政の健全化に資するため、財政の抜本的な見直しを行なってきましたが、村財政の現状は依然として累積した村債や債務負担行為並びに年々増加する医療費等の義務的経費によって、収支不均衡財政型の構造から脱却しえず、昭和六十年度予算においても公債費や人件費等の義務的経費がなお一層増大する一方、地方交付税や村税等の一般財源の伸びは、それほど期待することができない。
特に国の補助率の削減、地方債の充当率の引き下げによって引き続き財源不足を生じ予想以上の厳しい予算編成となりました。
このような見地から事務事業及び各種補助金のあり方を全面的に見直しを行い、村民の果す役割を充分検討し、負担区分の明確を図り、適正な村財政運営の秩序を維持することが当面の重要な課題であります。
このようなことを鑑み、知念村補助金、負担金等審議委員会を設置いたし、村が行う補助金 等について行政の責任分野、経費負担のあり方、財政効果等を精査の上、整理合理化に努め、 補助金等の新設は極力抑制することにし、新規の補助金を設ける場合は必ず終期の設定を行うなど不断の見直しを行い、補助金の総額の抑制に努めるため、昭和五十九年十月三十日に、知念村補助金負担金等審議委員会に諮問いたしましたところ、委員各位には誠意をもってあらゆる角度から専門的に十回にもおよぶ検討がなされております。
この場をお借りして委員各位に敬意と感謝を申し上げます。必ず立派な答申がなされるものと期待いたします。
今後は答申を尊重し、各種団体に対する補助金の負担割合を明示し、又産業奨励補助金は、 生産物に対する補助は年次的に削減し、生産向上に伴う生産基盤施設整備に補助策を講じ、生産性の拡大と村財政の健全化と村民生活の安定、福祉の充実、教育・文化の向上に努め適正かつ、効果的に財源の配分を行い、中長期的な節度ある村財政運営の効率化を図ります。
国は、行財政改革により、少しづつ財政の持ち直しと景気回復の兆しが見られるものの、わ が村の財政は依然として厳しさを増しております。
特に昭和六十年度予算は、村民待望の福祉センター建設が実現する見通しであり、その建設 費の対応費、生産基盤整備の久原地区、知名板馬地区農地保全事業、知念地内の下知念田原地区農業構造改善事業による農地改良事業、生活環境整備事業の知念地区道路整備事業等の大型新規事業の対応費及び昭和六十二年開催の沖縄海邦国体に備えての会場周辺の整備事業費等による多額の財政需要があり、かつてないひっ迫した予算編成となったが、最少の経費で最大の投資効果が得られるように財源の配分を行い、次のとおり各予算を編成いたしました。

昭和60年度当初予算額
・一般会計予算 1,557,890千円
・簡易水道事業特別会計 78,008千円
・国民保健特別会計予算 255,993千円
・老人保健特別会計予算 215,725千円
合計2,107,616千円

二、昭和六十年度の主な施策
1.生産向上のための産業基盤の施設整備と促進
2.快適な生活環境の整備
3.沖縄海邦国体に備えての施設整備
4.村民の健康と福祉施設の整備
5.教育・文化の振興
6.青少年の健全育成
7.村補助金制度の合理化
以上七つを昭和六十年度の重点施策として、財源の確保と事業の緊急性を充分検討しながら住民要求に応えられるよう効率的な予算編成をいたしました。

①生産向上のための産業基盤の施設整備と促進について
(1)農業基盤の施設整備
農家所得の向上と生産増進を図るため、久原、知名板馬地区の農地保全事業八、〇〇〇万円、字知念地内下知念田原地区農地整備と基盤整備事業六、四一二万円及び字志喜屋台上―字知念台上地区の土地改良事業が県営事業によって採択され、いよいよ昭和六十年度から調査設計費が予算化されるとのことであり、地元地主のご理解とご協力を賜り又、土地改良事業推進委員の絶大なるご協力をお願いし、事業の早期実現を期すベく日夜最大の努力を傾注する所存であります。

(2)農業振興
農家所得の向上を図るには農地改良事業と併せて地力の増強が必要であり「土地づくり」の一環として有機質肥料の畑地還元が重要で、堆きゅう肥生産施設の最大可動によって農家の需要に応えるベく前年度に原材料置場及び製品置場が完成しましたので、今後は農家の需要に充分対応できるよう最大の努力をいたします。
又、わが村の換金産物の要であるサヤインゲン、オクラさとうきび古株更新等の産業奨励補助金は、作付も定着し、農家がそれ相当の収益をあげております。厳しい財政の中にあって、いつまでも生産物に対して補助金を交付することは好ましくないと国・県から改善する旨指摘されており、補助育成の時期はすぎたと思います。
知念村補助金、負担金等審議委員会の答申等も充分考慮しながら本年度より三分の一づつ漸次削減していきたいと存じます。
なお、農薬購入補助金及び現物給付農薬については、当分の間従来どおり補助を行い、農作物の病害虫の被害を最少に防止し、農作物の増進を図ることにします。

(3)水産業の振興
わが村の水産業の振興を図るには段漁港の基本施設整備が重要であり、今日まで多額の費用を投じ、各漁港の基本施設を整備してきたところでありますが、久高漁港については、昭和六十年度予算九、九三九万円でほぼ完成する予定であります。志喜屋漁港の整備は、局部改良事業で今年度は三、九〇〇万円の事業費でありますが、今後は同漁港の局部改良による施設整備から改築事業による整備の実現へと国、県に関係機関を通して要請しているところであります。又、水産関係補助金についても、補助金等審議委員会の答申に基づいて補助策を講ずることにします。

②快適な生活環境の整備について
村民をはじめ地域住民の活性化とうるおいのある快適な生活環境の整備を図るため、知念地内の村道整備及び村民の交通安全対策として志喜屋地内の村道三六号線の歩道設置を行い交通体系の利便と交通事故防止に資する。又、地方生活環境整備促進事業による部落内排水施設を整備していくため二、二〇〇万円の予算措置を講じております。
③沖縄「海邦国体」に備えての整備について
きらめく太陽、ひろがる友情の沖縄「海邦国体」のテーマも決まり、県をはじめ開催市町村 では、その成功を期して最大の努力をしておりますことは周知のとおりであります。
わが村においても国体開催会場の一つとなっていることは御案内のとおりであります。そこで会場の建設及び周辺の整備に全力を傾注しているところであります。本年度も会場周辺の環境の整備費五、六〇〇万円を行い、団体の開催に支障のない施設整備をして行きたい所存であります。又、国体開催後は、村民がスポーツをとおして友情を広め、村民の心のふれあいの場、いこいの広場として有効的、多目的に活用いたします。

④村民の健康増進と福祉施設の整備について
(1)村民の保健対策
村民が健康で文化的な生活が営まれるよう老人保健事業を積極的に推進し、保健事業活動を強化しながら、老人健康診査、一般健康診査、各種予防接種等を行い、村民の疾病からの早期発見を行い、心身共に健康で活力ある村民生活が営まれるよう努めます。又、伝染病の媒介源であるボフーラ防除を集中的に実施し、公衆衛生、個人衛生の強化を図ります。

(2)村民福祉
社会福祉の拡充を図り、村社会福祉協議会の育成と充実強化を行い、両者がタイアップして児童には「夢」を老人には「いきがい」を、母子、身心障害者には「生きる望みと自立更生の道」が、それぞれ開かれるよう児童福祉、老人福祉及び母子、障害者福祉対策を積極的に推進いたします。

(3)村民福祉施設
村民待望の福祉センター建設が二月二十五日、日本自転車振興会が決定し、いよいよ実現可能になり、県においても予算計上されていることは新聞等の報道ですでにご案内のとおりであります。
同施設については、議会も用地の譲渡を可決し、村、議会、村社会福祉協議会、県当局が一体となって、同施設の実現に誠意努力しているところでありますが、多額の対応費が要することになり、今後は三者がなお特段の努力をしていかなければなりません。
村民をはじめ関係者のご協力をこの場を借りしお願いいたします。完成後は必ず村民をはじめ地域住民の総合福祉の活動の拠点となるものと大きく期待し、年度内完成をめざして最大の努力をいたします。

⑤教育・文化の振興について
(1)義務教育の振興
わが村は、人材育成、教育立村を村是とし、議会のご協力のもと、その実績をあげています。幸いに各学校の当面の義務教育施設は、ほとんど完了しており、今後は内部教育施設の充実を図りながら、児童生徒のより学力の向上に努め、学校現場との連携を更に密にし、人間性豊かな児童生徒の育成を図っていきます。

(2)社会教育の充実
社会の高度成長と高学歴社会を迎え、村民の知識の高揚と生涯教育の拡大を図るベく努力しておりますが、今年度は福祉センター建設等によって多額の財政需要があり、学級によっては回数を減らしたのもありますが、財源の確保が可能次第拡充して行きたいと思います。

(3)文化財の保護育成
村史の第一巻も発刊され、第二卷の発刊に備えて最大の努力をいたすと共に、村民が文化財に対する意識の高揚を高め、文化財の分布調査を行い、先祖の残した文化遺産を後世に保存すべく保護を行っていきたいと思います。

⑥青少年の健全育成
将来の世代を背負って立つ青少年の健全育成は、社会や行政当局に果された最大の義務であると思います。
青少年の非行問題は、今や社会の大きな課題であり、地域社会や行政が積極的に取り組まな ければならない重大な施策の一つであると思います。
幸いにして、知念村青少年健全育成村民会議が、他の市町村より先がけて組織し、同協議会 の積極的な活動により、他市町村より青少年の非行が少ないのは、同協議会をはじめ関係者のご努力の賜と心から感謝を申し上げます。
特に同協議会の中に「学力向上推進部会」を設け「学校、家庭、地域社会、行政」等が連携 を密に青少年の非行防止と学力向上に努め、その実績は高く評価されております。就中、小中学校生の漢字カテストの実施は、全県から注目されていることはご案内のとおりであります。
今後は、活動方針において改めるべきところは改みて、真に青少年健全育成の目的が充分果
されるよう努力いたします。

⑦村補助制度の合理化について
将来の財政運営の効率化と健全運営を図るには、現在村が行なっている各種補助制度の見直しについては、基本的方針で述べたとおりでありますが、上地改良事業負担金、法人等が事業主体となる補助事業の対応費の補助金、きびのガイダー防除費、農薬購入補助金、農薬の現物給付等のあり方についても、他市町村の状況を踏え、時代に即応した補助策を講じながら補助金等審議会の答申が反映されるよう努力いたします。

⑧その他
知念村の村歌、村音頭選定委員会を昨年設置し、村内外から広く応募し、委員会においては 歌、村民音頭を選定しております。今年度はその設定をしたく準備しております。

⑨特別会計について
知念村簡易水道事業特別会計歳入歳出予算、知念村国民健康保険事業特別会計歳入歳出予算については、独立精算制の原則でありますが、諸搬の事情から簡易水道事業特別会計予算に一般会計予算から一五〇万円、国民健康保険事業特別会計予算には従来の五〇〇万円から四〇〇万円をそれぞれ繰出すことにしております。
又、知念村老人保健特別会計予算には、医療費の高騰により前年度繰出金七一九万四、〇〇 〇円より三五七万六、〇〇〇円増の一、〇七七万円を繰出すことになっております。
以上主たる昭和六十年度の施策を申し上げましたが、村民の声を行政に多く反映せしめ、村 民主体の村政と村の特殊性を生かした「より豊かで活力ある住みよい平和な知念村づくり」を基本理念として村政を運営し、限られた予算を執行していき、最少の経費で最大の効果が得られるよう最大の努力を傾注いたします。
どうか議会議員をはじめ村民の深いご理解とご協力をお願い申し上げ、全議案全会一致で可決されますことを重ねてお願い申し上げまして、昭和六十年度の予算編成説明と村政運営の方針といたします。

昭和六十年三月十二日 知念村長 仲里常延

ダウンロード https://docs.google.com/uc?export=download&id=1n8XtPTAM7Sk2vJoRRKkfMsSKjQxgnl3D
大分類 テキスト
資料コード 008361
内容コード G000000338-0001
資料群 旧知念村広報
資料グループ 広報ちねん 第36号(1985年5月)
ページ 2-5
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 知念
発行年月日 1985/05/15
公開日